週間特集: <コロナ蔓延下での実母入院騒動の顛末記>No3

 

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第二日:116日(土)の受診時の状況がとても印象的でしたので、今回は、昨日の追加報告から始めます。

 

母を伴いS病院の診察室に入室すると、天井から吊るされた透明のカーテン越しに医師が座っていました。

 

看護師より促され、兄、母(車いす)、私の順で左から座るようにという指示に従って着席しました。そこで医師にこう告げられました。

MRIを見ましたが、何の異常もありません。」

 

終始、透明カーテン越しのままで、母に対しては一切の問い掛けもありませんでした。

 

一方的な結果の宣告のようであり、コミュニケーションは成立していませんでした。

 

それはまるで、遠隔診療のように感じられました。むしろ遠隔診療よりも心理的には隔たりを感じざるを得ない構造と冷酷な雰囲気でした。私も医療従事者の一員ですから、医師がどれだけ高い感染リスクに晒されているのかについて懸念があることは察することができます。これもすべて新型コロナ感染症対策のための病院の配慮によるものだと思われます。

 

しかし、脳神経系の疾患の診療に不可欠な、初歩的な神経学的検査を省略して画像データのみで断定的な診断がなされてしまうことは、とても恐ろしいことに感じられました。

 

MRIに異常がなく、こちらではできることがないので、神経内科を受診してください。」

 

と、早くも終了!を宣告されそうになり、私としては、何とか「それでは『診療情報提供書』を書いてください。

 

とお願いすることが精一杯なのでした。このような状況に置かれては全くの素人同然で無力感に打ちひしがされざるを得ませんでした。

 

そこで、杉並国際クリニックの患者の皆様方で、とくに遠隔の地に高齢の親御さんが独居されている方のためにも、今後、いつ発生するかわからない現実の顛末をお伝えしておくことは私のささやかな使命であるとの思いを強くしたのでありました。

 

 

第三日:117日(日)朝。急遽駆け付けてくれた長女と二人掛りで母の入浴をようやく済ませました。幸いに母は比較的穏やかに眠ることができました。昼過ぎに、日頃母がお世話になっている知人の訪問がありましたが、その後も長時間にわたって睡眠(昏睡?)が続いていました。しかし、夜7:45に母は前触れなしに、突然の激しいけいれん発作を来したため、そこで迷わず119番に通報しました。

 

救急車を待つ間には「吸い呑み」で白湯を飲ませました。間もなく救急隊が到着し、救急外来に無事搬送され、血液検査やCT検査を受けることができました。そして、今度こそはようやく入院加療が可能になるものとの期待をし始めた矢先のことでした。救急当直医より、「検査に異常がないためお帰りください。

 

しかも、付き添いのご家族が新型コロナウイルス流行地(東京)から来ているとあっては、入院など無理です。」と強く拒否され、やむなく帰宅しました。帰宅後も深夜から早朝にかけてけいれん発作が再現し、途方に暮れてしまいましたが、これまでの経緯を踏まえて観念し、何とか耐え忍びつつ翌朝を迎えることになりました。

 

救急車騒ぎから戻ってきて、また、母が硬直発作を起こした際には、『牛黄(ゴオウ)』のカプセルの中身をだして、白湯に溶かしてのませました。

 

すると、数分前まではまったく話すことができなかった母が、「足が痛い」とはっきりと話したので、大いに驚きました。ふと見るとベッドの転落防止柵の格子に足が挟まっているのを確認し、再度、驚いてしまいました。

 

認知症の可能性も疑っていましたが、つい一週間ほど前までは、母は毎日のように姉妹同士で連絡を取り合っていたとのことから、たとえ認知症であったとしても軽症であったはずです。

 

そして、一般に認知症は徐々に進行していきます。ですから意識水準や言語・運動機能が急激に低下するケースでは、何よりも急に脳の異変が発生したと考えることが道理のはずです。

 

つまり、杉並国際クリニックで日ごろから実施しているような丁寧な経過観察や前回までとの所見の違いを見落とさない診療姿勢が大切なのだと、改めて思いました。

 

「高齢者の健康管理に対しては、基幹病院の外来診療にありがちな長期処方は問題が多い」と、ことあるごとに述懐している院長の言葉を思い起こさずにはいられませんでした。

 

実際に1か月以上の処方を強く希望される高齢者に限って、独特の自信や自負に凝り固まっていて、その上、リスクが高い方が多いので困る」という院長のコメントも私の実母にはそのまま当てはまっていたことが、間もなく判明するのでした。

 

 

 

それでは、本日までの母の意識レベルの変化をまとめてみます。

 

 

JCSでは

 

刺激すると覚醒する状態(2桁)

 

 

普通の呼びかけで容易に開眼する・・・10

 

Restless(不穏)上半身全体の震え

 

一昨日の(推定)JCS評価3R⇒ 昨日のJCS評価2R⇒本日10R

 

開眼しているのか、閉眼の状態なのかで、JCSの評価は大きく異なります。JCSの基準を機械的に当て嵌めると、本日の意識レベルは急激に低下したことになります。

 

 

GCSでは

 

〇 開眼機能:命令すると開眼・・・E

 

〇 言語機能:「はい」と答える(見当識がある)・・・V

 

〇 運動機能:病的屈曲(除皮質硬直)・・・M3、上肢の震え

 

一昨日の(推定)GCS評価GCS7E13 M3

 

 昨日のGCS評価GCS12EVM3

 

 本日のGCS11EVM3

 

GCS評価でも、昨日より意識レベルが低下していますが、一昨日のスコアよりは良好でということになります。

 

 

この間に、母に施された専門医学的治療は皆無であり、家族として、薬剤師としてできたことは、介護と看護、それから、日常の治療薬の内服支援に加えて、杉並国際クリニックの患者の皆様方には、すでにおなじみであると思われる漢方薬『地竜(ぢりゅう)』『牛黄(ごおう)』のみだったということは、今振り返ってみても驚きです。

 

新型コロナ下にあって、こうした漢方薬が予防ばかりか治療に対しても絶大な威力を発揮しました。そして年明け早々に、多くの患者の皆さまからも、予想を上回る感謝の言葉いただいたことを励みとして、今後も、ますます漢方の研究を続けなくては、と思いを新たにしたばかりでした。そして、その漢方薬が通常の医療から疎外された救急の状況においても大きな助けとなったことを直に体験できたことに摂理を感じるとともに、深い感動すら覚えています。