ロシア語旅行:COVID-19と世界最高峰の血栓学理論No1

6月16日(火)


«Внутрисосудистое свертывание крови при COVID-19 определяет весь ход болезни»

 

"COVID-19での血管内凝固が疾患の全経過を決定する"

 


5 Июня 2020

2020年6月5日

 

Беседа с академиком А.Д. Макацария, крупнейшим специалистом в области клинической гемостазиологии

 

臨床止血学の最高峰の専門家であるアカデミアA.D.マカッツァリア氏にインタビュー

 

 

Сегодня известно, что при COVID-19, в первую очередь, страдает свертывающая система крови. Вот почему у всех умерших от осложнений новой коронавирусной инфекции находят большое количество тромбов. Как это объяснить? Почему это заметили не сразу? Каким образом и почему это происходит? Можно ли предотвратить развитие такого осложнения? Об этом – наш разговор с А.Д. Макацария, академиком РАН, одним из крупнейших в мире специалистов по изучению нарушений свертываемости крови, создателем Школы клинической гемостазиологии, заведующим кафедрой Сеченовского университета. Александр Давидович и его ученики активно сотрудничают с университетом Сорбонны, Венским, Римским, Миланским и Тель-Авивским университетами, Технион в Хайфе. Под его руководителем защищено 150 кандидатских и докторских диссертаций. Автор более 1200 научных трудов, в том числе 40 монографий.

 

今日では、COVID-19ではまず血液凝固で苦しむことが知られている。だから、新しいコロナウイルス感染症の合併症による死亡者はすべて血栓が多いことが判明している。どのように説明するのか?なぜすぐに気づかなかったのか?どのようにして、なぜそうなっているのか?このような合併症を防ぐことは可能なのか?これについて - A.D. マカッツァリア、ロシア科学アカデミーの学者、血液凝固障害の研究における世界最高の専門家の一人と私たちの会話、臨床止血学の創始者でSechenov 大学(註1)の学部長アレクサンダー・ダヴィドヴィッチとその学生は、ソルボンヌ大学、ウィーン、ローマ、ミラノ、テルアビブ大学、ハイファのテクニオン大学と積極的に協力している。彼の指導の下、150本の博士論文・博士論文が査読批評に耐えてきた。40冊のモノグラフを含む1200冊以上の科学作品の著者である。

 

(註1)

Sechenov 大学 モスクワ国立第一医科大学(I.M. Sechenov First Moscow State Medical University (Sechenov University))のこと。1758年設立の同大は,工学・技術・IT系分野との連携・融合を含めた学際的・先端的医学研究を推進しており,ロシア国内トップレベルの医科大学として知られている。

新潟大学医学部において,四半世紀にわたる日露医学交流の実績を有しており,特に近年は文部科学省「大学の世界展開力強化事業」等の支援を受け,連携事業を強化している。このたびの両大学の協定締結により、学生の相互交流や研究交流の発展が期待されている。

 

 

– Александр Давидович, в последнее время во всем мире появляется всё больше сообщений о том, что при COVID-19 страдает свертывающая система крови. Так ли это, и если да, то чем вы объясняете этот феномен?

 

- アレクサンダー・ダヴィドヴィッチ:最近は世界中でCOVID-19が血液凝固系に苦しんでいるという報告が増えています。これは本当なのか、もし本当ならば、この現象をどのように説明するのですか?

 

 

– Безусловно, это так. Более того, хочу сказать, что практически нет такой инфекции (вирусной или, тем более, бактериальной), которая бы не влияла на свертывание крови. Доказательство тому – учение о сепсисе и септическом шоке как универсальной модели ДВС-синдрома – синдрома диссеминированного внутрисосудистого свертывания крови. Степень тяжести тромботических нарушений зависит от особенностей возбудителя и организма-хозяина (иммунная система, система гемостаза, наличие сопутствующих заболеваний и т.д.).

