アレルギー専門医が診る皮膚疾患、乾癬

8月13日(木)


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乾癬は、炎症性皮膚疾患の一つで、全身の皮膚に大小の境界明瞭な紅斑局面が多数見られ、その表面には厚い銀白色の鱗屑が付着するという特徴を呈します。

男女比は2:1で男性に多い傾向があります。

 

近年では、メタボリックシンドロームとの関連が強く示唆されています。

実際に、肥満、脂質異常症、糖尿病、高血圧などを合併していることが多く、これらの疾患を伴っている乾癬患者は心筋梗塞につながるケースがあります。

 

そのため、皮膚のみならず全身性の炎症性疾患と捉えて健康管理を行うべきと考えられるようになってきました。

 

国内においては乾癬に関する正規のガイドラインはないため、ドイツのS3ガイドライン(2012)などが参考になります。

 

 

乾癬は、一言で言えば、長い付き合いになる全身性疾患だということになります。

そして糖尿病や脂質異常症、高血圧などと同様に治す病気ではなくコントロールする病気です。

 

しかし、幸いなことに適切な治療を継続することにより、より良い状態が保てるようになってきました。

 

炎症性疾患ではありますが、感染する病気でもなければ、必ずしも子どもに遺伝するわけでもありません。

そのかわり、これまで考えられてきた以上に、食事や喫煙などの生活指導が大切です。

 

 

このように、乾癬患者の健康管理は、すべて皮膚科専門医の手に委ねていれば良いというものではないことが明らかになってきました。

 

その他、他科の関与が必要になってくる具体的なケースとしては、皮疹のみならず関節症状を訴えている場合(整形外科、リウマチ内科)、患者QOLが著明に障害され、治療意欲が低下している場合(精神科、心療内科)、皮疹の急性増悪や膿疱化などが出現していないにもかかわらず発熱がみられる場合(内科)などです。

 


乾癬には5つの病型があり、それらは尋常性乾癬(90%)をはじめ、関節症性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症、適状乾癬です。

しかし、実際には関節症性乾癬の割合は報告されているよりも多い印象です。

 

その理由としては、大多数を占める尋常性乾癬と診断されていたものの中から、経過中に関節症状を伴ってくるケースがみられるからだと考えています。

 

これは関節症性乾癬である可能性が高いです。関節症性乾癬を早期に発見することは有用であり、そのための質問票としてPASE(Psoriatic Arthritis Screening and Evaluation)などが知られています。

 

初診時の検査:

臨床症状と所見のみで判断できることがほとんどです。しかし、関節症状を伴う場合は、関節リウマチとの鑑別が必要となります。その場合は、採血にて抗核抗体、リウマチ因子、抗MMP-3抗体、抗CCP抗体、血沈、CRPなどを確認します。また画像評価も重要であり、単純X線、関節エコーは頻用されます。

 

治療方法:

①外用療法、②光線療法、③内服療法、④生物学的製剤に大きく分けられ、これらを単独あるいは併用して行われます。

 

治療評価:

乾癬の重症度を評価する際に利用されるのが10の法則(The Rule of Tens)です。

 

① 全身における病変面積の割合(BSA: body surface area)>10%

 

② PASI>10点(72点満点中)

 

③ DLQI>10点(30点満点中)

 

以上のうちのいずれかをみたす場合には、中等症~重症と判断し、生物学的製剤などの全身療法を考慮すべきとされています。

 

治療管理の目標項目:

①皮疹の改善、

 

②関節症状の改善(関節症性乾癬の場合)、

 

③ 患者QOLの向上

 

① については、従来はPASI(Psoriasis Area and Severity Index)スコアが治療開始前と比較して75%以上改善することを目標としていましたが、近年登場した生物学的製剤を使用する場合は90%以上の改善を目標とするようになってきています。

 

② については、より具体的にいえば、

②-1)疼痛の消失、

②⁻2)進行の抑制とし、米国リウマチ学会(ACR)基準で50%以上、最終的には70%以上の改善を目標とします。

 

③ については、さまざまなQOL指標があります。包括的なものではSF-36、皮膚疾患特異的なものではDLQI(Dermatology Life Quality Index)、さらに乾癬特異的QOLの指標としてはPDI(Psoriasis Disability Index)があります。

 

管理上の注意点:

いずれの治療法においても注意すべき副作用があるため、それらを極力回避した上で治療に当たることが必要です。たとえば、活性型ビタミンD₃外用薬であれば、高カルシウム血症の発生に注意します。確認しないままであると頭痛や嘔気などの症状がみられることがあるので定期的に血液検査を行いチェックする必要があります。