緊急ニュース(第二報):新型コロナワクチン治験中断

9月11日(金)

前回はこちら

 

新型コロナウイルスのワクチン開発は、各国が実用化を急ぐ中、過去に例のないスピードで進められていて、専門家からは、安全性を十分検証するよう求める声が出ている。


英製薬大手アストラゼネカ社の報道担当者はその後、英国の参加者1人に疾患を認めたが、世界全体の治験を中断すると説明した。厚生労働省によると、会社側からは、イギリスで実施している臨床試験で、ワクチンを接種した1人に重い症状が確認されたと9日、報告を受けたということである。接種との因果関係は不明で、具体的な症状については調査中と説明を受けたという。具体的にどのような症状が出たのかなど詳細は明らかにしていないが、安全性に関するデータを検証するためだとしている。声明は、「独立した委員会が、安全性のデータを検証するためだ」としたうえで、「大規模な臨床試験では、試験の参加者に何らかの症状が出ることがあり、独立した検証を行う必要がある」としています。

 

アストラゼネカの報道担当者は取材に「独立委員会が安全性のデータを調べるため、ワクチン投与を自発的に中断した」と説明。「原因不明の病気の可能性があれば、治験の中断は通常の対応だ」「大規模な試験では思いがけない病気が発生するものだが、注意深く調べるため、個別に審査しなければならない」などとしている。副反応の詳細や、治験の中断がどのくらい続くかは明らかではない。

 

 

<厚労省の見解>

厚生労働省は「症状が出た場合に安全性などを調査するのはワクチンに限らず臨床試験では一般的に行われることだ。安全対策などを詳しく検証したうえで再開の可否を判断してもらう必要がある」としている。厚生労働省は「臨床試験が最終段階で中断されるのは決して珍しいことではない。中止ではなくあくまで中断なので、現時点で日本のワクチンの確保に影響があるとは考えていない」としている。

 

 

<専門家の見解>

 

 中山哲夫特任教授(北里大学)

「ワクチン開発で安全性の確認は欠かせない。第3段階の臨床試験では対象となる人数も増えて何が起こるか分からないので、望ましくない反応が起きたときは、しっかり検証することが大切だ」と話している。

 


 石井健教授(東京大学医科学研究所)
アストラゼネカが新型コロナウイルスのワクチンの臨床試験を一時的に中断したことについて、「どのような事情で止まったのか分からないが、臨床試験が止まることは時々あることで、一喜一憂すべきではない。ワクチンは一度打つと、元には戻らない免疫反応を起こすので、安全性に問題があってはいけない。しっかり安全性を見るのがワクチンの臨床試験の基本で、有害事象が起きて止まること自体は何ら問題ないし、止めないで進めてしまうほうがリスクが高い」と話している。

 

そして「最終段階にあたる第3相の臨床試験は、数か月ではなく、何年も続くことが普通で、オリンピックやアメリカの大統領選挙までに終わらせないといけないという政治的な圧力がかかる事態のほうがリスクだ。このプレッシャーの中でしっかり止めて様子を見る決断をしたのは正しい判断だと思う」と述べて、中断した判断を評価した。

 

 

ワクチン開発の今後の見通しについて

 

<開発難しいが再開で成功したケース>

ワクチンは、かつて多くの命を奪った天然痘の撲滅に大きく貢献するなど、感染症対策には欠かせない大きな武器で、多くの病気について、感染や重症化を防ぐために接種が行われている。なお、臨床試験が一度中断したあと、再開されてワクチンの開発に成功したケースもある。

 

<成功に至らなかったケース>

ワクチンは、健康な人に接種することから、安全性と有効性の評価が厳密に行われていて、臨床試験の段階で副作用が指摘されるなどして、実現していないものもある。

 

発熱やせきなどかぜに似た症状が出て、乳幼児に肺炎などを引き起こす「RSウイルス感染症」に対するワクチンの開発では、1960年代に行われた臨床試験で接種した人の症状が悪化し、死に至ったケースもあった。

 

また、エイズを引き起こすウイルス、HIVに対するワクチンも1980年代以降、複数の臨床試験が行われ、中には、最終の第3段階まで進んだものもあったが、感染を防ぐ効果が十分確認されずこれまでに有効性が確認されたワクチンは実現していない。

 

さらに、ワクチンによっては、接種でできた抗体がかえってウイルスの感染や増殖を促すなどして、症状を悪化させてしまう「ADE」という現象が起きることもあり、SARSのワクチンを開発する中では、動物実験でADEが見られた。

 

 

杉並国際クリニックの見解

各国がワクチン開発に急ピッチで取り組んでいます。通常、ワクチンの開発には何年もかけて効果と安全性の検証を行います。今回のワクチンは世界中で臨床試験に入っており、信じられないスピードです。日本でもいろいろハードルを下げ短期決戦で挑んでいますが、安全性の担保とのせめぎ合いでもあります。特に日本では、東京五輪に向けワクチン開発を急ぐあまり、国民の安全を犠牲にしてはならないと考えます。

 

そもそも、ワクチンとは発症や重症化を予防するために投与する、弱毒化または無毒化した抗原のことです。あらかじめ投与して病原体に対する抗体を獲得しておき病原体が侵入してきても感染あるいは重症化を抑えられるという仕組みです。
しかし、現実の問題としては、抗体依存性感染増強(ADE)という現象が重大な問題となる可能性があることを指摘しておく必要があります。これは、皮肉なことに、ワクチン接種でもたらされる重症化という副反応です。

 

本来はウイルスから体を守るはずの抗体が逆に細胞への感染を促進し、重症化を引き起こしてしまう現象です。同じコロナウイルスが病原体のSARSやMERSでは、ワクチンの動物実験でADEが確認され、ワクチン開発は断念されたという経緯も十分参考にすべきであると考えています。

 

病気の治療薬とは違って、ワクチンは“健康な人”に打つ点も十分に考慮されるべきポイントです。 ワクチンを打ったにもかかわらず、ウイルスに感染して、より重症化するということが起きたのです」ADEのメカニズムはまだ不明だが、今回の新型コロナウイルスのワクチンの実用化に向けても、ADEが懸念されていました。

 

今後、新型コロナワクチンが開発されれば、高齢者や基礎疾患のある人から無償での投与が始まるでしょう。効果的で安全なワクチンなら良いのですが、有害なワクチンを使ってかえって健康を害するということだけは避けなくてはなりません。
したがって、杉並国際クリニックは、無償の新型コロナワクチンが入手可能になっても早期に実施することに対しては賛成しかねます。当クリニックにおいて実施する予定はありません。