新型コロナ騒動がもたらす高齢者世帯の二次的健康被害、NHKの報道からNo3

 

前回はこちら

 



2020年5月24日 19時16分

 

東京都内の住宅で1人暮らしの70代の男性が誰にもみとられず死亡し、その後の検査で新型コロナウイルスに感染していたことが関係者への取材でわかりました。専門家は感染の影響で人との接触が難しくなる中、孤立しがちな高齢者をどう見守るのか、社会全体で考えるべきだと指摘しています。

 

 

友人が語る孤独死男性の最期の日々

 

死亡した70代の男性は、2か月ほど前に、親族とは疎遠になっているうえ、足が不自由になり買い物にも行けず困っているとして、60年以上会っていなかった中学時代の友人に助けを求めてきたということです。
 

男性と友人は中学校で同じ野球部に所属していたということです。

 

男性は大学卒業後、小学校の教師をしていましたが、50代で辞め、それ以降、家に閉じこもるようになっていったということです。
 

男性は兄に面倒を見てもらっていましたが、ことしに入ってその兄も亡くなり、男性は乗っていた車を壊してしまい、足も不自由になってスーパーにも行けず、困っていたということです。
 

 

コメント:

何とも切ない現実を垣間見た

 

小学校の教師であったこの男性の半ばミステリアスな人生を振り返って、まず、この方が50代で退職した理由が気になります。新卒で教師になって50代に至っているのですから、およそ30年以上の経験を積んだベテラン教師といって良いでしょう。

仮に60歳が定年だとして、早期退職された理由は何だったのだろうかと想像させます。

 

気になるのは、「学校を辞めた後、家に閉じこもってしまい、誰も家に入れなくなっていたようだ」という情報です。

 

何か、新しい目的を見出して、新たな職業に就く、とかライフワークや趣味に没頭する、といった目的での退職ではなかったことがそれとなくうかがわれてきます。

 

定年まで勤めあげて、退職金と恩給(古い言い方ですが、年金というべきでしょうか)とで平穏な暮らしを送ることは困難だったのでしょうか。
 

また「男性は兄に面倒を見てもらっていましたが、ことしに入ってその兄も亡くなり」ということですが、兄という方にはどのような範囲での面倒を見てもらっていたのでしょうか。

経済的な面でしょうか、精神的な面でしょうか、それともすでに何らかの身体・行動障害があったのでしょうか。「男性は乗っていた車を壊してしまい」とありますから、完全な引き籠りではなく、自動車での買い物その他の移動の痕跡はあり、少なくとも最小限度の社会活動や近隣との接点はあった可能性があります。

 

ところで、「足も不自由になってスーパーにも行けず、困っていた」ということなのですが、足がどのような原因で不自由になり、どの程度の障害があったのかも医師としては気になるポイントです。

 

しかし、この限られた情報の中で、ある程度、明確に言えることは、この男性が困る状態になるずっと以前から、人生の破綻と危機に至るリスク因子が未解決のまま、つまり、将来設計のないまま時間が経過するなかで、加齢という不可逆的な現象のみが進行していったということが言えるでしょう。

 

つまり、本人の加齢のみならず、本人より高齢である保護者である兄の加齢が将来どのような現実をもたらすかについては、本人も十分に自覚していたはずです。

しかし、自覚しているだけではどうすることもできない人々も少なくないということが社会問題なのだと思います。


さて、老々介護という言葉がありますが、介護を受けている超高齢者ではなく、介護奉仕をして支援している側の高齢者が先に発病し、入院し、要介護になり、あるいは死亡してしまうことによる悲惨な社会現象も報告されています。

 

高齢者だけの家庭が増えていく中で、今後ますます、こうしたケースが増えていくことは避けられないといえるでしょう。ですから、わが国にとって、今後ますます大きな社会問題となりつつあるところに、新型コロナパンデミックが発生することによって、この問題がますます加速化していることに注目せざるを得ないのです。