8月28日(金)  

 

 


❶ 42歳の男性

 

❷ 健康診断で異常を指摘されたため受診した。

 

❸ 既往歴:特記すべきことなし

 

❹ 家族歴:特記すべきことなし

 

❺ 喫煙歴:20本/日を13年間

 

❻ 飲酒はビールを500mL/日

 

❼ 身長167㎝、体重78㎏、腹囲104㎝

 

❽ 脈拍68/分、整。血圧138/76㎜Hg

 

❾ 心音と呼吸音とに異常を認めない

 

❿ 血液生化学所見:
  

総蛋白7.5g/dL,アルブミン4.2g/dL,総ビリルビン0.6㎎/dL,
AST45U/L, ALT52U/L, γ-GT130U/L(基準8~50)、
尿素窒素28㎎/dL, クレアチニン1.0㎎/dL, 尿酸7.9㎎/dL,
空腹時血糖130㎎/dL,HbA1c6.8%(基準4.6~6.2)、
トリグリセリド250㎎/dL,HDLコレステロール33㎎/dL,
LDLコレステロール142㎎/dL

 

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昨日検討した以下の最初の情報の中で、ベテランの内科医であれば、以下の2項目から、ただちに中年男性に多い健診異常の症例が直ちに想起されてくるはずです。


❶ 42歳の男性
❷ 健康診断で異常を指摘されたため受診した。

 

そして、最初に確認するのは、

肥満の有無とその程度(❼)、

メタボリックシンドロームに該当するか否か(❼、❽、❿)、

そして、脳心血管疾患のリスク評価(❼、❽、❿)およびその他の異常データです。

 

昨日検討した範囲では、❼ 肥満(肥満症Ⅰ度)、❽ 高血圧については、血圧138/76㎜Hgであるため、正常域血圧ではあるが、その中でも正常高値血圧(収縮期血圧130~139㎜Hg,または拡張期血圧85~89㎜Hg)に該当しました。

しかし、メタボリックシンドロームの血圧基準である、収縮期血圧≧130㎜Hgに該当することを述べました。

 

本日は、この症例がメタボリックシンドロームに該当するのか否かを、検査データ(❿)から、より詳細に検討し、以下の問題を回答してみることにします。

 

この症例提示では、以下の初歩的な問題提起より、さらに深い臨床的課題がありますが、医師国家試験では初歩的な医学的常識のみを問うています。

この問いは、医師国家試験に合格した後、初期臨床研修を経て、そして各科の専門医研修を受け、特定の専門医となる頃にはかえって軽視されがちとなることは否定できません。

特定の医学領域の専門医として活躍するようになっても、総合診療医としての基盤を大切に研鑽していこうという姿勢を貫くことは、並大抵の努力ではまっとうできない、というのが私の認識です。

 

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問題

まず行うべきなのはどれか。

 

a  降圧薬投与

 

b ニコチン補充療法

 

c 75g経口ブドウ糖負荷試験

 

d 生活習慣に関する詳細な聴取

 

e 週3回以上のジョギングの推奨

 

 

昨日検討した医学・医療情報データの範囲では、上記の選択肢のうちで、確実に必要であると考えられるのは、さらなる情報の収集です。それは病因論といって、そもそも病気の原因が内因(遺伝的、先天的な要因)によるものなのか、外因(環境、生活習慣、後天的な要因)によるものなのか、あるいはその両方なのか、という視点は基本的に重要な視点です。

 

❸ 既往歴:特記すべきことなし

 

❹ 家族歴:特記すべきことなし
以上からすれば、内因の関与は明らかではありません。

 

これに対して、
❺ 喫煙歴:20本/日を13年間

 

❻ 飲酒はビールを500mL/日
 

これらの情報は、生活習慣という外因の関与を示唆する情報です。
こうした情報をもとに、このケースでは、患者の生活リズムをはじめ食事・運動・睡眠・就業(通勤状況・勤務時間帯や内容など)などの、より具体的で詳細な生活習慣の情報が不足していることが判明します。
 

したがって、上記の選択肢の中では、d 生活習慣に関する詳細な聴取、が候補に挙がってきます。
 

しかし、この選択肢が正解であるかどうかは、このケースが緊急性を帯びているかどうか、という側面からの検討が必要です。その場合には、診察時のバイタルサイン(意識水準、呼吸、脈拍数、体温、血圧)などの基本情報が不可欠です。
 

❽ 脈拍68/分、整。血圧138/76㎜Hg

❾ 心音と呼吸音とに異常を認めない

 

これらの情報からすれば、バイタルサインのうち、心肺機能に関しては緊急性がないことがわかります。

 

降圧治療を直ちに行う必要はないと考えられるため、選択肢a降圧薬投与、は否定的です。

また、b ニコチン補充療法の選択肢も除外できます。

その理由は、ニコチン補充療法は、禁煙外来でニコチン代替療法の禁煙補助薬を使用する方法ですが、予めニコチン依存症スクリーニングテスト(TDS)を行うことが求められているため、<ただちに>行うべきものではないからです。
 

また、選択肢c 75g経口ブドウ糖負荷試験は、糖尿病の診断に用いられるため、すでに糖尿病の基準をみたしているかどうか、本日検討するデータ(❿)を検討しなければ判断できません。

しかし、ブドウ糖負荷試験は、臨床の現場において緊急に実施しなければならない検査項目ではありません。
 

最後に、e 週3回以上のジョギングの推奨、についてですが、運動の強度と頻度を処方するためには、標準的心電図異常の有無に加えて負荷心電図での確認、呼吸機能、血糖のコントロール状態など、より詳細なデータが必要になるため、直ちに実施すべきものではありません。
 

以上より、この国家試験問題は、血液生化学所見(❿)の詳細を検討する以前に、概ね結論が得られてしまいます。つまり、初診時のデータでおおよその判断が付いてしまう、ということを示唆します。このことは、初診時の医療内容は、臨床上きわめて重要な意味をもっているということを改めて示唆するものだということになるでしょう。

 

 

 

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❿ 血液生化学所見:

肝機能  AST45U/L, ALT52U/L,
     ⇒軽度の肝機能障害

 

胆道系  γ-GT130U/L(基準8~50)

 

腎機能  尿素窒素28㎎/dL, クレアチニン1.0㎎/dL, 尿酸7.9㎎/dL,
⇒推定糸球体濾過率(eGFR)

男性、42歳、Cr1.0㎎/dL=66.4(mL/分/1.73m²)
⇒GFR区分G2

 

尿素窒素(BUN)クレアチニン比=BUN/Cr=28>10ゆえに腎外性因子
尿酸7.9㎎/dL≧7.0㎎/dL⇒高尿酸血症

 

 

糖代謝  空腹時血糖130㎎/dL,HbA1c6.8%(基準4.6~6.2)

 

空腹時血糖130㎎/dL≧110㎎/dL⇒メタボリックシンドローム選択項目に該当
空腹時血糖値判定基準    


 基準値    70~110mg/dl
 優      100mg/dl未満
 良      100~119mg/dl
 やや不良    120~139mg/dl
 不良      140mg/dl以上
 

⇒空腹時血糖値による血糖コントロール状態の評価は「やや不良」に該当

 

HbA1cコントロール目標値
     

血糖正常化を目指す際の目標・・・<6.0%
     

合併症予防のための目標・・・・・<7.0%
     

治療強化が困難な際の目標・・・・<8.0%
     

 

⇒血糖の正常化を目指すためにはHbA1c6.8%を6.0%未満になるよう徐々にコントロールする

 

脂質代謝 

トリグリセリド250㎎/dL,

HDLコレステロール33㎎/dL,

LDLコレステロール142㎎/dL

 

⇒トリグリセリド250㎎/dL≧150㎎/dLゆえに高トリグリセライド血症、
 なおメタボリックシンドローム選択項目に該当

 

⇒HDLコレステロール33㎎/dL<40㎎/dLゆえに低HDLコレステロール血症
 なおメタボリックシンドローム選択項目に該当

 

⇒LDLコレステロール142㎎/dL≧140㎎/dLゆえに高LDLコレステロール血症

 

 

総合評価
1) 肥満、高血圧、高トリグリセライド血症、低HDL血症のすべての項目に該当
⇒メタボリックシンドロームの診断

 

2) メタボリックシンドロームの診断項目ではないが、生活習慣病に密接な疾患
⇒① 高LDLコレステロール血症(動脈硬化に関する主要な危険因子)
 ② 肝機能障害(脂肪肝の疑い)
 ③ 高尿酸血症

 

 

<肝機能障害についての補説>


国立研究開発法人 国立国際医療センター 肝炎情報センターのサイトから引用
 

肝臓は沈黙の臓器と言われている通り、他の肝臓病と同様に非アルコール性脂肪肝や非アルコール性脂肪肝炎もほとんど自覚症状はありません。

また現在のところ通常の血液検査では非アルコール性脂肪肝や非アルコール性脂肪肝炎を確実に診断する検査項目はありません。

肝機能検査で代表的なALT(GPT)値が低くても非アルコール性脂肪肝炎の場合もあり、逆に数値が高くても病状が進行していない人もいます。

 

