5月22日(金)認知症とADLについてNo5

最後に、杉並国際クリニックで導入予定の2つのアセスメント法について紹介します。

 

MoCA-Jの特徴

日本語版Montreal Cognitive Assessment(MoCA-J)
Japanese Version of The MONTREAL COGNITIVE ASSESSMENT (MOCA-J)

Nasreddineらによって注意機能、視空間認知、記憶、注意、言語、概念的思考、計算、見当識などといった多領域の認知機能を30点満点で評価する指標としてMontreal Cognitive Assessment(MoCA)が報告され、日本語版Montreal Cognitive Assessment(MoCA-J)も報告されています。

 

MoCA-Jは主として軽度の認知機能低下を評価するツールとして活用されています。MoCA-Jでは10分程度の個別面接式で認知機能を検査します。

MoCA-Jに含まれる内容は、Trail Making、図形模写(立方体)、時計描写、命名、注意(順唱・逆唱・Target Detection・計算)、言語(文の復唱・語想起)、抽象的思考、遅延再生、見当識の8項目からなり、それぞれの正誤を判定して30点満点で採点します。

 

教育年数が12年以下の場合には検査終了後に1点を加えます。
 MoCA-Jは、26点以上を健常範囲とする報告がなされています。

そこで、25点以下で軽度認知障害(MCI)のスクリーニングに有効です(感度93%、特異度87%)。

MoCAによる評価では軽度の認知機能低下をスクリーニングすることが主たる目的となり、MMSEやHDS-Rでは判定が困難であるMCIの検出に適しているとされます。ただし、スクリーニングが主となるため、得点の変化による認知機能改善の有無を判断するためにアウトカム指標として用いる際は、慎重に解釈する必要があります。

 

DASC-21の特徴

The Dementia Assessment Sheet for Community-based Integrated Care System-21 items (DASC-21)

 

認知症による障害の全体を包括的に評価することを認知症の総合アセスメントと呼びます。しかし,認知症に気づき、認知症であることを診断するためには、まずは「認知機能障害」と「生活機能障害」を評価することが重要です。DASC-21(ダスク-21)という評価法は、原則として、規定の研修を受けた専門職が高齢者の「認知機能障害」と「生活障害」を把握し、認知症を検出し重症度を評価するアセスメントツールとして、適切な内的信頼性と併存的妥当性および弁別的妥当性を有することが証明されています。DASC-21は、簡単で短時間に「認知機能」と「生活機能」の障害を評価することが可能です。また、暮らしに密着したわかりやすい項目であることから、認知症の疑いがある方やご家族にも理解しやすく、認知症の人を支援する専門職とご本人や家族との「共通言語」として広く活用することが可能です。

 

DASC-21は導入のA,B項目と1~21項目の評価項目からなるアセスメントシートです。

• 認知機能と生活機能を総合的に評価することができる.

 

• IADLの項目(6項目)が充実しているので、軽度認知症の生活機能障害を検出しやすい.

 

• 4件法で評価しているために障害の機能変動をカバーできる.

 

• 設問は具体的であり、観察法によって評価できる.

 

• 簡便で、短時間で実施でき評価方法も単純である.

 

• 簡単な研修を受講することによって、認知症の基本的な理解と認知症の総合的アセスメントの基本的技術を修得できる.

 

• 評価結果から臨床像の全体をある程度把握することができ、かつ必要な支援の目安をつけることができる.