特集:シリーズ『新型コロナウイルス罹患者の体験から学ぼう』:親子で感染 死の恐怖とSNSの中傷 ⑥

7月4日(土)

 

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症例13(その6)


第6節:「検査で陽性が出てからバイトに行った」    

などの誤った情報もあった

 


東京に住んでいる娘から聞かされて初めて知ってネットで調べたら、これはまずいなって。もうすでに(入院中で)部屋は別々で顔を合わせることはできなくて、LINEや電話でやり取りしていたんですけど。なんでいちばん大事なところを報告しないのかって、いきなり怒ったんですけど。もう言っても仕方ないですから。

 

投稿見てみると、いいこと書いている人は誰1人いなくて。なかには「コロナって分かっているのになんで出かけたの」とか、「東京へ遊びに行ってうつされたんだろう」とかいろんなひぼう中傷があって、それを息子も見たもんですから。かなり傷ついてまして。「死ね」まで言われましたからね。

 

何かにつけてああいう批判とかあるのは知ってましたけど、いざ自分がそういう立場に立ってみると、やっぱり何も知らないわけですよね。投稿したり文句を言ったりする人。何好きなこと言ってんだって。

本当の事情知らないくせに何言ってんだ、このやろうって。

芸能人だと弁明する場所とかある(コメント1:釈明する場所がある、というより、半ば強制的に釈明をさせられる場所がある、と受け止めておくことも必要なのではないでしょうか。一般人は、釈明しようと思えば、いろいろな方法で釈明の方法は残されているのだし、公衆の面前やメディアで釈明を強要されることはないのですから。)ので、一般のわれわれもそういう場所があったら、出て行って釈明したいなという気持ちにもなりましたね。


取材を受けることで誤解を晴らしたいと考えたという男性。
(コメント2:純朴な方であることがうかがわれます。情の熱い父親でもあります。ただし、誤解を晴らすことを目的として取材を受けても、狙い通りにはならないことがありうるので心配です。ただし、多くの人々にとっては貴重な資料になることは確かです。)
長男は今も入院している

 


息子は「学校に行けない」みたいになってまして、これはどうしようかって。大学ともやり取りしたけど何も応じてくれなくて。「彼はうそをついていない」みたいなことをホームページなりで言ってもらえれば、また変わったのかなと思います。その交渉もしたんですけど受け入れてもらえなくて。

 

娘がまとめたお願い文を学長に送ったんですけど、大学がどう動いてくれるのか。大学がまだ始まっていないんですけど、再開されて学生が通うようになったときに本人は負い目を感じていくと思うんですよ。後ろ指さされているような気にもなると思うんです。


犯人捜しみたいな感じで学生の間で騒がれると彼の居場所がなくなるので、それがいちばん心配しているところです。

 

(4月22日取材 仙台放送局 平山真希)

 

コメント3:

息子思いの父親であり、家族思いの娘さんをお持ちであることが伝わってきました。

しかし、私は、東京で就活を澄ましてきたという息子さん自身の主体的行動について、より詳しく報道してほしかったと思います。もし大学を卒業して社会人になっていたとしたら、ご本人自身でどのように行動されていたのでしょうか。

 

先日、ほぼ半年ぶりで、ようやく郷里の水戸へ帰省することができました。

しかし施設入居中の老母に逢うことも叶わず、直接施設に荷物を届けに行くことも許されず、託送のみが許可されました。

市街での人影はまばらで、店舗での予防措置もかなり徹底していました。特に、喫煙者は皆無でした。これと比較してしまうと、人だかりと無防備、あるいはわずかに存在する傍若無人の様相を呈する高円寺界隈とは全く別世界です。

 

この父子の命に別条がなかったのは幸いなことです。世間は時には厳しく、またときにはとても暖かいものです。世間の同調圧力によって、今にも窒息しそうな人々が多数存在していることも確かなことです。

しかし、命がけで他者を守っている人々も少なくはありません。そして熱しやすく冷めやすいのが日本人の特質の一つであるという人もいます。このたびの経験を教訓として、互いに許し合い、支え合って、より確かな、相互信頼が可能な未来を築き上げていきたいものです。

 

<この項終わり>