5月29日(金)当クリニックでの循環器診療No5

第5週:血液病・循環器        


下肢閉塞性動脈硬化症(末梢動脈疾患)診療に欠かせない超音波検査

 

近年、人口の高齢化、糖尿病や透析患者の増加に伴い末梢動脈疾患(PAD)が増加傾向にあります。PADは冠動脈と脳血管を除く末梢動脈に生じる閉塞性疾患を指します。その成因としては動脈硬化症の他、バージャー病や膠原病など非動脈硬化疾患もあります。

 

一般的に下肢の動脈硬化症を閉塞性動脈硬化症(ASO)と呼びますが、下肢に生じるPADは、ほとんどがこのASOです。PADは他の動脈硬化性疾患(冠動脈疾患・脳血管疾患)と合併することが多く、合併例では予後不良であることが示唆されます。

 

検査としては足関節血圧測定検査が最も簡便かつ有用であるとされます。12㎝幅のマンシェットを使用して、足背動脈と後脛骨動脈の血圧を測定します。一般的には上肢の血圧より若干高いのが正常です。

PADの一般的スクリーニング法である足関節上腕血圧脾(ABI)測定で0.9未満の場合をPADと定義します。その場合のPADの有病率は1~3%程度とされます。

 

このABIは足関節血圧と上腕血圧の比として下肢動脈硬化一般の指標としても用いることができます。ABI=足関節血圧/上腕血圧=0.9~1.3が正常範囲とされています。

 

症状やABI検査などからPADが疑われた場合には精密な画像検査を行う必要があります。とりわけ下肢動脈エコーは非侵襲的で最も汎用されている検査です。

 

動脈の狭窄・閉塞の部位がわかるばかりでなく、狭窄部の動脈血流速度を測定し、生理的に有意な狭窄であるかどうか、逆に言えば、病的な血流障害が起きているのかどうか、などを判断するうえでも極めて有用な検査です。

 

こうしてPADの診断がついた場合には、直ちに全身性動脈硬化疾患のスクリーニングを行うことが大切です。その理由は、まずPADは他の動脈硬化性疾患を合併することも多いからです。さらに、これらが生命予後を規定することも多いからでもあります。

 

無症候であっても心エコー検査や頸動脈エコーを行います。それで異常が疑われれば冠動脈造影や脳血管造影検査のために検査紹介をすることになります。

 

過去において、PAD検査によって冠動脈硬化症や脳動脈硬化症を早期に発見でき、適切な治療ができたというケースは枚挙に暇がないほど経験しています。

 

このように超音波検査は“21世紀医療の聴診器“と言ってよいほど日常診療において活躍しています。こんかい紹介した、下肢動脈エコー、心エコー、頸動脈エコーはすべて一台の超音波診断装置(汎用機種)で賄うことができます。当クリニックの超音波診断装置は、超パルスドプラ―法機能もあるため、動脈血流速度を評価することが可能です。