健康診断で肝機能の数字が高くないからといって、非アルコール性脂肪肝炎ではないとは限りません。

肝臓に脂肪がたまっている状態である脂肪肝を判別する最も簡便な方法は、腹部超音波検査(腹部エコー検査)です。

腹部エコーでは正常の肝臓と比べて肝臓に脂肪が溜まると肝臓は白く輝いて見えます。また画像の奥が見えにくくなり、となりの臓器である腎臓と比べて肝臓はより白く見えます。

1

肝臓は白くなり(輝度上昇)、奥に行くにつれて見えにくくなっています(深部減衰)。

2

肝臓は腎臓の外側の部分(腎皮質)よりも白く見えます(肝腎コントラスト陽性)。
 腹部超音波検査(腹部エコー)による脂肪肝の所見

 


腹部エコーができない場合は、自分のおへそあたりの腹囲(ウエスト周囲長)を測ってみましょう。

男性ではウエストが85センチ以上、女性は95センチ以上の場合、脂肪肝を持っている人が半数以上となります。

 

ウエストを測ってみて該当する方は、お近くの医療機関で腹部エコー検査を行って、一度は肝臓を診てもらうことをおすすめします。また20歳の時の体重から10kg以上増えているという方も要注意です。糖尿病や脂質異常、高血圧症の方も非アルコール性脂肪肝炎の可能性は高くなります。 

 
最終的に非アルコール性脂肪肝か非アルコール性脂肪肝炎かを見分けるには、肝生検による組織診断が必要になります。

 

肝生検は臓器を専用の針で刺して、組織を一部採取する検査ですので、基本的に1~2泊の入院が必要です。検査に伴う偶発症もゼロではありませんので、最近では肝生検を受ける前に、肝臓の硬さを測定する「肝硬度計(エラストグラフィ)  」( 肝硬度測定(フィブロスキャン) )(代表的な機器はフィブロスキャン®︎という専用の機器や腹部エコーに付属した機器もあります)を用いたり、血液検査として以前より測定されているヒアルロン酸やIV型コラーゲン7Sなど、また最近ではMac-2 結合蛋白糖鎖修飾異性体(M2BPGi)やオートタキシンなど、いわゆる「肝線維化マーカー」を測定したり、年齢と肝機能のASTとALT、血小板で計算される数値(FIB-4インデックス)等を用いたりして、推定します。

 

脂肪肝は放置してはいけませんので、脂肪肝であることがわかった場合は、普段診て下さっている担当医に相談しましょう。

 

 

ここで、提示症例の肝臓について、その硬化度を算出してみます。


変数は、年齢42[歳]、AST45[U/L]、ALT52[U/L]、

 

ただし、血小板(データなし)[10⁹/L=0.1万/μL]のため算出不能です。


ここで、参考値として、血小板数の基準値(13~37)万個/㎜³の下限値である
13万個/㎜³=130を代入して計算してみます。


FIB-4インデックス=42×45/130×√52=2.02
⇒肝臓が硬い可能性も、硬くない可能性も高くない

 

 

<高尿酸血症についての補説>
高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版(2018)で、改めて提示された推奨項目のポイントをご紹介します。

 

まず、痛風関節炎(痛風発作)や痛風結節を有している場合には、生活習慣の修正と薬物療法を行なうことが基本です。

 

その際に、痛風関節炎治療の第一選択薬の決定とコルヒチン予防投与、痛風結節縮小のための血清尿酸値に関する推奨が明記されました。

 

本日提示している医師国家試験問題の症例は、明らかな痛風の症状を欠くものであるため、無症候性高尿酸血症と考えてよいものと思われます。その場合には、合併症や臓器障害を有する場合には、血清尿酸値8㎎/dl以上から生活習慣修正と薬物治療開始が考慮されることになります。
 

提示された症例の血清尿酸値は7.9㎎/dLであり、ギリギリですが、この基準を免れています。しかし、血清尿酸値には日内変動その他の変動があるため、今後も定期的に尿酸値の確認は必要になります。
 

いずれにしても、ガイドラインでは、腎障害・高血圧・心不全合併高尿酸血症の治療に関する指針が設定されています。
 

提示の症例は、

 

腎機能  尿素窒素28㎎/dL, クレアチニン1.0㎎/dL, 尿酸7.9㎎/dL,
⇒推定糸球体濾過率(eGFR)

 

男性、42歳、Cr1.0㎎/dL=66.4(mL/分/1.73m²)
⇒GFR区分G2

 

であり、年齢の割には腎機能が低下しているため、今後も定期的な観察が必要です。
同様に、心不全には至っていないものの継続的な血圧のモニタリングも不可欠となります。

 

このように、痛風・高尿酸血症は、メタボリックシンドロームの診断基準には含まれていませんが、相互に密接な関連があります。生活習慣病であり、かつ脳血管心臓リスク因子として高尿酸血症を捉えていくという視点は、今後ますます重要になってくるものと思われます。
 

 

最後に、生活習慣修正としての食事指導に関するガイドラインの推奨文をご紹介いたします。ご参考になさってください。

 

〇 ビタミンC、DASH食、地中海食ならびに果物(ただし、果糖の含量の少ないもの)・大豆食が血清尿酸値を低下させるとされる。

 

〇 乳製品、コーヒーが痛風を減らした。


× アルコール、肉類、魚介類ならびに果糖は血清尿酸値を増加させた。

8月27日(木)

 

アーラさんの日本温泉ガイド

 

 je vous raconte mon petit séjour dans le village thermal de Shibu-Onsen, dans les montagnes autour de Nagano.

さらに、日本の温泉について語らないわけにはいきません。長野の山中にある渋温泉の温泉村でのちょっとした滞在記をお話しします。

 

 

Le village thermal de Shibu-Onse, près de Nagano
長野の近くにある渋温泉の温泉郷

 

 

C’est attirée par la perspective de voir des macaques des neiges se baigner dans l’eau chaude que je me suis rendue au petit village de Shibu-Onsen. Ce que je n’avais pas prévu, et malgré le nom (“onsen” : source chaude), c’est que ce village allait s’avérer au moins aussi passionnant que voir des singes barboter… voire bien plus. Le village compte une dizaines de bains, et l’office du tourisme local invite fortement à tous les visiter par le biais d’un petit passeport à tamponner à chaque entrée. Je ne suis pas restée assez longtemps pour découvrir toutes les sources mais les trois que j’ai visitée étaient chacune mémorable à sa façon.

 

雪猿がぬるめのお湯に浸かっているのを見るのが楽しみで、渋温泉の小さな村に行ってみました。私が予想していなかったのは、温泉という名前にもかかわらず、この村は猿が水しぶきを上げるのを見るのと同じくらい、あるいはそれ以上にエキサイティングなものになりそうだということでした。村には何十ものお風呂があり、地元の観光局では、入り口でスタンプを押される小さなパスポートを使って、すべてのお風呂を訪れることを強くお勧めしています。長く滞在してすべての温泉を発見することはできませんでしたが、私が訪れた3つの温泉はそれぞれの方法で思い出に残るものでした。

 

 

Comme dans toutes les destinations thermales au Japon, les hôtels et pensions prêtent des yukata et geta aux visiteurs pour leur tournée des sources, et une fois la nuit tombée, on a l’impression de remonter dans le temps. Si aller vous mettre à nu dans un onsen traditionnel n’est pas votre tasse de thé, Shibu-Onsen reste un village adorable chargé d’une ambiance incroyable. Et vous pourrez toujours tremper les pieds dans la source chaude aménagé à cette effet devant la gare !

 

日本の温泉地もそうですが、ホテルや旅館では浴衣や下駄を貸し出して温泉巡りをしており、夜になるとタイムスリップしたような気分になります。伝統的な温泉で素っ裸になるのが苦手な方でも、渋温泉は素晴らしい雰囲気のある素敵な村です。そして、いつでも駅前の温泉に足を浸けることができますよ!

8月27日(木)

令和2年6月から、杉並国際クリニックは完全予約制となりましたが、初診予約者の傾向に明らかな変化が現れてきました。それは、喫煙者の割合の減少です。

その原因は、事前の問診項目の一つに、当クリニックの公式サイトを読んでいただいたかどうか、という質問項目があるためかもしれません。

 

喫煙者は喫煙の有無を質問されること自体を不快に感じる傾向があり、「禁煙指導」という活字を見るなり受診を避ける、という極端な受診行動を選択される方も少なくないようです。

逆に、喜ばしい傾向としては、今後は、どうしても「杉並国際クリニック」に通院して健康管理をはじめたいという積極的な選択をしてくださる方の中には、初診日を迎える前に、予め禁煙を開始した、という感心な方もおられるということです。そうした方の健康改善の進捗は顕著であることが多いので、とても希望が持てます。


喫煙習慣の有無に関しては、あらゆる機会に確認しておく、ということが責任ある医師としての当然の基本的姿勢あると考えています。

 

本日の国家試験問題も最新のものですが、「高円寺南診療所」時代に多数経験してきた典型例ともいえます。本日は、初診で確認できる項目に限定して検討を加えてみることにします。

 

❶ 42歳の男性

 

❷ 健康診断で異常を指摘されたため受診した。

 

❸ 既往歴:特記すべきことなし

 

❹ 家族歴:特記すべきことなし

 

❺ 喫煙歴:20本/日を13年間

 

❻ 飲酒はビールを500mL/日

 

❼ 身長167㎝、体重78㎏、腹囲104㎝

 

❽ 脈拍68/分、整。血圧138/76㎜Hg

 

❾ 心音と呼吸音とに異常を認めない

 

❿ 血液生化学所見:
総蛋白7.5g/dL,アルブミン4.2g/dL,総ビリルビン0.6㎎/dL,

AST45U/L, ALT52U/L, γ-GT130U/L(基準8~50)、

尿素窒素28㎎/dL, クレアチニン1.0㎎/dL, 尿酸7.9㎎/dL,

空腹時血糖130㎎/dL,HbA1c6.8%(基準4.6~6.2)、

トリグリセリド250㎎/dL,HDLコレステロール33㎎/dL,

LDLコレステロール142㎎/dL

 

・・・・・・・・・・・

 

❶ 42歳の男性 ⇒男性では、とくに生活習慣病が増えてくる年代

代表的な生活習慣病:肥満、メタボリックシンドローム、高血圧、脂質異常症、糖尿病、これらに加えて男性では高尿酸血症が重要

 

 

❷ 健康診断で異常を指摘されたため受診した

⇒自覚症状に乏しい。健康診断であるから基本的な検査項目に限られる。

概ね生活習慣病の早期発見が目的となっている。

今回の健康診断での異常とは、具体的にどの項目なのか?

