新型コロナは"空気感染"、仙台医療センター・西村秀一氏が学会講演No1

第2週:感染症・アレルギー・膠原病 

 

わが国でも米国でも新型コロナ感染症(Covid-19)の存在が知られるようになって1年を経過していません。そのような背景からすれば、Covid-19の専門家ということになっている方々も経験1年未満の研修医とさして変わりがありません。

 

このウイルスの発祥は中国武漢ということになっていますが、あっという間に世界中に蔓延してしまいました。そこでウイルス学専門家、疫学専門家、公衆衛生専門医などの活躍が期待されてきました。

 

未知のウイルス感染症が発生した場合、あるべき専門家の姿勢としては、自らの経験則に基づいて情報を収集し、分析する場合においては、希望的観測を交えないということではないかと思います。

 

この未知であったウイルスは、最初はヒトからヒトへの感染はない、流行は夏までは続かない、マスクは不要である、などと根拠が不十分なままのメッセージが世間に広くいきわたってしまいました。その後、ヒト⁻ヒト感染が証明されましたが、通常の感冒の類であるという主張まで見られました。感染様式については接触感染と飛沫感染であるとされてきました。その後、飛沫核感染が指摘されるようになりましたが、それでも感染力は弱く空気感染はしないと信じ込まされてきました。

 

 

WHOは換気不十分下での空気感染の可能性に言及
 

ヒトのくしゃみを高速度で連続撮影すると、極めて短い時間における飛沫の動きが見えます。それらは3つに大別して考えることができます。

 

① 重力で短時間に放物線運動で落下する大飛沫

 

② 長い時間をかけてゆっくり沈降するより小飛沫

 

③ 粒子径が小さく最初から空気中に浮いてエアロゾルとなっている微細飛沫

 

 

①の大きな飛沫を吸い込むには、極めて短時間かつ掃除機並みの吸引力または逆立ちの姿勢を取る必要があり、例外を除き感染にはほとんど寄与しません。
 

一方、③はもとより②であっても空気の流れに乗れば落下せず、これらの浮遊している飛沫を吸い込む経路での感染が空気感染で、ウイルスを含む粒子に注目すれば、エアロゾル感染です。
 

 

SARS-CoV-2に関して空気・エアロゾル感染の可能性が考えられた例として、次のような事実が知られています。

 

例1)窓を閉め切った室内で高齢者ら30人が会議を行いSARS-CoV-2に感染し沖縄初のクラスターとして報じられた例、中国・湖南省の長距離バスで発生したクラスターをめぐる研究において、COVID-19患者から4.5m離れた座席にいた乗客が感染していた。

 

例2)中国・広州市のレストランでの感染例を調べると、空調の流れに沿ったテーブル席の客だったという報告(Emerg Infect Dis 2020; 26: 1628-1631)など枚挙に暇がない。
 

そのため世界各地の研究者らは、空気感染対策を講じない限りSARS-CoV-2感染拡大に歯止めがかからないとして世界保健機関(WHO)に対策の見直しを求めました。その結果、WHOはようやくのことでSARS-CoV-2が換気不十分な環境下での空気感染である可能性に言及するに至りました。
 

このようにテドロス氏が率いるWHOという組織は、各地の医療現場からの多数の情報が集まってきても、なかなか事実を認めようとしない体質になっているようです。