ロシア語旅行:ロシアのクレムリンから見たトランプ大統領

8月11日(火)

トランプ大統領は米中覇権戦争において、中国包囲網のなかにロシアを誘い入れようとしています。したたかな、プーチンは容易にはトランプの思惑には従いそうもありません。


しかし、ロシアは産油国であり、原油価格の安定とそれによる収益は国家的な課題です。

 

ロシアは、アメリカをどのように捉えているのでしょうか。
そこで今週も、ロシアのプラウダ紙の記事を紹介します。


Фото: REUTERS
Президент США Дональд Трамп заявил, что ему удалось договориться с Россией, Саудовской Аравией и другими странами о значительном сокращении объемов добычи нефти. Речь идет об уменьшении добычи сырья почти на 10 миллионов баррелей в сутки.

 

ドナルド・トランプ米大統領は、ロシアやサウジアラビアなどと交渉して原油を大幅に減らすことに成功したと述べた。これは1日1000万バレル近くの減産についてである。
コメント:新型コロナウイルスのパンデミックがもたらした経済面での副産物が、石油価格の暴落でした。世界的な需要低下を受け、石油価格は2月後半から下がり始め、3月に入ると急落しました。その下落を決定的にしたのが、OPECとロシア等の産油国(いわゆるOPEC+という枠組み)の減産協議が3月6日に決裂したことでした。

 

しかし、3月から4月にかけての大暴落は、さすがに産油国を慌てさせたのでしょう。OPEC+は4月12日、5~6月に日量970万バレルの減産を行うことで最終合意しました。これは、世界の原油供給の約10%に当たる大幅な減産です。さらに、6月6日にOPEC+はこの歴史的な減産を7月末まで延長することで合意しました。

 

 

- Когда нефтяной рынок рухнул, я убедил Саудовскую Аравию, Россию и других, сократить нефтедобычу, убедил ОПЕК+ и Мексику согласиться на сделку, - заявил американский лидер на мероприятии в штате Техас, цитирует ТАСС.

 

- 原油市場が暴落したとき、「サウジアラビアやロシアなどに減産を説得し、OPEC+とメキシコを説得して合意させた」と、米国の指導者はテキサス州のイベントで語った、とTACCは引用した。

 

コメント:

これまでの間にも石油価格はジェットコースターのような変動を示し、4月20日にはニューヨーク市場で原油先物(5月物)のWTIが史上初めてマイナスの値を付けました。つまり、供給のだぶつきで5月には貯蔵施設が溢れてしまうので、売り手がお金を払ってでも誰かに引き取ってほしいという前代未聞の状況となったのです。マイナス価格になったのはあくまでも先物でしたが、筆者が普段参照しているブレント油価のスポット価格も、4月21日に1バレル当たり9.12ドルという近年の最安値を付けています。

 

 

Глава Соединенных Штатов выразил слова благодарности в адрес Саудовской Аравии, России и Мексики за сокращение объемов добычи черного золота, а также за заключенное в апреле текущего года соглашение ОПЕК+, которое вступило в силу 1 мая.

 

米国のトップは、サウジアラビア、ロシア、メキシコの3カ国に対し、黒金(註)の減産と、今年4月に締結されたOPEC+が5月1日に発効した協定に感謝の言葉を述べた。
(註)黒金:черного золота(露)black gold(英)英訳のblack goldは石油を意味する。これを黒金と直訳すると「石炭」の意味になってしまうので注意を要する。

 

 

В Кремле ранее заявляли, что в сделке нет проигравших, все выиграли. Российские власти считают такое соглашение стран выгодным для всех сторон.

 

クレムリンは以前、この取引に敗者はいない、全員が勝ったと述べている。ロシア当局は、このような合意はすべての当事者にとって有益であると考えている。

 

コメント:

ロシアは輸出の6~7割を石油・ガスで稼ぎ、連邦歳入の半分近くも石油・ガス収入で賄っている国です。通貨のルーブルも、ほぼ石油価格に連動して動いており、2020年に入って大幅なルーブル安が進んでいました。ロシアにとっては、米国に貸しを作るような体裁をとりながらも、自国の財政危機回避ができたということになるでしょう。