 

 

❸ 既往歴:特記すべきことなし
⇒既往歴は、主に本人の申告によるものであるため、初診時にすべてを把握することは困難です。継続診療によって、少しずつ整理され、次第に全貌が明らかになっていくことが多いです。

 

 

❹ 家族歴:特記すべきことなし
⇒家族歴の、既往歴以上に、本人の記憶が頼りです。後日になって「そういえば、父は・・・でした。」という報告を受け、それが遺伝性の稀な病気の発見や診断に役立つことがあります。また、患者さんの体質・気質傾向の把握にも大いに役立つ貴重な情報です。

 

 

❺ 喫煙歴:20本/日を13年間

ブリンクマン係数(BI)=20×13=260>200

35歳以上のニコチン依存症でBI≧200の場合は、禁煙治療の保険適応がある
  

ニコチン依存症を判定するテスト TDS(Tobacco Dependence Screener)

 

ニコチン依存症とは

やめたくてもやめられない喫煙習慣のことをいい、治療が必要な病気とされています。

 

ニコチン依存症スクリーニングテスト(TDS、Tobacco Dependence Screener)は禁煙治療保険診療におけるニコチン依存症診断基準として使用されており、心理的依存も含めたニコチン依存症の診断に利用されています。

 

ニコチン依存症の診断基準として、TDSのスコア5点以上が用いられています。TDSのスコアにより、ニコチン依存症の程度の目安を知ることができます。

 

 

❻ ビール500mL/日⇒アルコール摂取量の基準とされるお酒の1単位とは、純アルコールに換算して20gです。ビール500mlはビール中びん1本に相当し、これはエタノール(純アルコール)換算で20g/日、これはお酒の1単位に相当します。

 

『常習飲酒家』は一日平均エタノール60g(3単位)以上を5年以上飲酒を続けている人
『大酒家』は一日平均エタノール100g(5単位)以上で5日間以上継続して飲酒する人
⇒この症例は、飲酒家ではありますが、『常習飲酒家』、『大酒家』のいずれにも該当しませ
ん。

 

参考までに、以下にアルコール性肝障害の診断基準を紹介します。

  

2011年アルコール性肝障害診断基準

1過剰の飲酒 (エタノール60g以上)
※ただし肥満者は60g以下でも、女性やALDH2活性欠損者は2/3程度でも起こしうる

 

2 禁酒によりγGTP ,AST(GOT),ALT(GPT)が明らかに改善する

 

3 肝炎ウイルスマーカー、抗核抗体、抗ミトコンドリア抗体いずれも陰性

ただし、近年、生活習慣病に伴う『非アルコール脂肪肝炎』がクローズアップされて
きました。これまで『適量飲酒者』とされてきた群の中にも肝障害から肝癌へ発展する例があります。

 

現在、国内での正確な患者数はわかっていませんが、人間ドックを受ける人で非アルコール性脂肪肝に罹患している人が30~40%であることから、推定で1000万
~2000万人の潜在患者がいると考えられています。非アルコール性脂肪肝炎に進展するのはそのうちの10~20%に相当する100~200万人位と考えられています。

 

肝がんの成因として、非アルコール性脂肪肝炎を含むB型肝炎やC型肝炎が原因でもない、いわゆる非B非Cの肝がんの頻度が全国的に確実に増え続けていますが、その中の成因として『非アルコール性脂肪肝炎』が注目されています。

 

 

❼ 身長167㎝、体重78㎏、腹囲104㎝
 体格係数(BMI)=(体重㎏)/(身長m)²=78/1.67²=28.0≧25
 ⇒肥満症(肥満度Ⅰ)
 男性の腹囲≧85㎝⇒メタボリックシンドローム必須項目に該当するため、以下の選択項目を確認する必要があります。

 血圧(収縮期/拡張期)、トリグリセライド、HDL-コレステロール、空腹時血糖値を確認する必要があります。

 

 

❽ 血圧138/76㎜Hg⇒高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019)では高血圧に該当します。そして、正常血圧(120/80㎜Hg未満)以外のすべての人に生活習慣の修正が必要とされます。収縮期血圧138㎜Hg>130㎜Hg⇒メタボリックシンドローム選択項目に該当します。

 

この段階で、メタボリックシンドロームの選択項目のうち、もう一つ以上が該当すれば、メタボリックシンドロームの診断が確定します。初診時に実施した血液検査の結果は再診時に揃うので、明日は再診時を想定して更なる詳細な検討を加えていきたいと思います。

米国トランプ政権の暴露本として話題沸騰中のボルトン氏の著書『それが起きた部屋:ホワイトハウス回顧録(The Room Where It Happened: A White House Memoir)』を読み始めました。

 

この書は大衆週刊誌のような低級な内容とは全く異なりトランプ政権の内幕をきわめて詳細かつ率直に明かしてあり、歴史に残る名著であることがわかりました。

 

約500ページの分厚さなので、まず巻末索引に挙げられているJapan(日本)、Abe Shinzo(安倍晋三)、Yachi, Schotaro(谷内正太郎)、Yamamoto, Isoroku(山本五十六)、Naruhito (Emperor of Japan)(日本国天皇徳仁)の項目から読んでみることにしました。

 

そこには、私がこの間疑問を抱いていたワシントンでのトランプ政権の内情が、多くの当事者たちの具体的な言動によって活写されていました。

それと同時に、米国が日本をどれほど重要視しているかについての実感を得ることができました。いろいろな国やリーダーたちに関する記述を読み進めていくうちに、この本の索引のキーワードはsanctions(制裁)であることに気づきました。

 

sanctions(制裁)の項目が無いのが同盟国や友好国であると考えてもよさそうなのですが、グレーゾーンもあるようです。その一例がドイツです。

戦後のドイツは、日本とは比較にならないほどしたたかに生き抜いてEUを牽引し、米ドル圏を凌駕するユーロ圏を築き上げることに成功しました。

これに対して、日本ははるかに「お人好し」の国です。

トランプ大統領自らも、アメリカが余りにも「お人好し」が過ぎて軍事費で大損してきたという意識をもっているようです。上記ボルトン氏の本の索引のGermany(ドイツ)の項目には、US withdrawal from,434があります。

 

これは、434頁にUS withdrawal from Germany(米国のドイツからの撤収)についての記述があることを意味します。実際に、以下の記載があります。
 

〝I want out of Africa and as many other places as you can. I want our soldiers on our soil. Take them out of Germany. I’m going to tell Germany,’ You have to pay Immediately”

 

私は(ドイツのように)アフリカその他多くの地域から撤収したい。私は我々の祖国に自国の兵士が欲しい。彼らをドイツから引き揚げさせろ。「直ちに金を払わなければならない」とドイツに言ってやるつもりだ。」

 

これに対して、ドイツのメディアはどのような反応をしているでしょうか?

 

ドイツのターゲスシャウ*より引用:

ターゲスシャウ(Tagesschau)*:北ドイツ放送(Norddeutscher Rundfunk)が制作し、ARD(ドイツ公共放送連盟)の加盟局で放送されているドイツの国民的ニュース番組。


US-Truppenabzug aus Deutschland "Eine grundsätzlich falsche Entscheidung"

米軍のドイツ撤退「根本的に間違った判断」

 

Stand: 29.07.2020 19:36 Uhr

ステータス:29.07.2020 19:36

 

12.000 Soldaten zieht die US-Regierung aus Deutschland ab - und nimmt damit eine weitere Belastung der deutsch-amerikanischen Beziehungen in Kauf. Besonders in den betroffenen Regionen fallen die Reaktionen deutlich aus.

アメリカ政府はドイツから1万2千人の兵士を撤退させようとしており、米独関係のさらなる緊張を受け入れようとしている。患部では特に反応が顕著だ。

 

 

Überraschend kommt der US-Truppenabzug aus Deutschland nicht mehr, doch nachdem Verteidigungsminister Mark Esper nun die konkreten Pläne der US-Regierung bekanntgegeben hat, sind Enttäuschung und Frust bei Politikern in Deutschland groß.

