「産業医学」事始めNo1.

 


産業医学とは

 

「産業医学」とは、労働環境や作業条件と、働く人々の健康との関わりを追求する医学です。職場とは、働く人々が、その生活の中で長い時間を過ごすことになる居場所です。

 

その環境と人々の健康は、切り離せない関係にあります。古くから職場の環境や作業の形態によって、職業病や作業関連疾患など様々な健康問題が発生していました。高度成長期以降も、オフィスの情報化、労働者の高齢化、新たな化学物質など、職場には働く人々の健康に関わる環境の変化が生まれています。以前から長時間労働による過労死が問題になっていましたが、身体面ばかりでなく精神面での健康管理がますます必要となってきており、高ストレス者に対するメンタルケアも重視されるようになってきました。

 

「産業医学」は、こうした産業活動に関連する健康問題を取り扱う医学の一分野です。疾病の原因探求などの基礎的研究から、働く人々の疾病予防や健康の保持増進、求職者の職場復帰に向けてのリワーク支援などの実践活動まで、幅広い範囲が含まれています。
私は、「産業医学」とは予防を基礎に据えた健康管理医学であると考えています。実際に労働衛生上で「三管理」という用語が用いられています。「三管理」とは健康管理、作業管理および作業環境管理です。

 

この場合、健康管理と言っても、産業医学における健康管理としては、作業者の健康状態を健康診断で把握して、その結果に基づいて適切な措置や保健指導などを実施し、作業者の健康障害を未然に防ぐことを内容とします。定期健康診断の受診を促すほか、有機溶剤や鉛、粉じんを発生するおそれのある作業を発注している場合は、特殊健康診断の受診を促します。

 

作業管理とは、 作業時間・作業量・作業方法・作業姿勢などを適正化したり、保護具を着用して作業者への負荷を少なくしたりすることです。定期的に作業現場を巡回して、作業をマニュアル通り行っているか、仕事量は適量かどうかなどをチェックします。

 

作業環境管理とは、作業環境中の有機溶剤や粉じんなど有害因子の状態を把握して、できる限り良好な状態で管理していくことです。危険有害物を取り扱っている作業場があれば、その物質の有害性、取扱量、作業場所への発散状況などを調べ、必要な措置を講じます。