痛風認定医として<痛風>を語る、世界をリードする日本の痛風診療

7月13日(月)

お詫び!
予定表では、第3週は「心療内科指導医<消化器心身症>を語る」でしたが、痛風患者の激増のため、急遽、第4週と第3週のプログラムを交換しました。

 


私は痛風が、単なる生活習慣病としての代謝病であるばかりでなく、心理社会的ストレッサーによって発作を生じやすい疾患であることに気づいていました。

しかし、痛風のエキスパート集団である「日本痛風・核酸代謝学会」の認定医は全国で55名に過ぎず、私以外に指導医クラスの心療内科の専門医が不在であるためか、さっぱり議論されていないことが残念です。

なお日本痛風・尿酸核酸学会認定痛風医名簿は以下で検索できます。

 

名簿のページはこちら

 


痛風診療に関して、わが国では2002年に世界に先駆けて日本痛風・核酸代謝学会から「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第1版」が刊行され、血清尿酸値に基づく治療方針が明確に示されました。

同ガイドラインは、薬物療法が必要な患者を治療に誘導し、まず生活指導が患者には生活指導を勧めるよう、医学的見地から適切な方向性を明示できるようにした指針を示しました。
 

その後、尿酸トランスポーターの発見や新しい臨床研究の成果、昨今のエビデンスを重視する医学の発展も鑑みて改訂作業が行われ、2010年に第2版が刊行されました。その付録には「患者からみた『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン(第2版)』」と題した日本医学ジャーナリスト協会副会長の松井宏夫氏の寄稿があり、注目に値する意見があります。

 

・痛風を引き起こす可能性のある薬剤リストを掲載していただきたい。

 

・食品のプリン体含有量リスト以外に、普通1食に食べる量の中にどれくらいプリン体が含有されているかのリストもあると、よりわかりやすい。

 

・痛風とストレスは大きく関係すると思われるが、その点での項目を加えていただきたい。

さらにいえば、日本痛風・核酸代謝学会から、『患者のための高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン』が出版されると、どんなにか喜ぶ患者は多いだろう。

と締めくくられています。
 

いずれも、ご尤もな指摘であり、私自身の課題でもあると受け止めております。

 

その後、2011年に、わが国で新規に開発された尿酸降下薬フェブキソスタット(フェブリック®)が登場したことを受け、翌2012年にはフェブキソスタットを治療体系に組み入れた追補版が発刊されました。さらに、2018年12月に『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン(第3版)』が発刊されました。
 

このように、わが国での『高尿酸血症・痛風』の診療は世界をリードする地位にあり、その影響を受けて、海外での動きも活発となり、欧州では2006年に欧州リウマチ学会(EULAR)から「EULAR Evidence Based Recommendations for Gout (痛風のための証拠に基づくEULARによる推奨)」が出され、2016年にはこれを改訂しています。

また米国でも2012年に米国リウマチ学会(ACR)から「American College of Rheumatology Guidelines for Management of Gout(痛風管理のための米国リウマチ学会ガイドライン)」が公表されています。
 

痛風は病態の上では、肥満・メタボリックシンドローム・糖尿病・脂質異常症(高脂血症)などの代謝性疾患の仲間であるにもかかわらず、諸外国ではリウマチ学会が担当しています。

また腎障害や高血圧とも密接な関連があるため、一口に痛風といっても、その診療を適切に行うためには内科以外に整形外科領域におよぶ広範な総合医学的な視点が求められています。
 

本日のイントロダクションに引き続き、明日から段階的に痛風診療についてご紹介いたします。