 

驚くべきことに、米軍のドイツからの撤退はもう来ないのだが、マーク・エスパー国防長官が米政府の具体的な計画を発表した今、ドイツの政治家の間では失望と不満の声が大きい。

 

Söder sieht Schwächung der NATO

NATOは弱体化しているとセーダー氏は見ている

 

 

"Dies belastet leider das deutsch-amerikanische Verhältnis. Dabei ist der militärische Nutzen nicht erkennbar", sagte Bayerns Ministerpräsident Markus Söder der Nachrichtenagentur dpa. Auf Dauer schwäche die Entscheidung auch die NATO und die USA selbst.

 

「残念ながら、これはドイツとアメリカの関係に負担をかけている。しかし、軍事的な利益は明らかではない」と、バイエルン州のマルクス・シェーダー大臣は通信社dpaに語った。長い目で見れば、この決定はNATOや米国そのものを弱体化させることにもなる。

 

 

In Bayern könnten die Pläne unter anderem die Standorte Grafenwöhr und Vilseck schwer treffen. "Wir werden allen betroffenen Standorten helfen. Vor allem die Bundeswehr ist gefragt. Wir warten jetzt ab, ob die Entscheidung auf Dauer bleibt", sagte Söder.

 

バイエルン州では、グラーフェンヴェールやヴィルゼックなどの遺跡に深刻な影響を与える可能性がある。「被災した全ての場所を支援します。何よりも、ドイツ軍には需要がある。今は決定が恒久的なものになるかどうかを待っているところだ」とセーデル氏は語った。

 

Besonders betroffen von dem Teilrückzug ist zudem Stuttgart: Die USA wollen das komplette Europa-Kommando ihrer Streitkräfte von dort nach Belgien verlegen. Oberbürgermeister Fritz Kuhn kritisierte den Schritt der USA: "Mit ihrer Entscheidung kündigt die US-Administration unter Präsident Trump Hals über Kopf die seit Jahrzehnten gewachsene enge Zusammenarbeit in einer Strafaktion gegen einen Verbündeten und ohne Konsens im US-Kongress auf", sagte der Grünen-Politiker.

 

 

シュトゥットガルトもまた、特に部分的な撤退の影響を受けている。主な市長フリッツ・クーン氏は米国の動きを批判した:「その決定で、トランプ大統領の下の米国政権は、同盟国に対する懲罰的な行動で、米国議会のコンセンサスなしで、数十年にわたって発展してきた緊密な協力の終焉に真っ向から向かっている」と、緑の党の政治家は言った。

 

"Ein schwerer Schlag"

「厳しい一撃」

 

 

Der Innenminister von Rheinland-Pfalz, wo derzeit rund 18.500 US-Soldaten stationiert sind, kritisierte die Entscheidung als "grundsätzlich falsch". Für die betroffenen Regionen sei der Teilrückzug ein "schwerer Schlag", erklärte Minister Roger Lewentz. "Leider müssen wir uns auch auf den Verlust von deutschen Arbeitsplätzen durch diese Entscheidung der US-Administration einrichten", sagte der SPD-Politiker. Der rheinland-pfälzische US-Luftwaffenstützpunkt Spangdahlem sei von dem Rückzug schwer betroffen, erklärte der Minister.

 

約1万85000人の米兵が駐留しているラインラント=プファルツ州の内相は「根本的に間違っている」と批判した。部分的な撤退は、影響を受ける地域にとって「厳しい一撃」となるだろうと、ロジャー・ルウェンツ大臣は述べた。「残念ながら、米政権のこの決定によってドイツの雇用が失われることにも備えなければならない。」とSPDのこの政治家は語った。ラインラント=プファルツ州にある米空軍のシュパングダレム基地は撤退の影響を大きく受けた、と大臣は述べた。

 

 

Nicht betroffen seien die US-Einrichtungen in Ramstein, Kaiserslautern und Baumholder. Nach Angaben der Mainzer Landesregierung zählen die US-Streitkräfte zu den größten Arbeitgebern im Land. Es gebe an den Stützpunkten rund 12.000 US-Zivilbeschäftigte sowie etwa 7200 lokale zivile Kräfte.

 

ラムシュタイン、カイザースラウテルン、バウムホルンの米国施設は影響を受けなかった。マインツ州政府によると、米軍は国内最大の雇用者の一角を占めている。基地には約1万20000人の米民間人職員と約7200人の現地の民間人部隊がいる。

8月26日(水)

 

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第114回医師国家試験問題(令和2年実施)A群(医学各論)から

 

症例の分析を2回に分けて行いました。それを簡単にまとめて再掲します。この症例の診断が糖尿病であること自体は問題ないと考えます。そして、2型糖尿病である可能性が会高いのですが、確定的ではありません。その理由は、尿ケトン体1+であるにもかかわらず、抗GAD抗体などの糖尿病関連自己抗体の所見がないからです。もし、抗GAD抗体が陽性であれば、緩徐進行1型糖尿病を積極的に疑い、インスリン療法の開始を検討しなければなりません。もっとも、コントロール不良の進行性糖尿病は2型糖尿病であってもインスリンその他の薬物療法を診断早期に開始すべきであるため、この症例では食事療法のみによって血糖コントロールを達成することは困難です。

 

❶ 50歳の男性。糖尿病治療の目的で来院した。
❷ 1か月前から両眼のかすみと視力低下を自覚して自宅近くの医療機関の眼科を受診したところ、両眼増殖糖尿病網膜症と診断され、内科を紹介され受診した。
❸ これまで健康診断は受けていなかった。
❹ 職業は自営業でデスクワークをしている。
❺ この1年間で体重は8㎏減少している。
❻ 身長170㎝、体重62㎏。脈拍72/分、整。血圧182/102㎜Hg。
  ⇒Ⅲ度高血圧症
❼ 両側アキレス腱反射は消失している。
  ⇒糖尿病神経障害
❽ 両側足関節の振動覚は著明に低下。
  ⇒糖尿病神経障害
❾ 尿所見(空腹時):蛋白3+、糖3+、ケトン体1+、潜血(-)。
 ⇒糖尿病腎症、尿ケトン体1+と陽性であり、インスリンの作用不足が示唆される。
➓ 血清生化学所見(空腹時):尿素窒素38㎎/dL、クレアチニン2.4㎎/dL、
  ⇒慢性腎臓病・糖尿病性腎症第4期(腎不全期)
⓫ 血糖348㎎/dL、HbA1c14.6%(基準4.6~6.2)、
  ⇒糖尿病
⓬ トリグリセライド362㎎/dL、HDLコレステロール28㎎/dL、
LDLコレステロール128㎎/dL、
⇒脂質異常症(高トリグリセライド血症、低HDL血症)
⓭ Na136mEq/L、K5.2mEq/L、Cl98mEq/L。
  ⇒低ナトリウム、低クロライド血症(ボーダーライン)

 

・・・・・・・・・

 

以上のような詳細な病歴・検査データを提示していますが、実際の国家試験の問いを、以下に示します。

 

これは、どちらかといえば、医師国家試験レベルではなく、むしろ管理栄養士国家試験レベルであるといえるでしょう。逆に言えば、管理栄養士にもこの程度の医学知識が求められる時代になってきたともいえます。また、この症例をもとにして、内科専門医試験や糖尿病専門医の試験問題を作製しようと思えば作成可能だと思われます。

 

 

問題 この患者の食事療法として正しいのはどれか。

 

a 塩分摂取量は10g/日とする。

 

b 蛋白摂取量は45g/日とする。

 

c 総エネルギー量は1,400kcal/日とする。

 

d 糖質の割合は総エネルギー量の40%とする。

 

e コレステロール摂取量は1,000㎎/日とする。

 

 

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a 1日塩分摂取量については、糖尿病腎症病期分類に基づいて決定されます。
  本症例の推定糸球体濾過率(eGFR)=24.22mL/min/1.73m²
  であるため、GFRの区分ではG4(29~25)に該当し、腎臓の糸球体の濾過機能は「高度低下」と判定され、また顕性アルブミン尿(A3)相当であることが推定されるため、糖尿病腎症病期分類(2014)の第4期(腎不全期)に相当します。
  糖尿病腎症生活指導基準によると、第4期の糖尿病成人症の塩分摂取量は6g/日未満となります。また、高血圧症の生活習慣の修正項目においても、食塩制限は6g/日未満とされているため、10g/日という基準は明らかに不適切な基準ということになります。

 

b 1日蛋白摂取量については、㎏標準体重当たり0.6~0.9gになります。
  身長170㎝のこの症例の標準体重を計算すると、
  標準体重=22×1.7²=63.6㎏
  したがって、1日蛋白摂取量の下限値は63.6×0.6=38.2g
        同様に上限値は63.6×0.9=57.2g
  おおよそ38~58gが1日摂取量の範囲になります。
  1日蛋白摂取量45gというのは、妥当な目安となります。

 

 

c 1日摂取総エネルギー量については、腎不全期では25~30/kcal/㎏標準体重で算出します。
  したがって、1日摂取総エネルギー量の下限値は63.6×25=1,590kcal
同様に上限値は63.6×30=1,908kcal
おおよそ1,600~1,900kcalが1日摂取量の範囲になります。
   総エネルギー量1,400kcal/日は、明らかに少ないということになります。

 

 

d 糖質摂取エネルギー比について、糖質は通常総エネルギー量の60%であり、最低でも50%は必要とされます。したがって、40%という摂取比率は少なすぎます。
 一般に3大栄養素の摂取エネルギー比率は、
  糖質:脂質:蛋白質=6:2:2程度です。

 

 

e コレステロール摂取量に関する明確な数値目標規準は定められていません。

 

8月25日(火)

 

ロシアが新型コロナウイルスワクチンの開発と実用化について世界中の話題になっています。

 

ワクチン開発は、経済的利権が絡んでいて、なおかつ、国際政治や外交上の切り札の一つにもなるため、各国の製薬企業や政府はマスコミを通して熾烈な駆け引きが繰り広げられています。

 

以下は、ロシアのメディア、プラウダからの引用です。

 

8月17日以降の記事を経時的に追いかけてみました。

 

Проморолик: "Спутник V" уничтожает коронавирус размером с планету
プロモ:「スプートニクV」が惑星サイズのコロナウイルスを破壊する

 

Обновлено: 17.08.2020 08:16
更新:2020年8月17日 08:16

 

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Проморолик российской вакцины от коронавируса опубликован на официальном сайте препарата, созданном для объяснения и продвижения российской вакцины Российским фондом прямых инвестиций (РФПИ), который финансировал её разработку.

