リウマチ専門医として<リウマチ>を語る、関節リウマチの概要(リウマチ専門医の役割)

7月6日(月)

関節リウマチ(以下、RA)は、

1)多発性の関節炎と

2)関節破壊を主徴とする全身性自己免疫疾患です。

 

杉並国際クリニックの初診の方の受診動機は、

1)関節の痛み、

2)関節の腫れ、

3)関節や筋肉のこわばり、が多いです。

これは、全国的な傾向とほぼ一致しています。

 

 

わが国のRAの患者数は60万人とも70万人、有病率としては0.6~1.0%と推定されています。男女比は1:3~4で女性に多く、また20歳代から60歳代の就労可能年齢に多く発症します。そのため、社会的生産性にも大きく影響することが指摘されています。

 

有病率として推定される0.6~1.0%という数字は、とても小さい限られた数字であるという印象が持たれがちですが、この数字はリウマチ専門医が扱っている患者の割合とは甚だしく異なります。

その理由は、RAを疑うべき症状や病気をもっている患者、すなわちRAと鑑別しなければならない患者数がとても多いからです。

ですから、リウマチ診療においては除外診断のための臨床能力がとりわけ重要になります。

RAの診断基準においても除外診断の必要性に関しても記載されていますが、具体的な除外診断の対象疾患は明記されていません。

2010年ACR/EULAR RA分類基準の別の問題点として、鑑別診断が各自に委ねられていることが挙げられます。

リウマチ診療の現場ではRA以外の関節疾患(変形性関節症、乾癬性関節炎、痛風性関節炎、偽痛風など)の鑑別診断が必要です。特に変形性関節症に代表される変性性/退行性/加齢性変化はRA診療において重要な鑑別病態になります。

 

このように、2010年ACR/EULAR RA分類基準の別の問題点として、鑑別診断が各自の医師に委ねられていることが挙げられます。その理由はRA分類基準(診断基準)を活用して診療できるのはRA診療に熟知した専門医を想定しているからです。

このようなことから、RAが疑われる際には、早期にリウマチ専門医を受診し、診断確定、治療方針を決めるべきであるとされているのです。

 

ところで1987年に米国リウマチ学会(ACR)から提唱された従来のRA分類基準に立ち戻って診断基準の変遷を振り返ってみると、この分類基準は、進行したRAを診断するのには有用でしたが、早期診断には不向きでした。

RAの早期診断がとりわけ重要なわけは、発症早期から関節破壊が進行することが知られているからです。

こうした背景の中で、2010年に米国リウマチ学会(ACR)と欧州リウマチ学会(EULAR)よりRAの改訂分類基準が発表されました。この分類基準では、臨床的滑膜炎が存在しなければRAの診断に至らないことが重要な点です。

 

関節リウマチの診断のポイント(参照)は、この臨床的滑膜炎の存在の他に、リウマトイド因子(RF)や抗CCP抗体に最大3ポイントが与えられていることが注目されます。

 

参照:関節リウマチ早期診断・治療管理基準(杉並国際クリニック版)

①関節リウマチ早期診断・治療管理基準