運動生理学的トレーニング理論の限界と水氣道の可能性No11

 

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水氣道稽古の12の原則(7)反復性の原則(3)

 

運動生理学やトレーニングの理論では、体力の向上には少なくとも週3回以上、規則的に、長期間行うこととされます。

 

技術面でも何度も繰り返し継続することで、神経系も強化され「自分のもの」とすることができます。1度や2度のトレーニングでは効果を得られにくく、習慣的に継続して行うことでより効果を上げられます。

 

それでは、水氣道の稽古も週3回以上行わなければ効果が得られないのでしょうか?

 

そのようなことはありません。

実際に週3回以上稽古に参加している会員は、それほど多くはありません。

 

週3回以上の参加が絶対条件になるのは、黄帽子組(支援員)以上で、今後も昇段を目指す会員のみです。

 

青帽子(指導員)など四段以上の職業水氣道家を志す方は、週4回以上の参加が求められます。

 

これに対して多くの会員は、せいぜい週2回もしくは1回という参加頻度です。週1回の参加でもエクササイズ効果はありますし、極端な話、月に1回しか参加できなくても継続して参加することには大きなメリットがあります。

 

その理由は、水氣道のエクササイズの内容がユニークであるからです。

日常の生活が陸上であるのに対して、水氣道のエクササイズは水中という、まったく異なる環境でのエクササイズだからです。

しかも、水泳とは異なり、基本的に起立二足歩行での運動を行います。

 

水には様々な物理的作用がありますが、とりわけ浮力による実質的体重の減少のために、抗重力筋が弛緩することにより、関節の可動域が拡大します。

そのため、日頃十分に使いこなせていない筋群を総動員させることができます。それは直ちに、より多くの神経系を賦活し、促通することにもなります。

 

このように、水氣道では、仮に月に1回程度の参加であっても周期的・計画的な参加により得られる健康上のメリットは少なくないといえるでしょう。そして、私は、反復性(継続性)の原則の概念の中に、周期性・計画性という要素を盛り込んでいます。

 

ですから白帽子組(体験生・訓練生)の皆さんには、まず稽古曜日を決めて、可能な限り毎週、よくを言えば週に2回参加していていただければと考えています。週1回程度の稽古でも4級程度、週2回程度の稽古では1級レベルに到達することも十分可能です。

 

 

水氣道における「反復性の原則」

 

水氣道での「反復性の原則」の特徴は、規則性を重視するところにあります。

 

つまり、トレーニングの効果を得るには、繰り返し行う必要がありますが、トレーニングの反復・継続をさらに規則的・計画的に行うことで、効果がより現れやすくなるというふうにこの原則を理解します。

 

この原則から形成されていくのがトレーニングの習慣化であり、トレーニングすることが生活の一部と化し、さらには生活そのものと一体化しつつあるならば、それをトレーニングの生活化と呼びます。

 

そして、水氣道は生涯を通して継続することを目標とする生涯エクササイズであるということも、この「反復性の原則」を基礎としています。
 

 

 

「反復性・周期性の原則」

 

このように水氣道の効果的な運動プログラムは、ある程度の期間、規則的・計画的に繰り返すようにしています。

 

繰り返し行うことは、テクニックを上げるための重要な要素です。

 

周期性の原則は、1年間を通したトレーニング計画を行うことです。

 

どの時期や季節が最も効果的かを考えてプログラムを作成します。

ただし、どんなトレーニングでも「繰り返し」を続けることが基本です。 特に身体の基本動作になると毎日の練習が必要です。効果を得るためには、継続することが何より大切です。運動は一生ものと考えて習慣にしましょう。
 

体力や気力を維持するにも、やはり継続が欠かせません。

トレーニングを始めたてのときは、自分が使いたい筋肉の感覚が明確にわからないことがあります。

しかし、何度も繰り返し反復することで神経系も強化され、神経や筋肉を快適に使っている感覚というものが育まれてきます。

 

ですから、初めてやってよくわからなくて興味が持てなくても諦めず反復して練習することで次第によくわかるようになり、楽しくなってくることを経験できるまで「反復・継続」することが大切なのです!