 

ロシアのコロナウイルスワクチンのプロモは、その開発に資金を提供したロシア直接投資基金(RDIF)がロシアのワクチンを説明し、宣伝するために作成した準備の公式サイトに掲載されている。

 

 

"Смело идёт туда, где раньше не было вакцины", — в проморолике Sputnik V показан в образе своего космического тёзки, отправляющего в небытие гигантский коронавирус, охватывающий всю планету.

 

「それは、これまでワクチンがなかったところに大胆に向かって行く
スプートニクVのプロモは、その宇宙の名前のイメージを忘却の彼方に地球全体を覆う巨大なコロナウイルスを送信することを示している。

 

 

Напомним:
念のために

 

на минувшей неделе российская формула вакцины стала первой в мире, которая была зарегистрирована;

 

- 先週、ロシアのワクチン製剤が世界で初めて登録された。

 

 

 15 августа было объявлено, что препарат запущен в производство.

 

- 8月15日、ワクチンの生産開始が発表された。

 

 

Препарат, который официально называется "gam-KOVID-VAK", разработан на ранее испытанной платформе и был одобрен всего после двух этапов клинических испытаний. Исключение было сделано из-за остроты международного кризиса, вызванного пандемией. Это позволило ряду иностранных правительственных чиновников, медицинских экспертов и СМИ критиковать Москву, упрекая её в том, что она готова рисковать жизнями людей ради политической выгоды.

 

正式には「gam-KOVID-VAK」と呼ばれるこの薬は、以前にテストされたプラットフォームで開発され、わずか2段階の臨床試験を経て承認された。パンデミックによる国際的な危機の深刻さから例外とした。これにより、多くの外国政府高官や医療専門家、メディアがモスクワを批判し、政治的利益のために命を危険にさらすことを厭わないと非難することができた。

 

 

По словам главы лаборатории, разработавшей вакцину, третья фаза испытаний препарата будет проведена с участием десятков тысяч добровольцев.

 

ワクチンを開発した研究所の責任者によると、第3期の試験は数万人のボランティアの参加を得て実施されるという。

 

 

Важно отметить, что "Спутник V" не планируется вводить в общий оборот до января, оставляя четыре-пять месяцев для дальнейшего наблюдения за его эффективностью и любыми возможными побочными эффектами, которые могут возникнуть.

 

注意すべき点は、「スプートニクV」の一般流通は1月まで予定されておらず、4~5ヶ月を残して、その効果や副作用の可能性をさらに監視することである。

 

 

Мясников оценил вероятность введения карантина в сентябре

 

精肉業には9月に検疫の可能性の見込み

 

 

19.08.2020 10:06

2020年8月19日 10:06

 

 

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Введение карантина из-за пандемии коронавируса в сентябре является маловероятным.

 

9月のコロナウイルスパンデミックによる検疫の可能性は低い

 

 

Такое мнение высказал известный врач и телеведущий Александр Мясников.

 

この意見は、有名な医師でテレビ司会者のアレクサンダー・ミャースニコフ氏が述べたもの。

 

 

Напомним, ранее в социальных сетях начали распространяться слухи о введении карантина с 20 сентября.

 

それまでのソーシャルネットワークは、9月20日から検疫の導入についての噂を広め始めていた。

 

 

"Сегодня и официальные лица подтверждают, что закрытия не планируют. Что еще надо?", — опровергает эту информацию доктор.

 

「本日、関係者は検疫所を閉鎖する予定はないことも確認した。他に何が必要なのか?」、 - この情報に反論する、医師。

 

 

Москва скоро получит вакцину от коронавируса

モスクワではまもなくコロナウイルスワクチンが接種される

 

 

 

24.08.2020 13:06
2020 年8月24日13:06

 

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В скором времени небольшие партии российской вакцины от коронавируса "Спутник V" начнут поступать в Москву.

 

まもなく、ロシアのコロナウイルスワクチン「スプートニクV」の小ロットがモスクワに到着し始める。

 

 

Об этом сообщила заместитель мэра Москвы по вопросам социального развития Анастасия Ракова.

 

これは、モスクワの社会開発担当副市長アナスタシア・ラコバ氏が発表したもの。

 

 

"Вакцина от коронавируса на сегодняшний день официально зарегистрирована, в ближайшее время в небольших партиях по распределению Минздрава она поступит в оборот. Какая-то часть поступит и в Москву", — пояснила чиновница.

 

「コロナウイルスワクチンが正式に登録され、近い将来、それは保健省の配布のための小ロットで流通することになります。そのうちのいくつかはモスクワにも入るでしょう。」と関係者は説明した。

 

 

 

Первым импортером российской вакцины от коронавируса станет Белоруссия

ロシアのコロナウイルスワクチンの最初の輸入国はベラルーシになる。

 

Обновлено: 24.08.2020 17:58
更新:2020 年8月24日17:58

 

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Первой страной, которая получит российскую вакцину от коронавируса "Спутник V", станет Белоруссия.

 

ロシアのコロナウイルスワクチン「スプートニクV」を最初に接種する国はベラルーシになる。

 

 

Соответствующее решение принято президентом РФ Владимиром Путиным и белорусским лидером Александром Лукашенко.

 

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領とベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ指導者が対応を決定した。

 

8月25日(火)

 

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第114回医師国家試験問題(令和2年実施)A群(医学各論)から


❶ 50歳の男性。糖尿病治療の目的で来院した。

 

❷ 1か月前から両眼のかすみと視力低下を自覚して自宅近くの医療機関の眼科を受診したところ、両眼増殖糖尿病網膜症と診断され、内科を紹介され受診した。

 

❸ これまで健康診断は受けていなかった。

 

❹ 職業は自営業でデスクワークをしている。

 

❺ この1年間で体重は8㎏減少している。

 

❻ 身長170㎝、体重62㎏。脈拍72/分、整。血圧182/102㎜Hg。

 

❼ 両側アキレス腱反射は消失している。

 

❽ 両側足関節の振動覚は著明に低下。

 

❾ 尿所見(空腹時):蛋白3+、糖3+、ケトン体1+、潜血(-)。

 

➓ 血清生化学所見(空腹時):尿素窒素38㎎/dL、クレアチニン2.4㎎/dL、

 

⓫ 血糖348㎎/dL、HbA1c14.6%(基準4.6~6.2)、

 

⓬ トリグリセライド362㎎/dL、HDLコレステロール28㎎/dL、LDLコレステロール128㎎/dL、

 

⓭ Na136mEq/L、K5.2mEq/L、Cl98mEq/L。

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

<解説>

❾ 尿所見(空腹時):蛋白3+、糖3+、ケトン体1+、潜血(-)。

 

 蛋白3+ ⇒ 腎機能障害の存在が示唆されます。❽で述べた、糖尿病の三大合併症の一つである「糖尿病腎症」の存在が強く疑われます。

 

この症例では、糖尿病の三大合併症のすべてを併発している可能性が高いということになります。

なお尿中の蛋白が多いほど、腎不全になるリスクが高くなります。

蛋白尿(糖尿病の場合には特にアルブミン)濃度とGFR(糸球体濾過率)のデータとの組み合わせによって、より正確に予後を評価することができます。

 

 

 糖3+ ⇒ 尿糖の検出の有無やその程度は、必ずしも血糖値に厳密に対応しませんが、空腹時であるにもかかわらず尿糖3+であれば、中等度以上の 糖尿病を反映するものと考えます。

 

 

 ケトン体1+ ⇒ケトン体とは、アセト酢酸、β-ヒドロキシ酪酸、アセトンの総称で脂肪酸の分解産物です。肝臓で生成され、骨格筋、脳、腎などにおけるエネルギー源、脂肪合成などに利用され、正常では血中、尿中にほとんど検出されません。

糖尿病や、飢餓状態など、糖質(ブドウ糖)の利用障害が起きると、代償的に脂肪酸がエネルギー源として代謝亢進され組織での処理能力をこえて血中、尿中にケトン体が増加します。

 

 

 潜血(-) ⇒糖尿病においては、尿蛋白定性反応の結果が同程度でも潜血反応が陽性群と陰性群とでは腎機能に関連する臨床検査成績に差を認め、陽性群では腎障害が進展している可能性が示唆されています。

 

 

