B型肝炎訴訟と給付金(No1)

 

肝炎情報センターの公式サイトから

 

新型コロナウイルスワクチン導入に連動して、従来から実施されているインフルエンザワクチン、子宮頸がん予防ワクチン、B型肝炎ワクチンなどについてのご質問やお問合せが増えてまいりました。中でも、給付金が支給されることの関連でTVなどのメディアにて目にする機会が増えてきた「B型肝炎訴訟の和解による被害者救済制度」については弁護士法人などのTV営業CMでおなじみになってきました。

 

そこで、今週は、B型肝炎訴訟と給付金について、皆様と一緒に勉強して参りたいと存じます。

 

 

最初に、そもそもB型肝炎とは何か(No1)、次いで、国を相手取った訴訟ということで法務省の見解(No2)、そして、具体的な運用と救済について厚生労働省が提示する手続き(No3)から確認していきたいと思います。

 

国立研究開発法人 国立国際医療センター 肝炎情報センターの公式サイトから

 

注意:

上記にて掲載されている記載のうち、2.B型肝炎の症状・経過、3.検査、4.治療 の記述は省略し、1.B型肝炎ウイルスの感染、5.予防(母子感染予防対策・ワクチン接種など)の記載部分のみを紹介しました。

 

なお、文書中で下線を施した部分、太字の部分に関しては、読者の皆様に注意を喚起する目的で、当方(飯嶋正広)の判断で施しました。

 

 

B型肝炎

 

掲載日:2016年7月12日

改訂日:2020年7月7日

 

 

1. B型肝炎ウイルスの感染

 

B型肝炎はB型肝炎ウイルス(HBV)が血液・体液を介して感染して起きる肝臓の病気です。HBVは感染した時期、感染したときの健康状態によって、一過性の感染に終わるもの一過性感染)とほぼ生涯にわたり感染が継続するもの持続感染)とに大別されます。持続感染になりやすいものは、出産時あるいは3歳未満の乳幼児期の感染です。HBVの感染経路は垂直感染と水平感染に分けられます。

 

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垂直感染

 

• 出生時の母子感染

 

• 母親が妊娠中に子宮内、産道で感染

 

 

 

水平感染

• 濃密な接触(性行為など)

 

• 静注用麻薬の乱用

 

• 刺青

 

• ピアスの穴あけ

 

• 不衛生な器具による医療行為

 

• 出血を伴うような民間療法

 

• その他

 

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2016年4月1日以降に生まれた全ての0歳児にHBVのワクチンが接種されるようになりました。ワクチンを打って抗体が陽性になればHBVに感染することはありません。また、B型肝炎ウイルスにはジェノタイプ(genotype)という、少しずつ違うタイプのウイルスがあります。日本に多いのはジェノタイプC、次いでジェノタイプBでしたが、最近欧米で多いジェノタイプAの感染が増えてきています。このタイプのHBVは成人が感染しても持続感染になる率が少し高いことが知られています。

 

 

5. 予防(母子感染予防対策・ワクチン接種など)

 

現在、我が国で行われているHBVに対する感染予防は、①HBV持続感染している母親からの出産時感染予防対策によるHBV免疫グロブリンとワクチン接種の組あわせによる予防、②医療従事者など希望者に対するワクチン接種による予防、さらに2016年10月より③0歳児全員に対するB型肝炎ワクチン(HBワクチン)による予防が行われています。

 


HBV母子感染予防対策事業

本邦では1986年に開始されました。HBV持続感染している母親から産道感染で新生児にHBVが感染するため、当初は出産時と生後2ヶ月にHBV免疫グロブリンを、生後2、3、5ヶ月でHBワクチン接種を行うことになっていましたが、2013年10月から早期接種方式国際方式)へ変更されています。これは、出生後できるだけ早い時期(12時間以内が望ましいとされています)にHBV免疫グロブリン1 mLを筋肉内投与、HBワクチン0.25 mLを皮下注射し、さらに、HBワクチン0.25 mLを1か月後、6か月後に2回追加接種するスケジュールです。母親がHBe抗原陽性キャリアの場合、旧方式では生後2ヵ月目にもHBV免疫グロブリンを追加投与していましたが、新方式では省略可とされています。

 

 

医療従事者などに対するワクチン接種

(1)初回(2)初回投与1ヶ月後(3)初回投与6ヶ月後にHBワクチンを接種します。

 

B型肝炎感染リスクの高い人(HBVキャリアと同居する家族、医療従事者、警察官、消防士など)は、一度はHBワクチンを投与し、その後 HBs抗体の陽性化を確認することが大切です。詳しくは、別稿の「日常生活の場での感染伝搬予防」をご覧ください。

 

 

HBワクチンの定期接種化

我が国では、1986年から開始されていた従来からの母子感染予防対策事業によって新規のHBV母子感染をほとんど防げるようになりました。しかしながら、依然として、ピアスの穴開けやタトゥー(刺青)、性行為等による水平感染や、ワクチン接種を受けていない乳幼児の水平感染の事例が報告されています。

また、ゲノタイプAのHBVは成人が感染してもある程度の割合で慢性化することがわかりました。そこで、2016年10月から、B型肝炎ワクチンが定期接種化されました。0歳児に限り、公費(無料)で接種を受けられ、生後2ヶ月から接種可能です。接種回数は3回で、1回目の接種から27日を過ぎてから2回目を接種、さらに1回目の接種から139日を経過した後(20~24週後)に3回目の接種を行うことになっています。

 

なお、1歳の誕生日の前日までに3回接種ができなかった場合は、誕生日以降の接種は有料となるので注意が必要です。また母児感染予防として、出生時にB型肝炎ワクチンの接種を受けたことがある場合は、定期接種の対象となりません。