5月25日(月)<シリーズ> 新型コロナ解説:私が推薦する わかりやすいガイダンスNo7

東京歯科大学市川総合病院循環器科の大木先生は、新型コロナウイルスに関して、とてもわかりやすい解説を掲載されています。

御経歴からすると私より大分若手であるようですが、見習いたいと思いました。


私は、同市内にある昭和学院短期大学の客員教授として10年ほど勤務していたことがあり、この病院の前は数えきれないくらい通過していたのを懐かしく思い出します。


『知っておきたい新型コロナウイルス感染症COVID-19』

 

【新型コロナウイルスの診断】

新型コロナウイルス感染症には特有の症状がないので、この症状があれば感染していると断定できる症状はありません。

つまり病歴から感染を断定することはできず、ウイルスが体内にいることを証明して初めて診断可能になります。

ウイルスが体内にいるかどうか調べるには、直接ウイルス自体を見つける方法と、ウイルスが体内に入った時の身体の反応を利用した間接的な方法があります。

 

直接的な方法では、ウイルスが体内のどこに潜んでいるかによって、検査の精度が落ちることもあります。

炎症が起きているところから検体を採取して検査するのが効率的です。

新型コロナウイルスは血中、喀痰中に多く潜んでいると考えられるので、血液や痰を採取して、中にウイルスがいるか検査します。

体内には数億という数のウイルスがいると思われますが、少量の血液や痰の中にはごくわずかしかおらず、少なすぎて検出することができません。

そこで取り出した検体にポリメラーゼという特別な物質を加え、鎖のように長いウイルスの遺伝子を増殖させてから検査します。

この方法をポリメラーゼ鎖反応(PCR)と言います。

PCRによってウイルス遺伝子が多くなり、装置で検出されれば検査陽性となります。検出されなければ陰性と言います。

 

間接的な検出方法は、身体にウイルスのような異物が入った時に免疫機構が働くことを利用します。

ウイルスが体内に入ると、それを攻撃する目的で抗体というものが作られます。

インフルエンザにはインフルエンザ抗体、コロナウイルスにはコロナウイルス抗体のように、病原体によってできる抗体は異なるので、新型コロナウイルス抗体が検出されれば、新型コロナウイルスが1度は体内に侵入したことを意味します。

抗体は病原体が身体に入ってから数日で検出されるようになり、多くの抗体は数ヶ月、数年血中に存在します。

ただし、抗体の存在は免疫反応を生じたという事実のみを示すので、治癒しているかどうかは別になります。抗体があるからといって治ったとは限らないのです。

新型コロナウイルス感染症は無症状の場合もあることを考えると、そもそも治癒とは何を意味するのかさえ不確定な、とてもやっかいな感染症です。

 

 

コメント:

PCR検査でわかること、わからないこと


コロナパンデミックを機に、「PCR検査」という単語がわが国で市民権を得ることになりました。

しかし、PCR検査には「定性検査」と「定量検査」があることはあまり知られていないようです。


ウイルスのDNAは目では見えないので、定性検査では、特殊な装置を使って目的とするDNAを増やすという操作が必要です。

目で確認できれば陽性、確認できなければ陰性と判定します。

ですから新型コロナウイルスの診断には、通常のPCR法で十分であるとされてきました。


一方、どれくらいウイルスがいるか(定量)を測定できるリアルタイムPCRという方法もあります。

PCRの1サイクルで目的とするDNAは2倍になるが、増やしたDNAがある量に達するのにPCRを何サイクル回したかがわかれば、最初に存在するDNAの量を逆算して推定することができます。


ウイルスが感染した時に症状がでるには、一定以上のウイルス量が必要だとされています。

新型コロナウイルスについても、海外からリアルタイムPCR法でウイルスの量を測定した研究が数多く報告されています。

これらの研究によると、症状の発症前後が最も多量のウイルスが検出され、感染から1週間を境にウイルス量は急速に減少することが示されています。


 
従来のウイルスの診断は、元来、綿棒でのどをぬぐってとった液体などからウイルスを分離して確認していました。

細胞を培養中のフラスコ内に、ウイルスが含まれていると思われる検体を加え、細胞が変化するのを顕微鏡で観察するのです。

煩雑なので、簡便なPCR法がとって代わったが、感染力がある活動性ウイルスがいるかどうかは、この方法に頼らなければならないわけです。

 

PCR法では、感染力のない活動性のないウイルスも併せて検出されるので、感染する力があるかどうかは、ウイルスの分離培養の結果を待たなければなりません。


そうした原理がわかってくると、PCR法はウイルスの検出力がそれほど高くないことに加えて、本来であれば感染力を持たない隔離不要のケースであっても陽性とされ、2週間以上の隔離を余儀なくされていたことになります。

PCR法には大きな欠点があるということになります。

 

〈明日へ続く〉