5月13日(水)胆道癌と膵癌:胆道がんNo3

胆道癌を疑った場合の検査手順(第3段階)

 

「胆道癌診療ガイドライン第3版(2019)」によると、胆道がんの検査手順としては3段階が提示されています。今回は最終段階の検査について説明します。

 

第3段階

 

最終段階で行われる検査は1)ERCP、2)超音波内視鏡(EUS)、3)PETなどです。

 

 

1)ERCPによる直接胆道造影は、胆管病変の水平方向進展度の詳細な診断に関して、MRCPより優れています。さらに、胆汁細胞診、ブラシ細胞診、胆管生検などが可能です。

閉塞性黄疸を伴う場合には、引き続き胆道ドレナージを行います。

 

 

2)超音波内視鏡(EUS)は、質的診断、進展度診断に有用です。

 

 

3)PETはリンパ節転移、遠隔転移診断に有用です。

 

治療方針は上記の検査結果を総合的に判断して決めていくことになります。

胆道癌のなかでも、胆管がんでは経乳頭的生検による癌の確証を得るようにします。

しかし、胆嚢がんの場合は、生検は必須ではありません。その理由は生検によって癌細胞が腹腔内にばら撒かれる(播種)のリスクを伴うアプローチは切除可能な症例では慎むべきだからです。

 

 

診断後の管理

術前胆道ドレナージについて

 

・肝切除を要しない膵頭十二指腸切除を想定する場合:

 術前胆道ドレナージの有用性を示した研究が乏しく、ガイドラインでは推奨されていません。しかし、わが国の多くの施設では内視鏡的ドレナージが行われています。

 

・肝門部胆管閉塞症例など広範囲肝臓切除を予定する胆道癌の場合:

 第一選択として、内視鏡的にドレナージを行います。この際に、CTで腫瘍の局在、進展度を評価し、想定した術式に応じて温存予定となる領域をドレナージすることが重要です。また、胆道ドレナージ後はカテーテル刺激により胆管に炎症性変化が加わり、癌の進展度評価が難しくなります。

 

以上のことから、胆道ドレナージ施行前にダイナミックCTを撮影しておく必要があります。その際、ドレナージ方法として、ガイドラインは内視鏡的経鼻胆管ドレナージ(ENBD)を推奨しています。しかし、ENBDは内視鏡的胆管ステント留置術(EBS)に比べて胆汁の体外喪失が問題になります。これを解決するために、ガイドラインは胆汁の飲用を推奨しています。

 

しかし、最近では下流側の先端が総胆管内となる内側ステントやカヴァードSEMSという技術を用いることで胆汁の汚染を防ぎつつ内瘻化を達成できるようになり、その評価は今後明らかになることでしょう。

 

ガイドラインの作成を担当しているエキスパートでさえ、実際の現場ではガイドラインを金科玉条のように順守しているわけではないということがあります。新しい試みにチャレンジする場合や、結論をだすためのデータが不足している場合は、臨床的センスや経験が必要とされているということを如実に示す例の一つだと考えます。

 

<この項終わり>