5月30日(土)特集:シリーズ『新型コロナウイルス罹患者の体験から学ぼう』症例6:故郷に戻れず逝った父 ⑥

症例6(その6)

 

第6節:「お母さんは大丈夫か」            

 

妻のことばかり心配していた~妻と息子の話~

 

男性の妻も感染が確認され一時入院していたため、万が一感染を広げることがあってはならないと、東京に行くのを控えていた。

この日、妻もトランシーバーで夫に語りかけた

息子:看護師さんから「お母さまも声をかけたいんじゃないですか」って言っていただいて。でもトランシーバーですから、どうするのかなと思ったら、「病院に自宅から電話をかけてくれたら、その電話の声をトランシーバーにのせてお話できるようにしますよ」と言ってくださって。

本当にそれはうれしくて。すぐ母に電話をして、こういう提案があるから、ぜひお父さんに最後の言葉を伝えてほしいと言いました。

 

妻:本人に聞こえてると信じて話をしました。今まで幸せだったこととかね、長い間、本当にありがとうっていうことと。あとはね、息子と頑張ってやっていくから心配しないでって。もう、頑張らなくていいよって。

49年なんです、ことしね。

「金婚式だね」ってお正月に言ってたら数えたら違ってたんですよ、来年だった。でも、間違えてやればよかったって。

もう、とにかく優しいね、怒った顔あまりないので。怒ってた時の顔を思い出そうとしても思い出せないんですけど。

入院したときも私が電話すると、「お母さんは大丈夫?」って、「感染してない?」って毎回聞くのね。「私は大丈夫だから、お父さん頑張って治してね」っていう会話ですよね。

だから私が感染したことは全く知らない。もし私が感染したのを知ったら、つらい思いすると思うんですよ。

自分のせいで私がかかっちゃったって思うとね。だから今でも、知らなくてよかったなって思ってます。

 

コメント:

言葉がございません。合掌。