特集:シリーズ『新型コロナウイルス罹患者の体験から学ぼう』:親子で感染 死の恐怖とSNSの中傷 ③

7月1日(水)

 

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症例13(その3)

第3節:ひどかったせき 死の恐怖さえ感じた 

 

最初の発熱から8日後、PCR検査を受けた男性。この頃からひどくなっていたのがせきだったという

 

もう話しながらせきが出る感じで。電話の向こうの保健所の方も「大丈夫ですか?大丈夫ですか?」って、せきはひっきりなしに出てた。呼吸が苦しくなるようなせき(註1:気管支炎から肺炎に移行しているものと思われます)。1回出ると何回もこう10回とかそのくらい何回も、げほげほ、げほげほ出る感じ。


特に夜寝る時はせきで目覚める。あおむけになってると出やすくなる感じ(註2:起きていた方が楽なことがあります。起坐呼吸と言って、気管支喘息や心臓喘息でも特徴的にみられる症状です。)で、横向きになって寝たりとか。腹筋がこらえられなくなって、ちょうどみぞおちのあたりの腹筋がつりそうな感じにもなって、もう本当に苦しかった覚えがありますね。


腰もかなり痛かった。ずっと寝てたせいもあるんでしょうけど、立って歩けないくらい、つえついてよぼよぼって歩くようなおじいちゃんのような感じで歩いてましたね。このまま呼吸困難になったら、呼吸できなくなったらどうなるんだろうなって思ったこともありました。もうそのまま死ぬんじゃないかなと、そこまで思ったことありました。

息子に「もしせき止まらなかったら救急車呼んでくれよ」とまで言ったような覚えがあります。

 

検査の翌日に陽性と判明し、男性は4月10日に入院した
入院したその日の夜からアビガン投与と吸引薬、オルベスコっていうやつを処方(註3:この時点では最新の医療情報に基づく処方だったと思います。オルベスコ®は気管支喘息患者に処方される吸入ステロイド薬で、この方は喘息様の症状も呈していたため有効な処方であったと思われます。)されました。

(オルベスコの)吸引は1日3回、1回が2プッシュずつ。私はこの吸引薬がいちばん嫌(註4:薬の好き嫌いを言っている場合ではないことを認識していらしたのだと思います。一番嫌いな薬が一番良く効くのに拒否されるという日常診療上の経験をしているのは私だけではないと思われます。)で、逆にむせてせきが出てくるんですよ。

すーって吸い込んだときに本当は息5秒から10秒くらい止めなきゃいけないんですけど、その間にむせちゃって。すぐには効かなかったような気がするんですけど、徐々に効いていって、知らないうちに楽になっていたというか…。

せきがだんだん、腹の底から来るようなせきじゃなくなってきました。

 

<明日へ続く>