➓ 血清生化学所見(空腹時):尿素窒素38㎎/dL、クレアチニン2.4㎎/dL

 

 クレアチニン2.4㎎/dL⇒クレアチニンは筋肉に含まれているタンパク質の老廃物。本来は、尿素窒素と同様に腎臓の糸球体でろ過され尿中に排泄されますが、腎臓の機能が低下すると尿中に排泄される量が減少し、血液中にクレアチニンが溜まります。腎臓の機能の低下とともに、血清クレアチニンの値は高くなってきます。

 

 

 血清クレアチニンの正常値は、男性1.2mg/dl以下、女性1.0mg/dl以下です。

したがって、この症例での腎機能障害の存在は明らかです。この血清クレアチニン検査は、血液検査によって実施され、その結果はeGFR(推定糸球体濾過率)と呼ばれ腎臓の働きをあらわす重要な数値を計算するためにも用いられます。


ちなみに、この症例は、男性、50歳、血清クレアチニン2.4㎎/dLという3つのデータをもとに計算するとeGFR=24.2(mL/分/1.73m²)という値が得られます。(ただし、これは、関数電卓を用いないと計算できないため、試験会場での筆算では算出できません。)

 

このデータからするとGFRの区分ではG4(29~25)に該当し、腎臓の糸球体の濾過機能は「高度低下」と判定されます。」このように、血清クレアチニン検査の値と年齢、性別から算出されるeGFRは、尿中微量アルブミン検査の結果と組み合わせて、糖尿病腎症の進行の程度の予測値を評価することができます。

 

この症例での尿蛋白は3+であるため、蛋白尿区分はA3とされ、この症例は糖尿病性腎症病期分類では、少なくとも第4期(腎不全期)に至っており、第5期(透析治療期)に移行するリスクが高く<超高リスク>と評価されます。

 

 

参照:糖尿病性腎症病期分類(杉並国際クリニック令和2年度改訂版)

 

 

 

 尿素窒素38㎎/dL⇒基準値:7~23㎎程度。尿素窒素(BUN)とは、血液中の尿素に含まれる窒素成分のことで、蛋白質が利用された後にできる残りかすです。

 

通常は腎臓でろ過されて尿中へ排出されますが、腎臓の働きが低下すると、ろ過しきれない分が血液のなかに残ります。つまり、尿素窒素の数値が高くなるほど、腎臓の機能が低下していることを表しています。腎臓の機能を見る場合には、この尿素窒素の値だけでなく、尿に蛋白が出ているかどうかの検査の結果も合わせて判断します。この症例のように、両方に異常が見られる場合は要注意です。

 

 


 なお、血清クレアチニンと血清尿素窒素(BUN)の両方のデータが揃っている場合は、腎機能の指数としてBUN/クレアチニン比が用いられます。

正常では10/1であり、比が上昇している場合は腎外性因子を、低下している場合は腎性因子を考慮します。

 

この症例のBUN/クレアチニン比を計算すると=38/2.4=15.8>10、よって、比が上昇しているため腎外性因子が疑われます。

 

腎外性因子とは、腎機能低下を来している原因が、腎臓自体の疾患というよりは、むしろ腎臓以外の疾患因子によっていることを示唆します。これは糖尿病という因子の存在と矛盾せず、むしろ糖尿病腎症の特徴を示したものと判断することができます。

 

 

 

⓫ 血糖348㎎/dL、HbA1c14.6%(基準4.6~6.2)
 血糖348㎎/dL⇒血糖値は食事の影響を大きく受けます。他の血液生化学検査と同時に採血されたもの(空腹時)としての基準を示します。


空腹時血糖値判定基準    
 基準値 70~110mg/dl
 優    100mg/dl未満
 良    100~119mg/dl
 やや不良 120~139mg/dl
 不良   140mg/dl以上

 

以上より、この症例の血糖値は不良レベルの基準を遥かに超えていることが明かです。

 

 

 HbA1c14.6%(基準4.6~6.2)⇒HbA1cは過去1~2ヶ月前の血糖値を反映するので、当日の食事や運動など短期間の血糖値の影響を受けません。
  

HbA1cコントロール目標値
  

血糖正常化を目指す際の目標・・・<6.0%
  

合併症予防のための目標・・・・・<7.0%
  

治療強化が困難な際の目標・・・・<8.0%
  

 

以上より、この症例の血糖コントロールを図る上で、現在の14.6%というデータがいかに著しく不良であるかは明らかです。著しく血糖コントロール不良の糖尿病です。

 

 

 糖尿病の診断基準:この症例では眼科医がすでに糖尿病である旨を診断しています。

 

そこで内科的に、糖尿病の診断基準を検討してみます。

この症例は空腹時血糖のデータはありますが、条件①早朝空腹時血糖であるかどうかは明らかではありません。しかし、空腹時でさえ血糖348㎎/dLですから、条件③随時血糖値≧200㎎/dLという基準はクリアしているので「糖尿病型」です。

 

また条件④HbA1c≧6.5%にも該当し、やはり「糖尿病型」です。この症例のような場合は、糖尿病と診断してよいとされています。また、この症例では条件③随時血糖値≧200㎎/dLという基準はクリアして「糖尿病型」なので、次のいずれかの条件がみたされた場合は、初回検査だけでも糖尿病と診断できます。

 

・糖尿病の典型的症状(口渇、多飲、多尿、体重減少)⇒❺体重減少が該当

 

・確実な糖尿病網膜症の存在⇒❷両眼増殖糖尿病網膜症が該当

 

 

 

⓬ トリグリセライド362㎎/dL、HDLコレステロール28㎎/dL、LDLコレステロール128㎎/dL

 

 ⇒これらは血清脂質のデータです。脂質異常症診断基準値に基づいて動脈硬化症や心血管系のリスク評価をする際には、これらの他にnonHDLコレステロールを測定することが一般化しています。

 

 トリグリセライド362㎎/dL⇒トリグリセライドは中性脂肪とも呼ばれTGと記載されることがあります。150㎎/dL以下が基準となるため、高トリグリセライド血症に該当します。

 

 HDLコレステロール28㎎/dL⇒俗に「善玉コレステロール」として知られるようになってきました。40㎎/dL以上か基準となるため、低HDLコレステロール血症に該当します。

 

 LDLコレステロール128㎎/dL⇒俗に「悪玉コレステロール」として知られています。

140㎎/dL以上で高LDLコレステロール血症、120~139㎎/dLでは境界域高LDLコレステロール血症としています。この症例は、したがって、境界域高LDLコレステロール血症に該当します。

 

 脂質異常症診断基準値による脂質異常症のスクリーニング
⇒LDLコレステロール≧120㎎/dLが評価対象になります。
 

この症例のLDLコレステロールは128㎎/dLであるため、評価対象になります。

 

手続きとしては、冠動脈疾患の既往の有無から検討しますが、これは不明です。

 

そこで、仮に冠動脈疾患の既往が無いものとして、以下の基礎疾患の有無を検討します。

・糖尿病(耐糖能異常は含まない)⇒該当

 

・慢性腎臓病(CKD)⇒糖尿病腎症がありCKDに該当

 

・非心原性脳梗塞⇒不明

・末梢動脈疾患⇒糖尿病神経症・糖尿病網膜症を合併しているため可能性が高い

 

 

上記の、いずれか一項目に該当する場合、その症例の心血管疾患発生については高リスクと評価されます。高リスクの場合、LDLコレステロールの管理目標は120㎎/dL未満とされます。

 

参照:動脈硬化症予防・治療管理基準(杉並国際クリニック版)

 

 

 

⓭ Na136mEq/L、K5.2mEq/L、Cl98mEq/L。
  これらは血清電解質濃度のデータです。

 

 Na136mEq/L⇒Na<136 mEq/Lは低ナトリウム血症と評価されるため、境界域ではありますが、低ナトリウム血症に準じて評価します。

 

 K5.2mEq/L⇒基準値(3.5~5.5 mEq/L)の範囲にあります。

 

 Cl98mEq/L⇒基準値(98~110 mEq/L)であるため、境界域ではありますが、低クロライド血症に準じて評価します。

 

 血清電解質のうちで、血漿浸透圧に影響を与えるのがNaです。血漿の浸透圧を測定することにより、体液の濃縮・希釈の状態を知ることができます。体液恒常性維持機構が正常に働いているか、また異常の原因は何かの的確な判断には血清・尿の浸透圧を同時に測定します。血漿の浸透圧を規定する主なものは、Naなどの電解質とブドウ糖、尿素です。

 

 血漿浸透圧(Posm)は,
  Posm(mOsm/kgH2O)
=2×Na(mEq/l)+ブドウ糖(mg/dl)/18+尿素窒素38(mg/dl)/2.8
と表されます。

 

この症例の血漿浸透圧(Posm)を計算してみると、
=2×136(mEq/l)+348(mg/dl)/18+38(mg/dl)/2.8
=304.9(mOsm/kgH2O)

 

後2者が値としては小さいためPosm≒2×Naと簡略化され、血漿浸透圧は通常Naの2倍になるとされますが、この症例では後2者が値が小さくないため

Posm=2×Na=272(mOsm/kgH2O)となり、近似値としても不適切となります。

 

浸透圧の基準値は〈血漿〉280~290mOsm/l、〈血清〉270~295mOsm/l

であるため、305は若干高い浸透圧であることがわかります。

 

