当クリニックで行う„癌„予防対策 No5.膵臓がん

8月21日(金)

 

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ARCHIVE 2020年6月19日 改訂版
わかりやすい臨床栄養学(第6版)190頁参照
2020年4月30日 第6版第1刷発行

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執筆者代表:飯嶋正広(杉並国際クリニック)

 



膵がんの年間死亡者数は2017年で3万3,475人、年間罹患数は2013年で3万4,837人で、罹患数と死亡数がほぼ同数です。

 

これは、すい臓がんが発見されても救命が極めて難しいということを意味します。

膵がんの多くは切除不能で診断され、切除可能例は20~30%に過ぎません。切除例と非切除例を含めた5年生存率は10%未満であり、悪性腫瘍の中でもきわめて予後不良の疾患です。

 


膵がんは膵臓から発生した悪性腫瘍であり、膵管上皮から発生する浸潤性膵管癌(腺癌)が90%以上を占めます。その他は、いずれも稀な腫瘍です。

 

わが国での膵がんのガイドラインは「膵癌診療ガイドライン第5版(2019年版)」が刊行されています。


膵がんの予防法について、欧米では燻製または加工の肉の摂取が膵がんリスクを上昇させるとの報告があり、ビタミンC、食物繊維の摂取が膵がんリスクを下げることも示されています。

 

膵がんを予防するには、肉類や、山菜、漬物の過剰摂取を避け、緑黄色野菜・果物を積極的に摂取するよう心がけましょう。

 

山菜や漬物をたくさん食べる人たちのほうが、あまり食べない人たちに比べて膵がん死亡リスクが高くなり、特に、ほとんど毎日山菜を食べる男性は、最も食べない男性の膵がん死亡リスクが3倍高いことがわかりました。


膵がんのリスクファクターとして、

 

膵がんの家族歴(1人4.5倍、2人6.4倍、3人以上32倍、50歳未満発症の場合は9.31倍)、

遺伝性膵炎(53~87倍)などの遺伝性疾患、

2型糖尿病(1.94倍)、

慢性膵炎(13.3倍)、

膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN:主膵管型の方が、悪性化リスクが高い)、

膵嚢胞、

肥満、

喫煙(1.68倍)、

大量飲酒(エタノール換算37.5g/日以上で1.22倍)、

塩素化炭化水素曝露に関わる職業、血液型(非O型)、

ヘリコバクター・ピロリ感染、

胃潰瘍の既往、

B型肝炎ウイルス感染、

歯周病・歯周炎

 

が挙げられ、因子ごとの膵がんリスクが報告されています。

 

これらのリスクファクターを複数有する場合は膵がんの高リスク群として定期的に膵がんのスクリーニング検査を行うことが望ましいです。


しかし、膵臓がんについては、現在、指針として定められている検診や具体的スクリーニング法は確立していません。気になる症状がある場合には、医療機関を早期に受診することが勧められます。

 

そこで、実際には血中膵酵素、腫瘍マーカー、腹部超音波検査を行い、何らかの所見を認めた場合は、造影CT、造影MRI、超音波内視鏡(EUS)検査による精査を行うことが勧められます。

 

 

杉並国際クリニックにおける検査の実際

 

腹部超音波検査で膵臓の定期的スクリーニング

 

膵臓がんについては、現在、指針として定められている検診や具体的スクリーニング法は確立していません。そこで気になる症状がある場合には、医療機関を早期に受診することが勧められています。その場合に、しばしば困るのは肥満症、とりわけ内臓脂肪蓄積型の肥満者のケースです。

 

最近の腹部超音波検査の臓器描出性能は、以前に比べて格段に向上していますが、胃の裏側に深く位置している膵臓は、腸管ガスや内臓脂肪の干渉により描出できないことがあります。

 

そしてそのようなケースのほとんどが脂肪肝を伴っています。そのため、脂肪肝の主要因となっている肥満の解消に向けて減量サポートをプログラムして、概ね3カ月ごとの再検を実施し、肥満や脂肪肝の改善に導きます。治療の進展に伴い膵臓周囲の内臓脂肪も減少してくるので、膵臓の描出が可能になっていくことがあります。

 

腹部超音波検査では、必ず膵臓もチェックしますが、膵がんの予防のための医学的介入としては、超音波検査で膵臓が明瞭に描出できる状態であることが、全般的な健康管理を含めて、大切なポイントになるのではないかと考えています。

 

腹部超音波検査をはじめとして、実際には血中膵酵素、腫瘍マーカーなど何らかの所見を認めた場合は、造影CT、造影MRI、超音波内視鏡(EUS)検査による精査を行うことが勧められます。