月曜日:中国語旅行::スマート香港からクール台湾へ、新型コロナ肺炎の治療生薬発見No.1

6月15日(月)



ポストコロナの時代は、政治・外交・経済・文化のみならず医学の領域においても、日台の関係が親密になるものと思われます。そこに米国が積極的な支援を強化することになるでしょう。私自身も、今回のコロナパンデミックを経験しなければ、最も身近な親日的隣国の存在を忘れたままでいた可能性があります。台湾からは学ぶべきことがたくさんあることに気が付きました。

 


台湾の伝統医療ガイドライン


台湾は,3月10日に台湾国家中医薬研究所(註1)・蘇奕彰(註2)所長の作成したガイドラインがあります。
蘇奕彰教授の自然志向の医療をめざす姿勢には共感できることをたくさん見出すことができました。


(註1)

国家中医薬研究所(通称、中医所)とは、中華民国(台湾)国立の伝統中国医学の研究所。1963年に設立され、現在は衛生福利部配下にある。台湾最大の中医学の研究所である。


(註2)

蘇奕彰 プロフィールを原文から紹介します。
蘇奕彰教授,本校1990年中醫學學系畢業,1995年取得中醫研究所醫學博士學位。研究生期間,中醫學師承馬光亞與黃維三等國際知名教授,西醫受教於藍忠亮教授。其後,專注在癌症、免疫風濕、肝膽及心腦血管疾病,及急重症之中西醫結合診療研究,臨床成效頗受推崇。
蘇奕彰教授は1990年に中医学科を卒業し、1995年に中医学研究所で医学博士号を取得しました。 中医学の大学院では、馬観雅、黄偉山など国際的に有名な教授に、西洋医学では蘭中良教授に師事しました。 臨床研究では、がん、免疫リウマチ、肝胆、循環器、脳血管疾患、急性・重症疾患における西洋医学の統合などを中心に研究し、かなりの尊敬を受けています。

 

 

    教育工作上,自1995年起陸續擔任過中醫基礎學科主任、中醫學系系主任、中醫藥展示館館長、中醫研究所所長、中醫系所主任,並參與國家中醫醫政、考試與立法事務。推動中醫現代教育課程與教學改革,召開多次全國中醫學系教育會議,整合以臨床問題為中心之教、考制度,建立整合中西醫學之中醫研究生教育與師資養成制度,推動中醫現代教考訓用一體,並成立台灣中醫醫學教育學會。


1995年より中医学基礎医学科長、中医学科長、中医学展示館館長などを歴任。 漢方医学の医学、政治、試験、立法にも携わっています。 中医学の現代教育カリキュラムと教育改革を推進し、中医学科の全国教育会議を数回開催し、臨床問題に基づいた教育を統合しています。また、中医学と西洋医学の大学院教育と教員養成の統合システムを確立し、現代中医学の教育、試験、訓練、応用の統合を推進し、中医学専門職の発展を推進しています。台湾中医薬教育協会を設立しました。

 

 

    學術上,蘇教授致力於中西醫整合之臨床研究與跨領域學術合作工作,如2004-2009年與台大兒科呂鴻基榮譽教授共同召開19場中西醫對話論壇,以及2005-2011年國際簡帛醫藥文獻研討會、2013年醫家與史家對話國際會議、2014年傳統與現代醫學整合國際論壇。最受國際推崇的學術成果是採用心理測量方法研究中醫體質學,並完成全球第一份中醫科學量表(Body Constitution Questionaire,BCQ),僅量表發展部分就有5篇國際論文發表。蘇教授以豐富之中醫體質量表發展經驗應用於中醫學系之招生選才工作,深獲教育部大學招生評鑑委員之讚賞。


学術的には、2004年から2009年まで台湾中医学教育協会(TCME)との共同研究など、中医学と西洋医学の融合に関する臨床研究や学際的な学術協力に力を入れています。 NTU小児科名誉教授の呂洪基博士は、19の中医学・西洋医学対話フォーラムと2005-2011年の国際単純化フォーラムを共同開催しました。医学文献会議、治療家と歴史家の対話国際会議2013、伝統医学と現代医学の融合国際フォーラム2014 最も国際的に評価されている学術的業績は、中医学生理学の研究に心理測定法を用い、世界初の科学的なTCM尺度(TCM Scale)を完成させたことです。 最も国際的に評価されている学術的業績は、中医学生理学の研究に心理測定法を用い、世界初の中医学科学的尺度(TCMスケール)を完成させたことです。 体質問診票(Body Constitution Questionaire:BCQ)(註3)、尺度開発だけでもこれまでに5本の国際論文を発表しています。蘇教授の中医学生理学的尺度の開発における豊富な経験は、中医学科の学生募集に生かされています。 台湾中医学会、中医振興財団の会員でもあります。

