アルベール・カミュ『ペスト』(仏文原書)の訳読に挑戦! ①

アルベール・カミュ作 『ペスト』を読むNo1

 

いつまで続くのか一向に先が見えない新型コロナ禍。このような疫病が、かつては名作を生みました。そこで目下、読み進めているのがアルベール・カミュ(Albert Camus)のペスト(La Pest)です。ペーパーバックで350頁超のフランス文学を読み終える頃には、コロナが終息していてくれたら、と祈りつつ訳読を始めることにしました。

 

 

この作品は正体不明の語り手(最後になって明かされる)によって進行するそうです。

また、よそ者のジャン・タル―という人物の手帳がもうひとつの語り手となるというのだから手が込んだ構成なのだろうと想像しています。

 

登場人物はベルナール・リウーをはじめカステル、リシャールなどの医師たち、患者としてはリウーの患者で喘息もちの老人(名前が提示されない)が登場するそうです。

 

また、コタールという絶望に駆られた犯罪者、予審判事で「ふくろう男」と呼ばれるオトン氏、イエズス会の神父で博識かつ戦闘的なパヌルー師、初級公務員で作家志望のジョセフ・グランなど、それぞれ興味深い人物が登場して物語が展開していくそうなのです。

 

 

あらすじ

 

はじまりは、医師のベルナール・リウーを階段で躓かせた一匹の死んだ鼠だった。やがて、死者が出はじめ、リウーは死因がペストであることに気付く。新聞やラジオがそれを報じ、町はパニックになる。死者の数は増える一方で、最初は楽観的だった市当局も対応に追われるようになる。

 

やがて、町は外部と完全に遮断(ロックダウン)される。脱出不可能の状況で、市民の精神状態も、生活必需品の価格の高騰も相まって困憊してゆく。一方で富裕な家族はほとんど不自由しない。ペスト対策による「実効ある公正さによって、市民の間に平等性が強化されそうなものであったのに、エゴイズムの正常な作用によって、逆に、人々の心には不平等の感情がますます先鋭化される」に至る。完全無欠な死の平等だけは残されるが、誰もこの平等は望まない。

 

新聞記者レイモン・ランベールが妻の待つパリに脱出したいと言うので、犯罪人コタールが密輸業者を紹介する。逃亡者であるコタールは町を出る気はなかった。イエズス会神父のパヌルーは、ペストの発生は人々の罪のせいで悔い改めよと説教する。一方、リウー、ジャン・タルー、ジョセフ・グラン(初級公務員)は必死に患者の治療を続ける。タルーは志願の防疫隊を組織する。

 

新聞記者のレイモン・ランベールは脱出計画をリウー、タルーに打ち明けるが、彼らは町を離れる気はない。やらねばならない仕事が残っているからだ。リウーの妻も町の外にいて、しかも病気療養中だということを聞かされたランベールは考えを改め、リウーたちに手伝いを申し出る。

 

少年が苦しみながら死んだ。それも罪のせいだと言うパヌルー神父に、リウーは抗議する。確かに罪なき者はこの世にはいないのかも知れない。神父のパヌルーもまたペストで死んでしまうのだから。

 

災厄は突然潮が退いたように終息する。人々は元の生活に戻ってゆく。ランベールは妻と再会でき、コタールは警察に逮捕される。流行は過ぎたはずなのに、タルーは病気で死んでしまう。そして、リウーは療養中の妻が死んだことを知らされる。

 

市中はペスト終息であちこちから喜悦の叫びが上がっている。しかし語り手は、ペスト菌は決して消滅することはなく生き延び、いつか人間に不幸と教訓をもたらすために、どこかの幸福な都市に彼らを死なせに現れるだろう、自分はそのことを知っている、と述べて物語を締めくくる。
 

 

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医師が3人も登場するというので、現在、私自身が置かれている状況に照らし合わせて読むことになりそうです。

 

訳読の続きは、また来週です。お楽しみに!