急性咽頭炎の診断・治療および事後管理に関する問題点と当クリニックの方針
(杉並国際クリニック令和3年初版)その1(全4回)
「コロナ対策の基本はインフル対策だ!」と私は叫び続けてきました。
新型コロナとインフルはウイルスが似ている!?
新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスは、まったく別の種類であると認識されています。
しかし、実際には、いずれの一本鎖RNAウイルスであり、大きさも形も非常によく似ています。いずれも直径約100nmの球状で、カプシドというタンパク質の殻の中にゲノム(遺伝物質)が入った、ウイルスでは一般的な作りになっています。
これまでインフルエンザ感染症対策のみならず、病気の予防に対して軽視せずに、きちんと対応しておくべきでした。
また、およそ百年前のスペイン風邪(インフルエンザ・パンデミック)を克服してきた我々の先輩医師たちの経験や教訓に対して、もっと謙虚な態度で、そこからたくさんのことを学習し、知恵を蓄積していたならば、不幸な犠牲者の数をかなり減らすことができたはずだと残念に思います。
新型コロナウイルス感染症とインフルエンザ感染症の違い
※…飛沫感染・接触感染がメインだが、換気の悪い場所では空気感染が起こり得るとの情報が多い(最近まで空気感染は否定されていました!)
発生して間もない新種のウイルスに対して、真の専門家は存在し得ません。
すべての医師は素人です。素人は専門ぶらずに謙虚であるべきです。
未知のウイルスについては既存のウイルスから軽率に類推した仮説を公言すべきではないのです。
さらに言えば、誤った情報提供をきちんと訂正するといった当然の責任を果たさないまま、あいまいな態度を取り続け、同時に新たな情報を提供し続けるような姿勢はメディアにとっても悪影響を及ぼしてしまったように思われます。
実際に、これまで私が述べてきた以上に正確で有益な情報を国民に提供してきた専門家は存在したでしょうか?これまで私のブログを閲覧してきた皆様は簡単に答えが出せるはずです。
しかし、そうは言っても、むしろ、そうだからこそ、共通点の多い、あるいは共存し得るウイルス同氏の相違点を整理してみることから始めてみることは臨床的に有用な作業だと考えます。
まず、重症度の違いです。現状の感染者数はインフルのほうが多いものの、致死率と症状の持続期間を見ると、症状の重さは新型コロナが上回ることが分かります。
両者の感染力は大差ないことが分かっているほか、新型コロナウイルスは少なくとも4種の変異種が報告されているうえに、国内ではまだ新型コロナのワクチン接種が始まっていないため、今後新型コロナの感染者数がインフルを上回る可能性は比定できません。
次に、致死率の違いです。致死率も新型コロナが上回っています。新型コロナの致死率の絶対数がそれ程高くないと発言する人が少なくないのですが、それでも、新型コロナによる致死率はインフルエンザのそれの2.5~30にも上っていることは軽視してはならないと思います。
さらに、新型コロナの大きな特徴として、無症状率の高さ(最高60%、インフルエンザの6倍)が挙げられます。新型コロナは潜伏期間が長く、一部は無症状のまま治癒しますが、無症状の時期にも強い感染力があります。症状が出てから感染のピークを迎えるインフルとは違い、新型コロナは、症状のない状態でも、既に多くの人にうつしている可能性が高いのです。
息切れや嗅覚・味覚障害は新型コロナの特徴的な症状ですが、必ずしもあらわれるとは限りません。インフルは関節痛や鼻水がひどくなることが多いので、ある程度は鑑別の参考になりますが、新型コロナにおいてもこれらの症状があらわれないとは限らないため、症状のみから軽率に判断することは危険です。
ダブル流行期だからこそ気をつけたいこと
冬から(特に1月と2月)は新型コロナとインフル、両方の流行が予想されます。前述のとおり、インフルの流行に伴い、発熱などの症状を訴える人が増えることで、今までよりも検査が遅れたり、医療機関をスムーズに受診できなかったりする恐れがあります。そのため、感染予防対策に加え、感染したらどうするか、を考えておく必要があります。
新型コロナの対策としては、引き続き、マスクの着用、手洗い・うがいの実施、アルコール消毒の実施、3密を避ける、換気などを徹底しましょう。新型コロナは、無症状の人からの感染が多い病気です。「うつらない」だけでなく「うつさない」、「自分は既に感染していて、他者に感染させている可能性がある」ということを認識しておくという心がけが大です。
インフルの対策としては、新型コロナの対策がそのまま使えるといってよいでしょう。
実際に、今年のインフルの感染者数は、昨年に比べ1%以下(2020年11月現在)と非常に低くなっており、これは新型コロナ対策による予防効果といわれています。また、インフルは新型コロナと違い、有効とされるワクチンがあります。自分自身と医療機関、両方の混乱を防ぐためにも、昨年は特にワクチン接種を強化してきました。
そして、万が一感染した場合に慌てないよう、感染したらどうするか前もって考えておきましょう。
まず、かかりつけ医がある場合は、発熱等の症状が出現した場合の受診方法を確認しておきましょう。また、家族が発症した場合に家庭内感染を広げないように、あらかじめ注意事項を入手しておくことも大切です。
最期に、インフルエンザの重症化・合併症のハイリスク者について知っておきたいことのまとめ
(その多くが新型コロナ感染症の場合にも合致しています。)
重症化・合併症のハイリスク者(CDCの勧告より)
・6カ月~5歳未満のすべての小児
・50歳以上のすべての人
・慢性肺疾患、慢性心疾患、腎臓・肝臓・神経・血液・代謝疾患をもつ人
・免疫抑制状態(免疫抑制剤やエイズ感染を含む)の人
・妊婦、およびインフルエンザ流行中に妊娠する可能性のある人
・長期間アスピリン治療を受けている小児と青年(6カ月~18歳)および来症候群の
リスクのある人
・介護施設や長期療養施設に入所している人
・著しい肥満(BMI≧40)
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