 

(註3)

体質問診票(Body Constitution Questionaire:BCQ)
この問診票は、杉並国際クリニックにて個別の漢方処方の相談に応じる際に参考になりそうですので、機会を改めてご紹介したいと思います。

 

 


2012;19(5):234-41.
doi: 10.1159/000343580. Epub 2012 Oct 18.
BCQ-: A Body Constitution Questionnaire to Assess Yin-Xu. Part I: Establishment of a Provisional Version Through a Delphi Process
Jun-Dai Lin  1 , Li-Li Chen, Jui-Shan Lin, Chih-Hung Chang, Yi-Chia Huang, Yi-Chang Su

   蘇教授目前擔任國家中醫藥研究所合聘研究員、台灣中醫醫學教育學會理事長、中華醫藥促進基金會董事長、台灣中醫醫史文獻學會理事長。近期投身健康農業,以中醫崇尚自然之觀念推展健康農漁產業,藉由以自然方法強化植株體質,停止農藥與化學肥料之使用,讓人體減少有害物質之進入,達到以預防替代治療的健康目標。
現在、国立中医学研究所共同研究員、台湾中医薬教育学会理事長、中医薬振興基金会

 

理事長、中医協理事長。 中国医師会会長、台湾中医学史文学協会理事。 最近では、自然を標榜する漢方をコンセプトに、植物の体格を自然な方法で強化する健康農法を提唱し、健康農水産業の振興に力を注いでいます。 農薬や化学肥料の使用をやめて、人体に入る有害物質を減らし、治療ではなく予防をするという健康目標達成を目指しています。

 

 

中国,韓国のガイドラインに比し,台湾のガイドラインは予防の処方に関して具体的な薬方が記載されています。それによると,健康な人で地域感染がなければ,食事・運動など健康を維持する努力を続けるように書かれています。しかし,慢性疾患患者や免疫機能低下がある人,職場で不特定多数の人と接触しなければならない人は,疾病や個人の体質に合わせ体質調節の処方を作成する必要がある,とした上で,具体的な処方を挙げています。

 

桂枝加黄蓍湯から芍薬を去り,荊芥・桑葉が加わった処方で,ウイルス防禦のため体表を固める処方として例に出されています。桂枝加黄蓍湯(桂皮、生姜、芍薬、甘草、大棗+黄耆)の構成生薬のうちシナモン・スティック、しょうが、ナツメの4味は食材としても入手可能です。甘草は味噌や醤油その他甘味料にも使われています。

 

この中で『黄耆』という生薬は、強壮・疲労回復促進作用、利尿作用、インターフェロン誘起作用などを発揮してくれるので、高温多湿でマスク着用を強いられる今年の梅雨期には大きな助けになることでしょう。動いてもいないのに肌のしまりが悪くジメジメした汗が自然に出てくる状態(免疫抵抗力を著しく損ないます)を改善するので、大分過ごしやすくなります。当クリニック推奨のコロナ対策第一弾のベースとして『玉弊風散』(「黄耆」、白朮、防風)を毎日服用している方が、当クリニックでは大多数なので、概ね旬の季節に間に合ってよかったと思っています。

 

また、台湾のガイドラインでは、桂枝加黄蓍湯にない、「荊芥」・『桑葉』を加えていますが、これにも根拠があります。「荊芥」には鎮痛・解熱(体温降下)作用、抗炎症作用、また『桑葉』には鎮咳・去痰作用、鎮痛作用、抗炎症・抗アレルギー作用、インターフェロン誘起作用、血圧・血糖降下作用が証明されています。『桑葉』に関してはコロナ対策第二弾の<生薬マスク>の構成生薬の一つとして活用しています。

 

医療スタッフなどハイリスクの人向けの予防処方として,先ほどの処方に「薄荷」,「板藍根」,「魚醒草」を加えたものが推奨されています。台湾においては板藍根がよく用いられます。C型肝炎治療薬や風邪薬として幅広く用いられている生薬です。魚醒草はドクダミの全草で,わが国では「十薬」の名で知られています。これは清熱解毒の薬であり,台湾では多用されています。薄荷も発汗を促す作用があります。
台湾のガイドラインの特徴はエキス剤と生薬末の組み合わせも示されていることであります。

台湾は生薬末を組み合わせて処方を作製します。これは煎じ薬ほど服用に手間がかからず,急な治療対応が可能です。

そして,❶ ウイルス潜伏期,❷ 発病期(❷A:ウイルス増殖期,❷B:サイトカインストーム期),❸ 回復期に分けてそれぞれの処方およびエキス剤を示しています。西洋医学の医師でも理解できるように伝統医療の表現を少なめにして,予防の段階から記述してあるのも特徴です。