新型コロナワクチンによるアナフィラキシーに対する指針公開(No.1)

 

コロナワクチン接種の実施のために、日本アレルギー学会が作成

 

<日本アレルギー学会の問題意識>

 

2021年2月17日から日本でもまずは医療従事者を対象に新型コロナウイルスワクチンの接種が始まりました。

しかし、3月16日時点で、杉並国際クリニックには一切の通知が届いていない状況でした。

 

そこで、杉並保健所にて確認したところ、窓口は東京都の福祉保健局であるとの情報を得ました。そこで、「新型コロナウイルスワクチン接種に係る医療従事者等の登録サイトについて」を通して、東京都の担当者に問い合わせてみると、予め対象医療機関宛てに『登録するためのアンケート』をすでに発送したことになっていたとの返答でした。当クリニックは「内部の手違いによって漏れていたようです」とのことでした。

 

新型コロナワクチンについては副反応ばかりでなく、このように、その実施手続きについても不明な点が多いです。

 

とりわけ重度の過敏症であるアナフィラキシーをきたす頻度が従来のワクチンよりも高いことが欧米において報告されていることも問題になっています。その原因は何でしょうか?

 

こうした社会問題に対して専門的な立場からの見解を求められる日本アレルギ―学会から指針が発表されました。

 

日本アレルギー学会は「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチン接種にともなう重度の過敏症(アナフィラキシー等)の管理・診断・治療」の指針を改訂しました。その内容は3月12日に公開されています。

 

日本アレルギー学会のオフィシャルサイトでは、アレルギー学会会員に向けて公開されています。

 

また、一般の方にも

一般社団法人 日本アレルギー学会 (jsaweb.jp)

で御確認いただけます。

 

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「新型コロナウイルスワクチン接種にともなう重度の過敏症 (アナフィラキシー等)の管理・診断・治療」について

 

更新日時:2021年3月1日

日本アレルギー学会会員各位

令和3年3月1日

一般社団法人日本アレルギー学会

理事長 出原 賢治

 

 

「新型コロナウイルスワクチン接種にともなう重度の過敏症

(アナフィラキシー等)の管理・診断・治療」の作成とHPへのアップロード

 

新型コロナウイルス感染症に対する有効な予防手段として、ワクチンに大きな期待が寄せられています。すでに特例承認され、一部の医療関係者を対象として接種が始まっておりますが、これらのワクチンの副反応については不明な点も多く、また、重度の過敏症であるアナフィラキシーをきたす頻度が従来のワクチンよりも高いことが欧米において報告されております。しかし、アナフィラキシーの症状と対処自体は他の原因によるものと変わらず、現時点ですべての新型コロナウイルスワクチンによるアナフィラキシーは適切な対処により回復しております。また、ワクチン接種に際しては常にその益と害のバランスを考えることが必要であり、副反応に対する過度な懸念や対応は社会に大きな損失と負担をもたらす危険性が存在します。

 

そこで日本アレルギー学会では、新型コロナウイルスワクチン接種にともなう副反応のうち、特に重度の過敏反応(アナフィラキシー等)を起こし得る危険因子、管理、診断および治療について現時点の情報を整理し、適切にワクチン接種を行うための指針である「新型コロナウイルスワクチン接種にともなう重度の過敏症(アナフィラキシー等)の管理・診断・治療」を作成し、学会HPにアップロード致しました。どうぞ会員の皆様には、この情報を有効にご活用いただきたく存じます。

 

なお、最新の副反応に関する情報については、厚生労働省、医薬品医療機器総合機構(PMDA)、ワクチンメーカー等からの通知を確認いただきますようお願いいたします。

 

新型コロナウイルスワクチン接種にともなう
重度の過敏症(アナフィラキシー等)の管理・診断・治療

 

2021年3月12日改訂版掲載

 

同学会では「SARS-CoV-2ワクチンによるアナフィラキシーは他の原因によるものと変わらず適切な対処により回復する」としました。

 

その上で、「ワクチン接種に際しては常にその益と害のバランスを考える必要があり、副反応に対する過度な懸念や対応は社会に大きな損失と負担をもたらす」との懸念を表明しました。

 

このようにSARS-CoV-2ワクチンの副反応のうち特に重度の過敏反応(アナフィラキシー等)を起こしうる危険因子を踏まえて、接種を避けるべき人やアナフィラキシー発現後の管理、診断、治療法、準備すべき医薬品や医療備品などについて示しました。
 

 

私見:

私は日本アレルギー学会の専門医の一員です。この提言は、常に複数のアレルギー専門医が活動している医療現場においては、概ね妥当する公式見解であろうと思われます。しかし、一開業医の視点からすると、専門医が一人以下の大多数の小規模の医療機関においては、むしろSARS-CoV-2ワクチンの接種を高い水準で確保することは容易ではないことが明かにされたものといえるのではないかという印象を受けました。