糖尿病では血清(血漿)浸透圧が高値になります。

 

 

 

このような診断手続きを踏むことによって、患者さんの病名ばかりでなく、合併症その他を含めて総合的な評価が可能となります。治療計画は、こうした地道な手続きを踏まなければ確かな方針を立てることはできません。明日は、いよいよ治療方針に入っていくことになります。

8月24日(月)



第114回医師国家試験問題(令和2年実施)A群(医学各論)から

 

皆さんは医師国家試験というものが、どのようなものであるかを想像したことがあるでしょうか。現在実施されている形式では問題がAからFまでの6群に分かれていて、医学各論、必修の基礎的事項、医学総論/長文問題(英文問題を含む)など、計400問で構成されていて、かなりの集中力と持久力が試されます。たった1問を綿密に分析して回答しようとしたら十中八九時間切れとなることでしょう。私が受検した30数年前と比べて、手技問題や長文問題・英文問題が登場し、アメリカの国家試験に近づいているという見方もできそうです。

 

日進月歩の医学会においては、概ね5年に一度しか改訂されない権威的な教科書よりも、毎年実施される国家試験の出題問題を検討した方が、アップ・ツー・デートな基礎知識の確認に役立っているように思われます。ですから、私は自分の専門領域以外の知識は、この400問に及ぶ国家試験問題を上手に活用することを続けていこうと思っています。

 

以下は、実際に出題された医師国家試験の症例提示です。❶~⓭の冒頭番号は解説の都合上、私が付したものです。

 

初日は、初診時に直ちに確認できる項目❶~❽までを検討することにします。

 

❶ 50歳の男性。糖尿病治療の目的で来院した。

 

❷ 1か月前から両眼のかすみと視力低下を自覚して自宅近くの医療機関の眼科を受診したところ、両眼増殖糖尿病網膜症と診断され、内科を紹介され受診した。

 

❸ これまで健康診断は受けていなかった。


❹ 職業は自営業でデスクワークをしている。

 

❺ この1年間で体重は8㎏減少している。

 

❻ 身長170㎝、体重62㎏。脈拍72/分、整。血圧182/102㎜Hg。

 

❼ 両側アキレス腱反射は消失している。

 

❽ 両側足関節の振動覚は著明に低下。

 

❾ 尿所見(空腹時):蛋白3+、糖3+、ケトン体1+、潜血(-)。

 

➓ 血清生化学所見(空腹時):尿素窒素38㎎/dL、クレアチニン2.4㎎/dL、

 

⓫ 血糖348㎎/dL、HbA1c14.6%(基準4.6~6.2)、

 

⓬ トリグリセライド362㎎/dL、HDLコレステロール28㎎/dL、LDLコレステロール128㎎/dL、


⓭ Na 136mEq/L、K 5.2mEq/L、Cl 98mEq/L。

 

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<解説>

❶ 50歳の男性⇒中年男性であり、まずは、生活習慣病を見落とさないようにします。
糖尿病治療の目的⇒すでに糖尿病の診断がなされている?誰が診断したか?

 

❷ 1か月前から両眼のかすみと視力低下を自覚⇒片眼でなく両眼の症状でることは、基礎疾患として全身性の病態を考慮する必要があります。
  

眼科を受診したところ、両眼増殖糖尿病網膜症と診断⇒眼科医は眼所見を通して高血圧、糖尿病、動脈硬化症、白血病などの全身疾患を発見することができます。特に、眼底検査は重要!

 

糖尿病網膜症⇒糖尿病によって網膜の血管が障害される病気。視力低下など の自覚症状がないまま進行して、15年前後で網膜症が発症する場合が多いのですが、血糖コントロールが不十分だと5~10年で網膜症が発症します。糖尿病網膜症は大きく分けて三段階で進行します。
増殖糖尿病網膜症⇒精密眼底検査をすると糖尿病網膜症はその進みぐあいにより大きく三段階に分けられます。

 

1) 単純糖尿病網膜症
針の先で突いたような小さな点状出血、それよりやや大きめの斑状出血、毛細血管が膨らんでできる毛細血管瘤、脂肪やたんぱく質が沈着してできたシミ(硬性白斑)、血管がつまってできたシミ(軟性白斑)などが眼底所見として見えます。視力には全く影響がなく、血糖コントロールをよくしていると自然に消えてゆきます。

 

2) 増殖前網膜症
軟性白斑というシミが多数出てきたり、血管がつまって酸素欠乏になった部分があちこちに出てくると、新生血管が出てくる前段階になります。静脈が異常に腫れ上がったり、毛細血管の形が不規則になります。正確な状況をつかむために蛍光眼底造影(血管造影)をすることがあります。この段階でも視力に影響がありませんが、危険な状態に一歩踏み込んでいます。この時期にレーザー光凝固をすると最も良い効果が得られます。

 

3) 増殖網膜症
新生血管(正常ではないはずの新しい血管が硝子体にのびてくる)、新生血管が破れて起こる硝子体出血、増殖膜、網膜剥離という重症な段階です。新生血管が出てもまだ自覚症状はありません。この段階でレーザー光凝固をすればまだ間に合うことも多いのですが、硝子体出血や網膜剥離を起こすと、なかなか自然に治ることは少なくなります。この段階になって目の中に煙の煤(すす)がたくさん出たり、赤いカーテンがかかるなどの自覚症状が出てきたりしますが、相当に進んでしまって手遅れに近いのです。


これらの三段階がどのくらいのスピードで進むかは、人によって違います。血糖コントロールがきちんと行われている人は進むのが遅く、また最終末期の網膜剥離にまで至らずに、途中で進行が止まり安定することも多くあります。概して比較的若い人(40~50歳以下)は進行が速いので注意を要します。

 

 

❸ これまで健康診断は受けていなかった⇒「自覚症状が無ければ健康である」と誤解しているようなタイプの方に多い。」このような場合では、糖尿病がいつから発症していたかについての詳細は不明です。それでは糖尿病のおおよその発症時期は推定可能か?

 

 

❹ 職業は自営業でデスクワークをしている。⇒これは、ライフスタイルに関する情報で、いわゆる坐業であり、運動量が少ないことが推定されます。また自営業者は、組織従業員等とは異なり、自らが積極的に健康管理を意識していない限り、自らの健康状態を把握できていないことが多いです。つまり、病気がかなり進行して、日常生活のQOLがかなり低下してからの受診というパターンになりがちです。

 

 

❺ この1年間で体重は8㎏減少している。⇒体重減少を手放しに喜ぶことは賢明ではありません。ライフスタイルを変えていないにもかかわらず、顕著な体重減少がみられる場合には、がんや糖尿病などの病気が進行している可能性があるからです。

 

 

❻ 身長170㎝、体重62㎏。⇒身長と体重のデータが得られているときには、必ず体格係数(BMI)を計算することになっています。
  

BMI=(体重㎏)/(身長m)²=62/1.7²=21.45、至適(理想)体重とされるBMI=22に近似しているために、過去の体重データを参考にしない限り問題点が見落とされてしまいます。❺によれば、1年前は62+8=70㎏であったことがわかります。
  

そこで1年前のBMIを計算すると70/1.7²=24.2、BMI≧25で肥満と定義されているので、1年前でも体重は正常上限であったことがわかります。腹囲のデータが示されていませんが、おそらく非肥満型(かくれ肥満の可能性あり!)の糖尿病であったものと推定されます。長期にわたって自覚症状に乏しいことに加えて、明らかな肥満も意識されない場合には、受診が遅れがちになります。

 

参照:肥満度とメタボリックシンドロームの診断および管理基準
(杉並国際クリニック改訂2版)

脈拍72/分、整。血圧182/102㎜Hg。⇒脈拍は60~90/分の正常範囲内ですが、
血圧に関しては収縮期血圧182mmHg、拡張期血圧102㎜Hgともに高値であり、明らかな高血圧です。この高血圧にも重症度分類があります。収縮期血圧が≧180㎜Hgであれば、それだけでⅢ度高血圧に分類され、最重症の高血圧とされます。
糖尿病と高血圧とは、ともに脳心血管病のリスク因子です。それでは、どの程度のリスクなのでしょうか?