 

 

水中トレーニングとトレーニングの原理・原則

 

水中トレーニングでは、水中という陸上とは全く異なる環境に身を置くことだけで、体の内側から「過負荷の原理」が起きている状態となります。

 

より一層「トレーニングの原則」を留意しながらトレーニングを実施していくことが重要であることはいうまでもありません。また、健康づくりのためには水中環境で過ごしたり、いつもより軽い運動をしたりするだけでも効果が期待できます。

 

疾病の改善や健康づくりのための運動プログラム作成に関しては、特別に「運動処方」という言い方をします。

 

安全で効果的な運動処方を行うためには、運動前の問診やメディカルチェック・体力測定(フィットネスチェック)を実施し、個人の潜在的なリスクや体力水準、体組成などを評価する必要があります。

 

また運動中は定期的な強度の監視、運動後はトレーニング効果の再検査が重要です。

特にプログラムの作成にあたっては個人の特性を考慮し、各国で定められている運動処方の指針に従い、科学的に裏付けられたプログラムの作成が望まれます。

 

運動経験もないトレーニング初心者さん(水氣道の体験生)が、 いきなり上級者が行うようなハードな筋トレや複雑な航法をするのには無理がありますし、 高齢者が若い方と同じ方法で取り組む場合でも、怪我につながる可能性もあり危険です(個別性の原則)。

 

 

 

水氣道の原理・原則・法則の違いとは

 

◆ 原理とは

 

「自然科学においては,ある理論体系の基礎になっている法則および命題をさす。初めは仮定として導入されたものでも、それから出てくる結論が事実を正しく記述しているかどうかによって、その原理の正当性が判断される」

 

 

◆ 原則とは

 

「人間の社会的活動の中で、多くの場合にあてはまる基本的な規則や法則」
 トレーニングの<原理>は心身に起こる現象のことを指し、トレーニングの<原則>」は、効果を出すうえで守るべき法則(行動規則)のことを指しているのです。心身に起こる反応について知り、理解する。そして法則を守りながらトレーニングを行うことで、その効果をさらに高めることができるでしょう。

 

 

◆ 法則とは

 

「① 必ず守らなければならない規範。おきて。」

「② いつでも、またどこででも、一定の条件のもとに成立するところの普遍的・必然的関係。また、それを言い表したもの。」

 

上記の①、②のうち、トレーニング理論で用いられる<法則>にあたるのは②です。それは、具体的には「練習はただ何でもやれば効果が上がるというものではなく、基本原理・原則に基づいて計画的に行うことで大きな効果を得ることができる。」という体力トレーニングの根本とされる「ルーの法則」として知られています。

 

すなわち、

 

1) 体の機能は適切に使用すれば現状を維持でき、
さらに増強させることができる。

 

2) 体の機能は使用しなければ衰える。

 

3) 体の機能は過度に使用すれば障害をきたす。
これに対して、水氣道は、心身のトレーニングであることから、水氣道の法則は心身のトレーニングの法則ということになります。

 

すなわち、

1) 心身の機能は適切に使用すれば現状を改善できる。

 

2) 心身の機能は使用しなければ衰える。

 

3) 心身の機能は過度に使用すれば障害をきたす。

 

ただし、心身の機能を適切に使用して現状を改善すれば、
適切に負荷を強めていく限り障害を来さずに、現状をさらに改善できる。

 

 

 

今年の総括:

上達(昇段・昇級)している人の特徴

 

1. 水氣道の稽古の目的を理解し、人間性や人格を磨く

 

2. 自分の役割を意識して参加する(意識性の原則)

 

3. 反復・継続してトレーニングを行う(反復・継続性の原則)

 

4. 全身しっかりトレーニングを行う(全身性の原則)

 

5. 漸進的に負荷を上げる(漸進性の原則)