第2週:感染症・アレルギー・膠原病、Covid-19の原因と治療を最新の腸管理論から考えるNo2

 

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・・・最先端の理論に対して、なぜ漢方薬が用いられるのか?

 

人類生存の歴史は疫病との闘いの歴史でもあり、そのたびに新たな治療法が発達してきました。今回のCOVID-19は約100年前のスペイン風邪と比較されますが、当時の日本の統合医療(西洋医学×漢方医学)の水準は現代と比較しても原理的に遜色のないものであったことが内務省衛生局(厚生労働省の前身)の記録からも明らかです。逆に言えば、ウイルス性新興感染症に関しては世界の医学は100年前と比べてほとんど進歩していないともいえるのではないかと考えられます。

 

漢方治療は複合生薬で種々の効果の総合的作用であること、生体防御能を駆使してウイルス増殖を抑えるため、有効かつ安全なワクチンや薬剤が開発されるまでの間、感染爆発に対して一定の抑止力を期待して、治療に用いることは非常に理に適っています。

 

 

COVID-19に対する漢方治療の目標

 

漢方治療としてできることは、

1) ハイリスク患者の感染予防もしくは感染しても軽微な症状で治癒すること

 

2) COVID-19感染軽症患者の重症化予防

 

3) COVID-19感染重症患者の死亡リスクの低減

 

この3段階において、少しでも入院を要するような感染者を減らすことができれば、漢方が医療崩壊を防ぐことにも貢献できます。

 

 

漢方によるCOVID-19の予防

 

漢方薬の予防投与は「険診療で認められない」ため、予防に用いることができるOTCの漢方薬や生薬を活用します。

漢方では古くから、胃腸が弱ると防御機能が弱ることを知っていたので、徹底的に冷えを嫌います。

この考え方が正しいことは近年になって現代医学によって証明されつつあります。このように漢方の考え方は基本において西洋医学と矛盾するものではなく、互いに補完し合える点も少なくありません。

 

胃腸の働きを強化し防禦機能を高める作用をもつのが補剤と呼ばれる一連の漢方薬であり、その筆頭が『玉屏風散(ぎょくへいふうさん)』です。これは年齢を問わず誰にでも使えるメリットがあります。

実際に、家族クラスター予防のためにも重宝されていて、受診者でない御家族や親類の皆様の感謝のメッセージをお伝えいただくことも毎日のようにあります。

 

 

漢方によるCOVID-19の初期治療

 

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が猛威を振るう中で、東アジアにおいては中国のみならず、韓国・台湾でもいち早くCOVID-19に対する漢方治療のガイドラインが発表されました。

これらの要点は、感染徴候が少しでもあったら、可及的に速やかに葛根湯や麻黄湯、高齢者では麻黄附子細辛湯を服用させます。

しかし、これは普段から手元に常備しておかなければ間に合いません。

とくに、COVID-19は上咽頭のみならず、気道の奥深く肺胞に達するところで増殖し、症状が出てから一気に悪化すると言われていますので、発熱を認めた時点での葛根湯・麻黄湯では手遅れになります。

この場合は、常備薬としての『柴葛解肌湯(さいかつげきとう)』を内服していただくのが良いです。

 

漢方薬は飲みたいが医療機関には行きたくないという方の相談を受けることもありますが、その場合は、ショウガ汁を飲んで身体を温める他、食品区分の『板藍根(ばんらんこん)』
「薬用人参」、「霊芝」、「冬虫夏草」などの免疫を高める生薬をお勧めしていますが、次第に品薄となっているようです。

 

これらの中で、杉並国際クリニックのCOVID-19対策漢方レシピとして採用しているのは、「板藍根」と「薬用人参」です。特に「板藍根」は10月から翌年3月までの半年間のオプションとして『玉屏風散(ぎょくへいふうさん)』とセットで日頃から内服することを推奨しています。

また「薬用人参」は単独ではなく、『生脈散(しょうみゃくさん)』や六君子湯類の構成生薬として他の生薬とバランスよく含まれている人参を用いています。

 

具体的な例としては『香砂六君子湯(こうしゃりっくんしとう)』『柴芍六君子湯(さいしゃくりっくんしとう)』です。人参は単独よりも黄耆(おうぎ)という生薬と併せて用いると参耆剤(じんぎざい)と呼ばれる免疫力アップのための強力なラインアップになります。

ですから、今年の夏バテ対策や急性胃腸炎対策として黄耆がっている『玉屏風散』と人参が入っている『生脈散(しょうみゃくさん)』を併せて飲んで生き返ったように元気になった方がたくさんいらっしゃいます。

 

渡辺賢治先生(慶應義塾大学医学部漢方医学センター客員教授)も、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する未病漢方活用法」で、予防薬として『玉屏風散』、『板藍根』や『薬用人参末』をお使いになっている他、『柴葛解肌湯(さいかつげきとう)』、『藿香生気散(かっこうしょうきさん)』などを治療薬として採用しておられますが、杉並国際クリニックのラインアップとの共通点がみられます。