 参照:高血圧治療管理基準

 

❼ 両側アキレス腱反射は消失⇒アキレス腱反射は深部反射の一つで、この反射が両側共に消失している場合は、糖尿病神経障害を疑います。

 

❽ 両側足関節の振動覚は著明に低下⇒振動覚も深部感覚の一つです。この所見は、❼とともに糖尿病神経障害を疑う有力な根拠になります。糖尿病の合併症は、毛細血管を中心に生じる細小血管障害と、比較的太い血管に起こる大血管障害に大別することができます。三大合併症として知られるのは❷の「糖尿病網膜症」
❼、❽の「糖尿病神経障害」
の他に、「糖尿病腎症」
があります。これらの合併症は、いずれも細小血管障害に基づく障害であり、糖尿病発症後10年前後の経過を経て、出現すると考えられています。
したがって、この症例も、糖尿病に気が付かないまま10年程度を経過していた可能性があります。


 一方、心筋梗塞や脳梗塞などの原因となる動脈硬化は大血管障害にあたり、境界型糖尿病と呼ばれる糖尿病予備軍の段階から発症・進展することがわかっています。

 

このように、実際の診療においても、初診時において膨大な情報の山の中から、重要な情報を選び出して収集することが求められます。明日は、以上の基礎の上に、検査データが集まった際に、どのようにそれらを解析していくかについて説明します。

8月24日(月)

 

環球時報(かんきゅうじほう、中: 环球时报)は、中国共産党の機関紙『人民日報』の姉妹紙で、海外のニュースを中心とした紙面構成となっています。民主主義ならぬ民族主義的観点を持つことで知られています。

 

アメリカ合衆国国務省は2020年6月、環球時報は独立した報道機関ではなく、中国共産党の支配下にあるプロパガンダ機関として諜報活動と世論戦、情報戦を仕掛ける宣伝機関であると指摘しています。それに基づき、中国中央テレビ、人民日報、中国新聞社 (中華人民共和国)とともに「外国使節団」と認定しています。

 

私は、中国紙の中国国内のニュースについては民族主義的色彩が濃く、余りに体制的であるためにほとんど無視しています。しかし、日本に対する論評については、全否定することなく、謙虚に振り返ってみる価値がある記事も掲載されていることがあるものと考えています。その一例を以下に挙げてみました。

 

この記事の内容は穏当であり、脚色も少なく、まっとうであると思われます。

もっとも、中国共産党政権の実態は、日本政府を批判できるだけの状況にないのは明らかです。しかし、ジャーナリストの中には、自分が所属する組織や立場を超えて、可能な限り、まっとうな取材をして、記事にしようと努めている人々が存在することを忘れてはなりません。

 

私が「まっとうな」というのは、この記事の本質が、単に日本政府の在り方の批判に留まらず、いずれは中国共産党の体質批判に繋がっていく導火線としての機能を内在している可能性を感じるからです。

 

中国共産党中央に睨まれず、しかも、その体制の在り方を批判しうる客観的材料を積み重ねていくという地道な活動を志している勇敢なジャーナリストが、わが国、日本にも数多く誕生してくれることを祈らずにはおれません。

 

もとより、私は中国共産党については批判的ですが、一般の中国人を嫌う者ではありません。むしろ、中国の古典文学や、中国医学に対しては池井崇拝の念すら抱いているからです。
 

 

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日媒要求日本政府公开新冠对策专家会议实录,却得到被涂黑的速记记录

日本のメディアは日本政府に新冠対策の専門家会議の議事録を公開するよう求めるが、速記録は黒塗りにされてしまう。


来源:环球时报新媒体
出典:環球時報ニューメディア

2020-08-23 10:25
2020-08-23 10:25

 

 

近日,日本富士电视台要求日本政府公开新冠对策专家会议的实录,得到的38页速记记录中,发言内容几乎全部都被涂黑了,没有被涂黑的只有类似“谢谢”之类的寒暄用语。

先日、日本のフジテレビが新型コロナウイルス対策に関する有識者会議の議事録の公開を求めたところ、入手した38ページの速記録では、講演内容のほとんどが黒塗りで消されており、黒塗りされていないのは「ありがとうございました」などの儀礼的挨拶だけだった。

 

对于涂黑这些文字的理由,日本内阁官房长官表示,“一旦公布,可能会有损直率的意见交换”。
文章を黒塗りにした理由について、日本の官房長官は「一旦公開されると、率直な意見交換に支障をきたす恐れがある」と述べた。


此外,日本经济再生担当相西村康稔虽然表达了政府应该公布实录的意见,但是预计这份实录也只能在转移到国家档案馆之后、10年后才能公布。
また、西村康稔経済再生担当相は、政府が謄本を公表すべきだとの意見を示しているが、謄本が公表されるのは10年後の国立公文書館に移管されてからになると予想される。


富士电视台称,“我们可能要等到2030年才能看到这些被涂黑的文字了”。
フジテレビは "黒塗りの文字を見るには2030年まで待たなければならないかもしれない "と言っている。

 

责编:薛艺磊相关新闻
編集部:薛義磊

ジョン・ボルトン氏の話題の新刊本

 

<The Room Where It Happened A White House Memoir >

 

の著者ジョン・ ボルトン氏は、元ホワイトハウス国家安全保障補佐官です。

 

 

マイク・ポンペオ米国務長官が6月23日(現地時間)、回顧録を出版したジョン・ボルトン元ホワイトハウス国家安全保障補佐官に対する司法処理の可能性を示唆した。 

 

マイク・ポンペオ長官はこの日、FOXニュースに出演して「率直に言って、ジョン・ボルトン氏が本で公開した情報は、刑事上の責任を負うべきもの」とこのように述べました。

 

私は、この本は歴史的な価値のある不朽の業績だと考えて、目下、研究中です。

 

アメリカの視線で、世界各国をどのように見ているのかが手に取るようにわかります。

 

巻末の索引が充実していて有用です。ポルトガルについては独立した索引項目はありませんでした。

これに対してブラジルに関しては、Brazil: and Venezuela,263,264,266,267,275とあります。

 

逆にベネズエラに関しては独立した項目が立てられ、多くの言及があります。

 

このことから推論できるのは、米国はポルトガル語圏については関心度や重要度が高くないであろう、ということです。

逆に、ブラジル研究においてはスペイン語圏のベネズエラに関心を持っておくことが、少なくとも国際関係学的には重要な意味をもっているかもしれません。

 

 

ACNUR no Brasil のサイトから引用

 

“Nós deixamos tudo na Venezuela. Não temos um lugar para viver ou dormir e não temos nada
para comer”

 

"私たちはベネズエラにすべてを置いてきました。"住むところも寝るところもなく、食べるものもない"

 

 

Nayebis Carolina Figueira, venezuelana de 34 anos que fugiu para o Brasil

 

ブラジルに逃亡した34歳のベネズエラ人、ナエビス・カロリナ・フィゲイラ

 

 

No passado, a Venezuela abrigou milhares de refugiados da região e de outras partes do mundo. Agora, a quantidade de venezuelanos forçados a deixar suas casas continua a crescer, e um significante número deles precisa de proteção internacional. Mais de 4 milhões de venezuelanos deixaram seu país até o momento, de acordo com dados dos governos que estão acolhendo esse fluxo, fazendo com que essa seja uma das maiores crises de deslocamento no mundo atualmente.

 

過去にベネズエラは、地域や世界各地から数千人の難民を避難させてきた。現在、家を追われたベネズエラ人の数は増え続けており、国際的な保護を必要とする人はかなりの数に上っている。この流れを受け入れている政府のデータによると、これまでに400万人以上のベネズエラ人が国外に出国しており、今日の世界最大級の(難民)移動危機となっている。

 

 

Houve um aumento de 8 mil por cento no número de venezuelanos buscando o reconhecimento do status de refúgio no mundo desde 2014, principalmente nas Américas. Muitos venezuelanos que se encaixam no critério como refugiado não estão se registrando para os procedimentos de refugiados, optando por outras formas legais de estadia, que são mais fáceis e rápidas de se conseguir e que permitem acesso ao mercado de trabalho, educação e serviços sociais.
No entanto, centenas de milhares de venezuelanos permanecem sem documentação ou permissão para residir regularmente em países vizinhos, e, assim, não possuem a garantia de acesso a direitos básicos. Isso os faz particularmente vulneráveis à exploração laboral e sexual, tráfico, violência, discriminação e xenofobia.

 

2014年以降、アメリカ大陸を中心に世界で難民認定を求めるベネズエラ人の数が8,000パーセント増加している。難民としての基準に当てはまるベネズエラ人の多くは、難民手続きのための登録をせず、労働市場、教育、社会サービスへのアクセスを可能にする、より簡単で迅速な他の合法的な滞在形態を選択している。しかし、何十万人ものベネズエラ人が、書類もなく、近隣諸国に定期的に居住する許可も得られず、基本的な権利へのアクセスが保証されていない。そのため、労働や性的搾取、人身売買、暴力、差別、外国人恐怖症などの被害を受けやすくなっている。

 

 

A maioria dos refugiados e migrantes da Venezuela chegando em países vizinhos são famílias com crianças, mulheres grávidas, pessoas idosas e pessoas com deficiência. Muitas vezes obrigados a viajar por rotas irregulares em busca de segurança, eles podem ser vítimas de contrabandistas, traficantes e grupos armadosclandestinos. À medida que mais e mais famílias chegam com cada vez menos recursos, elas precisam imediatamente de documentação, proteção, abrigo, alimentos e cuidados médicos.

 

近隣諸国に到着したベネズエラの難民や移民の多くは、子どものいる家族、妊婦、高齢者、障害者などである。安全を求めて不規則なルートでの移動を余儀なくされることが多く、密輸業者や人身売買、武装した秘密組織の犠牲になることもある。より多くの家族が、より少ない資源で到着すると、彼らはすぐに書類、保護、避難所、食料、医療が必要となる。

 

 

Países anfitriões e comunidades na Argentina, Brasil, Chile, Colômbia, Costa Rica, Equador, México, Panamá, Peru e Caribe têm sido generosos ao receber os venezuelanos, mas estão cada vez mais sobrecarregados e alguns estão chegando a um ponto de saturação.

 

アルゼンチン、ブラジル、チリ、コロンビア、コスタリカ、エクアドル、メキシコ、パナマ、ペルー、カリブ海地域のホスト国やコミュニティは、ベネズエラ人を寛大に歓迎してきたが、彼らの負担は増大しており、一部は飽和点に達している。