痛風認定医として<痛風>を語る、高尿酸血症の管理と治療方針

7月16日(木)

 

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お詫び!

痛風患者の激増のため、急遽、第4週と第3週のプログラムを交換しました。

 

私は痛風が、単なる生活習慣病としての代謝病であるばかりでなく、心理社会的ストレッサーによって発作を生じやすい疾患であることに気づいていました。しかし、痛風のエキスパート集団である「日本痛風・核酸代謝学会」の認定医は全国で55名に過ぎず、私以外に指導医クラスの心療内科の専門医が不在であるためか、さっぱり議論されていないことが残念です。


2018年12月に発刊された最新のガイドラインである『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン(第3版)』では、高尿酸血症・痛風の治療に際しての重要な7つの臨床的課題が、いわば質疑応答のような形式で掲げられ、推奨文が出されています。

 

杉並国際クリニックでは、<痛風・高尿酸血症の治療指針(2020改訂3版)>を独自にデザインし、日々の臨床を系統的に行なっています。
 

高尿酸血症・痛風は代表的な生活習慣病の一つであり、治療に際しては生活習慣を改善することが最も重要です。そこで杉並国際クリニックでは、生活習慣改善のための行動療法として、複数のオリジナルの<行動記録表>を考案して、患者さんのセルフケアや診療時の経過確認や治療計画の立案に活用して、顕著な成果を得ています。

 

1)高尿酸血症・痛風の管理・治療目標
痛風関節炎を繰り返す症例や、また最近では稀になっていますが痛風結節を認める症例は薬物療法の適応となります。

その際には、血清尿酸値を6.0㎎/dL以下に維持するのが望ましいです。

痛風発作を経験したことが無く痛風結節や尿路結石などによる症状等のない高尿酸血症は無症候性高尿酸血症とよばれますが、その場合の薬物療法の導入は、血清尿酸値8.0㎎/dL以上を目安にします。

 

2)高尿酸血症(無症候性高尿酸血症を含む)の治療方針
高尿酸血症の治療の基本は食事療法、運動療法といった生活習慣の改善にあります。その際には、血清尿酸値と併存疾患の有無により薬物療法の介入の是非を決定します。


① 生活指導:食事療法、飲酒制限、運動の推奨が中心となり、肥満を伴う場合は肥満(本人の自覚が乏しい内臓肥満や隠れ肥満にも注意!)を解消することによって、ある程度、血清尿酸値を低下させる効果も期待できます。

 

② 食事療法

<1>摂取エネルギーの適正化

<2>高プリン食の制限:まずプリン体の1日摂取量は400㎎を超えないようにし ます。DASH食により血清尿酸値が低下することが報告されています。
   

注意すべき高プリン食としては、動物の内臓(豚・牛のレバー)、魚(さんま・あじ)の干物などが代表的です。
    

一方、推奨すべき低プリン食としては、カリフラワー、かまぼこ、ちくわ、豆腐、乳製品、鶏卵、とうもろこし、さつまいも、穀類(米飯、パン、うどん、そば)などが挙げられます。
    

また、尿酸の尿中飽和度を減少させるために十分な水分摂取(尿量2,000mL/日以上)を推奨しています。

 

<3>アルコール制限:飲酒については対象飲料がプリン体を含むか否かにかかわらず、アルコール自体が体内での代謝過程で尿酸を生成するため、日本酒なら1合、ビールなら500mL、ウイスキーなら60mLにとどめます。

 

 

③ 運動:肥満を是正し、メタボリックシンドロームを改善することにより血清尿酸値を低下させることが期待されます。

運動の種類としては、有酸素運動、とくに水氣道®のような水中有酸素運動は浮力の利用によって関節に大きな負荷をかけず、また水圧によって適切な利尿と浮腫改善を促すためにとても効果的です。

これに対して、マシンを使った筋肉トレーニングは血清尿酸値を上昇させ痛風発作を引き起こしやすいので注意を要します。

 

 

④ 薬物療法:無症候性高尿酸血症であっても痛風関節炎、痛風結節、腎障害、尿路結石の発症を防ぐために血清尿酸値を低下させることが望ましいです。とくに生活習慣病など併存疾患を有する場合は8.0㎎/dL以上、伴わない場合は9.0㎎/dL以上で薬物療法を考慮します。
 

なお腎障害を有する高尿酸血症の患者さんに対して、腎機能低下を抑制する目的で尿酸降下薬を用いることが条件付きで奨励されています。
 

薬物療法開始から6カ月間は、血清尿酸値の推移をみるため、また薬剤の副作用を早期に発見するために、採血検査を毎月実施するのが望ましいとされています。
  

明日は、痛風の治療薬の種類とその選択について解説します。