電解質異常からみた内分泌疾患、電解質過剰症No1

6月25日(木)
第4週:神経病・内分泌・代謝病    


高Na血症と高K血症と様々な内分泌異常

高ナトリウム血症
高ナトリウム(Na)血症は、水バランスの破綻によって起こります。生体にはそのための防御機構として、口渇感による水分摂取量増加とバゾプレシン(AVP)分泌機構による腎での水排泄低下がもたらされ、体内に水を貯留することでNa濃度は希釈されて高Na血症は改善されます。
高Na血症を来す代表的内分泌疾患である尿崩症は、AVP分泌または作用が症が障害される疾患であるが、口渇感の障害または水摂取困難な状況を伴う場合には顕著な高Na血症を生じます。

高Na血症の病態鑑別のためには尿浸透圧の測定による病態鑑別が有用です。
・尿浸透圧が高い場合(≧600mOsm/㎏・H₂O):
腎以外からの水分喪失、浸透圧性利尿
・尿浸透圧が低い場合(<300mOsm/㎏・H₂O):
尿崩症
・尿浸透圧が中間の場合(300~600mOsm/㎏・H₂O):
浸透圧利尿、部分的尿崩症

口渇感の障害:成人において最も多い原因は、高齢者で水を摂取できない状況下(寝たきり・認知機能障害等)での脱水です。この場合、感染症が誘因となることが多く、また意識障害を伴うことがあります。下痢、嘔吐ならびに多尿による脱水の有無の確認とともに、血糖や尿糖の測定が必要です。
尿崩症
    診断は、高張食塩水負荷試験と水制限試験によります。
また中枢性と腎性の鑑別にはAVP負荷試験を行います。
中枢性尿崩症
・特発性尿崩症(リンパ球性漏斗下垂体後葉炎、IgG4関連下垂体炎、
多発血管炎性肉芽腫症)
     ・続発性中枢性尿崩症
腎性尿崩症
・薬剤性(リチウム内服)
・高カルシウム血症
無飲性尿崩症
     抗Nax抗体の存在および脳弓下器官(SFO)の自己免疫機序による障害が原因です。

高カリウム血症
高K血症は様々な病態で生じます。まず、腎機能が正常であるにもかかわらず尿中K排泄低下がみられる場合はアルドステロン作用不全が原因であると考えられます。多くの病態ではNa喪失による低血圧を伴います。しかし、偽性低アルドステロン症Ⅱ型は、Na吸収亢進のため高血圧となります。各病態の把握のためには、高レニンか低レニンか、また、高アルドステロンか低アルドステロンかで考慮すべき疾患を鑑別することができます。

高レニン・高アルドステロン性
偽性低アルドステロン症Ⅰ型(PHAⅠ型)、間質性腎炎・尿路閉塞、
薬剤性(MR拮抗薬、ENaC-I)
高レニン・ 低アルドステロン性
・アジソン病
⇒原発性副腎皮質機能低下症、先天性副腎皮質低形成
・副腎水酸化酵素欠損症(21、18)
⇒コルチゾール合成障害+ミネラルコルチコイド過剰
・薬剤性(ATⅡR拮抗薬、ACE・I)
低レニン・低アルドステロン性
・偽性低アルドステロン症Ⅱ型(PHAⅡ型)
・Ⅳ型尿細管性アシドーシス(糖尿病に合併)
・薬剤性(β遮断薬、NSAIDs)