新型コロナワクチンによるアナフィラキシーに対する指針公開(No.3)

 

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コロナワクチン接種の実施のために、日本アレルギー学会が作成

 

<アナフィラキシーはなぜ圧倒的に女性と医療従事者に多いのか?>
 

指針では、国内外で臨床導入されているコミナティ、モデルナ製、アストラゼネカ製のSARS-CoV-2ワクチンのアナフィラキシー発症機序についても言及しています。
通常、ワクチンによるアナフィラキシーの発症を引き起こす原因として考えられるのが、免疫原である主成分またはアジュバントや保存剤などの添加物に対するIgEを介してのマスト細胞の活性化です。

 

しかし、SARS-CoV-2ワクチンにはアジュバントや保存剤は添加されておらず、「ファイザー製とモデルナ製のmRNAワクチンは、有効成分であるmRNAが封入されている脂質ナノ分子を形成する脂質二重膜の水溶性を保持するために使用されているポリエチレングリコール(PEG)が原因」と考察しています。

 

また、これまでに報告されたアナフィラキシー発現例は、コミナティの94%、モデルナ製ワクチンの全例が女性でした。このことから、「化粧品による経皮感作の可能性は否定できない。だが、未だPEG特異的IgE抗体の測定系は確立していないため、アナフィラキシー誘発機序や感作の実態解明などは今後の課題」と指摘しました。
 
 

私見:

ファイザー社の新型コロナワクチンはmRNAワクチンです。このワクチンにはPEG(ポリエチレングリコール)という成分が含まれており、このPEGがmRNAワクチンのアナフィラキシーの原因の一つと考えられています。しかし、もしそれが原因だとしても、新型コロナのmRNAワクチンに対してアナフィラキシーを起こすのは、これまでのところ圧倒的に女性が多いことが明確に説明できません。それでもその理由としてPEGが界面活性剤、乳化剤、保湿剤などとして化粧品に含まれることが関連しているのではないかという可能性が挙げられています。
 

同様に原因はまだ不明ですが、医療従事者はそれ以外の方と比べてアナフィラキシーの頻度が高い可能性があります。

 

Mass General BrighamというNPO法人の医療従事者を対象に新型コロナワクチン接種を行った際のアナフィラキシー件数についての米国の報告があります。これによりますと、64 900人の医療従事者が新型コロナワクチンを接種しており、このうち40%の人がファイザー社のワクチンを接種していました。このうち、2%の人が何らかのアレルギー症状が出現し、また0.027%の人にアナフィラキシーがみられたとのことです。

 

医療従事者は、さまざまな局面でPEGに接する機会があります。PEGは下剤や整腸剤の有効成分であるほか、錠剤の表面コーティング、潤滑剤、超音波ジェル、軟膏、座薬、デポ剤、骨セメント、臓器保存剤などの安定剤としても使用されています。このような職業上の環境によって、医療従事者ではよりPEGに感作されている人の割合が高くなっている可能性はあるかもしれません。
 

世界中で女性の医療従事者のアナフィラキシー症例が報告されている背景の解明のためには、上記のような化粧品、医薬品などと複数の因子との因果関係をたどっていく必要があると思われます。