統合医療(東洋医学・心身医学)、週刊新潮編集者からの紹介情報

8月1日

週刊新潮8月6日号から

 

特集:驚きの報告!漢方薬が「コロナ」に劇的効果⁉

 

ジャーナリスト:笹井恵里子

 

「一般的に漢方薬と言えば、長期的に、体にじっくり働きかけて、体質を改善するというイメージだ。しかし、それはあくまで日本国内、それも近代での印象であり、実は漢方薬はそもそも感染症のような“急性疾患”のために開発されたものだという。」

 

⇒ はい。その通りです。

『傷寒論』は漢方の基本テキストで、傷寒とは急性感染症に相当するものです。ただし、様々な慢性疾患に対して漢方薬は有効に利用されているだけでなく、予防目的の服用についてもっと活用されるべきではないかと考えています。

 

 

 千葉大学医学部附属病院の並木隆雄医師のコメント:
「漢方薬は、このように『証』に応じて処方するため、『誰が服用しても同じ効果』という科学的再現性が弱いのは否めません。西洋医学からみれば“エビデンスがない薬”といわれる所以でしょう。」

 

⇒ 西洋医学的な“エビデンス”にこだわり過ぎると治療のタイミングをはずし、救命が困難になる場合も少なくないように思われます。東洋医学的なエビデンスというものが存在するのですが、それを専門家ばかりでなく一般の方々にもわかりやすく説明できる人材が不足していることが残念です。

 

 

 

「日本東洋医学会ではこれまで、『根拠なき治療法』との批判を恐れて大きく動かなかったが、漢方が『感染症の治療』に使えることを証明するため、今後ランダム化比較試験を行う予定という。」

 

⇒ 実は、すでに始まっています。日本東洋医学会の会員であれば治験の呼びかけが届いているはずです。もっとも、残念ながらこの治験プロトコールは、発症者を対象とし、しかも治療を目的とし、さらに西洋医学的な“エビデンス”にこだわり過ぎています。私は、予防に焦点を当てているため、このプロトコールに沿っての臨床実践は現在当クリニックに継続通院中の患者さんのメリットが少ないと判断して、参加していません。

 

 

「漢方は本人の免疫力を高めることにより、ウイルスがいる部分の“局所炎症”を促進し、ウイルスが体内に増殖するのを防ぐという。」

 

⇒ 私もそのように理解しています。

免疫力を高めるためには、病気にかかってからではなく、病気にかからないうちに準備しておく方が遥かに容易です。つまり、免疫力の強化は予防の本質と密接な関係があります。したがって、予防的に漢方を服用するという発想こそが大切なのだと思います。

 

 

「この免疫力アップによって全身でなく局所の炎症で“済ませる”ことが対コロナウイルスの闘いで重要な役割を果たしている。」

 

⇒まさに、その通りです。

「局所の炎症で“済ませる”」ためには、予め十分な免疫力を確保しておくことが鍵になります。ですから、私は治療薬を処方するのではなく、免疫力を高めることができる予防薬を勧めているのです。その代表が「玉弊風散(ぎょくへいふうさん)」なのです。

 

 

「つまり漢方薬は治療だけでなく、日頃の感染予防や感染後の重症化を防ぐ上でも重要というわけである。」

 

⇒ 完璧なコメントです。

ただし、さらに言えば「日頃の感染予防」は「感染後の重症化を防ぐ上でも重要」であるともいえます。中国や韓国の医師は、西洋医と伝統医(中医師・韓医師)の種別があるのに対して、日本の医師はその両方の権能をもっていて、統合的な診療が可能であるというメリットを最大限に活用することが、この課題の克服に大きな力を発揮することができます。

しかし、残念ながら、保険医療は予防に対して給付されません。

コロナとの共生が叫ばれている今日、保険医療の枠組みに執着し過ぎることで、患者も医師も早期対応ができなくなるとすれば、それは大きな損失であるということに皆が気づくことは大切ではないかと考えます。