痛風認定医として<痛風>を語る、高尿酸血症の原因に基づく痛風の診断

7月15日(水)


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予定表では、第3週は「心療内科指導医<消化器心身症>を語る」でしたが、
痛風患者の激増のため、急遽、第4週と第3週のプログラムを交換しました。

 

私は痛風が、単なる生活習慣病としての代謝病であるばかりでなく、心理社会的ストレッサーによって発作を生じやすい疾患であることに気づいていました。

しかし、痛風のエキスパート集団である「日本痛風・核酸代謝学会」の認定医は全国で55名に過ぎず、私以外に指導医クラスの心療内科の専門医が不在であるためか、さっぱり議論されていないことが残念です。

 

単なる高尿酸血症と痛風の違いは、痛風では急性痛風関節炎(痛風発作)を伴うところにあります。逆に、痛風発作を経験してはじめて高尿酸血症であったことが判明しる患者さんも多数に上ります。

 

急性痛風関節炎(痛風発作)は、第1中足趾節関節、足関節に好発します。誘因としては、飲酒の他に運動や疲労、精神的ストレスなどが関与することもあります。痛み発作の初期には発症部位の違和感を覚えることがありますが、これに気が付くことができるのは、しばしば痛風発作を経験している方に多く、初回発作で気づいていたという人は珍しいです。

 

関節炎は通常、単一の関節に生じ、24時間以内にピークに達します。疼痛、発赤、腫脹、熱感とともに激痛のため歩行困難となることもしばしばおこります。

関節炎症状は10~14日で軽快し、その後、症状はほぼ完全に消失します。ただし、ここで十分に理解していただきたいことは、症状消失をもって治癒と考えるのは誤りだということです。むしろ、本格的な治療開始のタイミングであると認識しておくことが大切でしょう。
  

高尿酸血症・痛風が長年にわたり十分な加療がなされない場合、発作は頻発し、慢性的に関節炎が進行し、さらに複数の関節に発作が出現するようになります。さらに痛風結節が出現したり、痛風腎と呼ばれる間質性腎炎を併発したりすることになるからです。
  

杉並国際クリニックは、今年(2020)の6月1日から完全予約制を導入したため、初診患者で痛風発作のピークで来院される方は激減しました。

発作出現後2~3週間に初診となる場合には、発作がおさまっている可能性が高いのですが、しばしば反対側で発作を起こした状態で来院される方もあります。

このような場合は、消炎および鎮痛を目的とする急性期の治療が主体となるため、血清尿酸値を測定しますが、その他の本格的な治療に向けての検査を実施することはできません。

発作期を過ぎてから長期管理のための検査が始まります。その他、痛風関節炎発作時に行う検査項目としては、白血球分画を含む血算、炎症反応としてのC反応性タンパク(CRP)や血沈を測定します。
  

急性期で痛風関節炎を起こしているとき、つまり痛風発作中の血清尿酸値は必ずしも高値を示しません。これは、発作に伴って生成される炎症性サイトカインによる影響と考えられています。

この段階では、とくに痛風の罹病期間の長い症例では、耳介や肘関節などに好発する痛風結節の有無を確認することにしています。
 

初診時で痛風関節炎の状態であれば、類似の症状を来す疾患との鑑別も同時並行的に行なっています。関節リウマチ、偽痛風、外反母趾をはじめとする変形性関節症の他に、骨折や靭帯損傷などの可能性も否定できないからです。

これには関節超音波検査が役に立っています。場合によっては、X線撮影、関節穿刺を施行することがあります。
 

さて、高尿酸血症・痛風のための臨床検査としては、まず、一般的な身体計測を行います。

これは高尿酸血症・痛風の患者さんに限らず、継続的な診療が必要な方全員に実施しているものです。杉並国際クリニックでは、<体組成・体力テスト>(表1)という名称を付して、徐々に改良を加えてきたものを使用しています。


表1

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次いで、採血検査も一般的な血液、血清、生化学検査を行います。クレアチニンや電解質、推定糸球体濾過率(eGFR)などの腎機能、また基礎疾患として同時に他の生活習慣病が関与していないかどうか、肝機能、血清脂質(総コレステロール、HDL-コレステロール、中性脂肪⇒非HDL-コレステロール、LDL-コレステロールは計算式により算出)、血糖値、HbA1cなどが含まれます。また尿検査と推定糸球体濾過率(eGFR)から<慢性腎臓病・腎不全のリスクスクリーニング>(表2)も並行して行います。

表2

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 これらの基礎検査の結果次第では、超音波検査(腎臓の他に、腹部、心臓、頸動脈など)も考慮します。

 


明日は、高尿酸血症・痛風の治療法選択のための手続きについて解説します。