 

- 間違いなくその通りです。 また、血液凝固に影響を与えない感染症(ウイルス性、あるいはむしろ細菌性)は実質的には存在しないと言いたいところです。その証拠に、DIC症候群(播種性血管内血液凝固症候群)(註2)の普遍的なモデルとしての敗血症(註3)・敗血症性ショック(註4)理論があります。血栓性疾患の重症度は、病原体と宿主生物の特性(免疫系、止血系、併存疾患の有無など)に依存します。

(註2)

DIC症候群(播種性血管内血液凝固症候群)/ここで播種(はしゅ)とは、元来は畑に種をまくことを意味する。この場合、種に相当するのが血栓です。DICは、血管内に無数の血栓がばらまかれた、凝固の反応が非常に高ぶった状態の病気を指す。「汎発性(はんぱつせい)血管内凝固症候群」と呼ばれることもある。
DICは元々、がん、白血病、感染症(この3種類の疾患がDICの約3/4を占める)などの病気(基礎疾患)にかかっている患者に生じる。このような基礎疾患が昂じてくると、がん細胞や白血病細胞の表面に凝固反応を開始させる組織因子が現れて、通常の止血時と同様の現象が起きて、全身に血栓が生じる。感染症の場合では、感染が全身の血管や組織に広がった時、「敗血症」と呼ばれるが、細菌感染症によってこのような状態に至った場合は、細菌の出すエンドトキシン(発熱物質)などが白血球の一種、単球やマクロファージの表面に組織因子を生じさせて凝固反応が始まり、血管内皮細胞の抗血栓性も低下し血栓が生じる。DICでは、このように基礎疾患が悪化して、全身の血管に小さな血液のかたまり(微小血栓)が無数に生じる病態である。細い血管が詰まるため、血流が妨げられて、酸素や栄養などが組織に届かなくなり、腎臓や肺などの臓器障害を起こし、生命に重大な危険をもたらす。

DICの病態は、さらに血栓が全身に継続して起こり、凝固反応を抑えようとして凝固制御因子のアンチトロンビンがトロンビンに結合し、中和する。また、できた血栓を溶かそうとしてプラスミンが活発に働くようになる。これらの反応が同時に、そして無秩序に全身の血管や組織で進行する。

この結果として、(1)血栓の元になる血小板や凝固因子が体内で大量に消費されるため、それらが量的に著しく減少して、非常に出血しやすくなる。(2)アンチトロンビンも大量に使われるので欠乏してしまう。その結果は凝固反応がさらに進み、血栓ができるのを止める機能が低下し、血栓を作り出す傾向が高まる。(3)プラスミンは血栓を溶かそうとして活発に働き始めるため、本来出血を止めるためにできた血栓をも溶かしてしまい、出血傾向が強まる。

DICは、このように血液を固める凝固作用と固まった血液を溶かす作用(線溶)が同時に無秩序に起こるため、極めて治療の難しい病態の一つである。臨床的には、多くの臓器に微小血栓が無数に生じることやショックのため、組織に血液が行き渡らず虚血性の壊死を起こし、多臓器の循環障害による機能不全を生じる。これに出血症状が加わり、その結果として、致死的影響を体に生じることになる。治療としては、血栓傾向を改善すること、出血傾向を改善することの2種類の相反した対応が必要となる。DICは予後の悪い死亡率の高い疾患であるため、早期診断、早期治療が救命のために重要です。

以上のことは、COVID-19対策において極めて重要なカギになることが次第に明かになってきています。

 

(註3)

敗血症 / 1990年代初めまでは,敗血症は血液中に細菌または細菌毒素が存在する重症感染症ととらえられていた。しかし、今日では,血液中に病原体が同定されるか否にかかわらず,感染症によって引き起こされた全身性炎症反応症候群<systemic inflammatory response syndrome:SIRS>の状態を敗血症と定義する。

以前は細菌感染が主でしたが、COVID-19のようなウイルス感染においいぇも敗血症や全身性炎症反応症候群(SIRS)の発生を未然に食い止めることができるか否かが、生命予後の鍵を握っていることが明らかになってきました。

 

(註4)

敗血症性ショック/ 敗血症のうちでも臓器障害,臓器灌流低下, 低血圧を伴う場合を重症敗血症という。この状態からさらに適切な輸液を行っても低血圧が持続する場合を敗血症性ショックとする概念が広く受け入れられている.SIRSは各種炎症性サイトカインによる高サイトカイン血症をその本態とする敗血症性ショックは血液分配性ショックに分類され,体血管抵抗の低下を主体とし,心機能低下,血管 透過性亢進などが関与している。             

この敗血症性ショックをもたらすほどの高サイトカイン血症を、最近ではサイトカイン・ストーム(サイトカインの嵐)と呼ばれるようになってきました。