『抜毛症の患者さん』を支援する、第5回:治療方法の背景と標準的治療法 治療

 

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杉並国際クリニック版 抜毛症診療マニュアル
(令和3年3月9日初版)

 

 

第5回:治療方法の背景と標準的治療法

 

治療

 

抜毛症の治療とは

 

病態的には、脳内セロトニンの欠乏と、それに起因するドパミンの過剰が推定されています。そこで治療にはSSRIを中心とした薬物療法と、認知行動療法が有効です。

 

標準的治療法:

抜毛症治療の第一選択(行動療法:習慣逆転法)

抜毛症の具体的な症状に合わせて個別化した認知行動療法が、現時点で第1選択の心身医学療法です。

 

抜毛症に焦点を合わせた認知行動療法を行うことで、症状が軽減することもあります。その中で最もよく用いられる認知行動療法は習慣逆転法です。この治療法では、対象者は次のことを教わります。

 

例えば,主に行動療法である習慣逆転法を用いることができる。

 

① 症状への気づき訓練(自分がしている行為に対する自覚を高めること―例,セルフモニタリング,問題行動の誘因や引き金となる状況の同定・特定)

 

② 刺激統制(抜毛を開始する可能性を低下させるために状況を変更すること—例,誘因の回避)

 

③ 競合反応訓練(抜毛をやめるのに役立つ対処法の実践-例、抜毛の代替に他の行動を用いる)、毛を抜く行為を別の行為(こぶしを握りしめる、編み物をする、手の上に座るなど)に置き換えるなど。

 

 

習慣逆転法の原理と実践法

習慣逆転法とは、悪い習慣をコントロールする行動療法の1つです。これは治療者が癖をした時に、具体的な行動目標を繰り返し実行することで自分をコントロールする力を身に着けていく方法です。

 

その基本は、病的な癖を意識し、癖に対して拮抗する行動を取り、記録をする、という流れで継続することです。

 

習慣逆転法は細かく分けて3ないし4つの段階から成り立ちます。

 

① 意識下練習・・・「癖行為をしようとしたこと」を記録にとどめる

 

② 拮抗反応の学習・・・「癖行為をしたいという気持ちになった時」に、
「癖行為を行う事を身体的に妨げる行動をとるよう自分 に強制すること」

 

③ リラックス・・・腹式呼吸(丹田式)、水氣道®などでリラックスする
  以上の3段階のみでも習慣逆転法の簡略版として有用なことがあります。

 

④ 偶然性の管理と汎化練習・・・これは習慣逆転法(簡略版)をサポートする意味合いの強い項目です。

 

・偶然性の管理は、褒美を与えて習慣逆転法を継続させようという考え方。

 

・汎化練習は、まず「衝動を感じる場合のリストを作る」、

そして「その状況下で習慣逆転法が成功する様子をイメージする」、
ということを繰り返し実践します。