私の産業医活動:その1.まずは名刺の準備から



私は昨年から長引く新型コロナ禍のために中断している「聖楽院」活動に充てていた時間帯を、新年度に向けて、何か社会的意義のある生産的な活動のために割り当てることにしました。


そこで日本の経済や産業を支えている企業、そして、それらは同時に日本の健康保険医療を支えている企業で働く現役世代の労働者の皆様のために貢献すべく、いくつかの企業の事業所の嘱託産業医を引き受けることにしました。

 

概ね毎月もしくは2カ月に1回、それぞれ1時間ほどの訪問であるため、これまでの診療時間を、新たに割く必要もありません。

 

そこで、さっそく学習したことは、今更ですが、これまでほとんど使用する必要のなかった名刺が、企業社会では必要になるという初歩的な常識です。

 

そして、臨床医である開業医としての今までの名刺のままでは全く場違いで説得力をもって通用しないということを知りました。

 

 

さて皆様は、名刺の肩書に、医師・医学博士もしくは医学博士・医師と書かれているのを見たことがあるでしょうか。私は、こうしたコテコテと重複するような見栄えが悪い肩書は好きではないので、わざわざ表記しないできましたが、それはかえって誤解を与えることがある、ということを複数の方からご注意をいただきました。

 

なぜならば、医学博士(学位)という肩書は、医師(資格)の上級資格ではなく、また、医師のみが取得できる学位ではないからです。しかし、一般の方の中には医師=医学博士と認識している方も少なからずいらっしゃるようです。もっとも、医学博士というのは旧式の表記法であって、近年では学位記に博士(医学)と書かれているため、博士(医学)と書くのが正式です。ただし、ずっと以前に学位を取得された方は、学位記にも医学博士と書かれているため、医学博士と書くのが自然でしょう。

 

そこで、詳細な経緯は省きますが、以下のような名刺(改訂版)を準備しているところです。

 


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高円寺南労働衛生コンサルタント事務所

産業医・労働衛生コンサルタント(保健衛生)

 

 

医師・博士(医学) 飯 嶋 正 広

 

 

衛生工学衛生管理者・第一種作業環境測定士(第1~5号)

第3種放射線取扱主任者/ 防災士(No.004435)

 

〒166-0003 東京都杉並区高円寺南3-46-5(杉並国際クリニック内)

Tel(03)3318-1822 Fax(03)3318-4432

 

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企業の人事部門や衛生管理者は、産業医が医師であることは、当然、認識されています。

 

しかし、彼らに「先生のご専門は何ですか?」と尋ねられて、たとえば「内科です」といった答えをしているようでは本物ではなく、「産業医学です」とか「労働衛生です」といった回答をすべきなのであるそうです。なぜならば、彼らは産業医に対して、臨床医学的能力を期待しているわけではないからなのです。
 

 

労働衛生コンサルタントというのは独立した国家資格であり、産業医の中では上級資格です。しかし、これが少しややこしくて、必ずしも医師でなくても取得できる資格なのです。ただし、その場合、産業医と名乗ることはできません。なぜならば、産業医は医師であることが前提だからです。

 

杉並国際クリニックの前身である高円寺南診療所の記憶は、期せずして労働衛生コンサルタント事務所の名称として止め置かれたことになります。
 

名刺には、衛生工学衛生管理者・第一種作業環境測定士(第1~5号)
第3種放射線取扱主任者という国家資格も記載していますが、これらの資格は産業医にとって必ずしも必要な資格ではありません。ただし、事業所の業種によっては密接にかかわる有益な専門的資格であるため付記しています。なお、防災士資格のみは、国家資格ではなく、特定非営利活動法人日本防災士機構が認定する資格です。
 

以上の資格は、すぐに役立てようと考えて取得した資格ではなく、しかも、すべて10年以上前に取得したものであるため、実務のためには改めて勉強しなおす必要があります。それにもかかわらず、日常診療とは全く無関係であったわけではなく、広い視野や発想により、貴重な気付きが与えられる経験を数限りなく得ることができたことは、とても有意義だったと考えています。