5月1日(金)呼吸器病のトピックス

2020年現在の外来診療において、重点を置くべき領域の筆頭が呼吸器疾患であると考えます。これをA.一般診療とB.専門診療にわけて概観してみましょう。

 

A.呼吸器疾患の一般診療

 

かぜ症候群インフルエンザ肺炎肺結核非結核性抗酸菌症喘息慢性閉塞性肺疾患(COPD)が重要疾患群です。

これらの疾患群はすべて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)との鑑別や合併に気を付けなければならない疾患です。COVID-19は、かぜ症候群として発症し、たちまちインフルエンザ様症状を呈し、急激に肺炎を招いて死亡する劇症例が問題になっています。

また、喘息慢性閉塞性肺疾患(COPD)を持病とする方は、こうした基礎疾患をしっかりとコントロールしておかないと罹患しやすくなるだけではなく、重症化のリスクも高いということを認識しておかなければなりません。

 

なお、喘息に関しては、花粉症湿疹(アトピー性皮膚炎・接触皮膚炎)はもとより、蕁麻疹皮膚掻痒症などを伴うことが多く、アレルギー専門医にとっては中核となる疾患群とともに、内科の全領域をも超える総合アレルギー診療が必要です。

 

 

B.呼吸器疾患の専門診療

 

間質性肺炎肺高血圧症睡眠時無呼吸症候群呼吸不全・在宅酸素療法などの疾患は、専門医による管理・治療が必要な代表的な呼吸器疾患です。

 

これらのうち杉並国際クリニックで常に注意を払っているのは間質性肺炎です。

その理由は、専門医としてリウマチ診療を行っているからです。関節リウマチは、関節や滑膜などの運動器系の疾患であると誤解している方も少なくありませんが、間質性肺炎などを含む内臓症状を呈する全身病です。

関節リウマチの診断がつけば、間質性肺炎は常に警戒しておかなければならない疾患でありうえに、関節リウマチの治療薬の主薬であるメトトレキサートの主要な副作用として間質性肺炎があるからです。

そのため、間質性肺炎の早期発見のため、診療の際には必ずパルスオキシメータ―という小型装置を用いて動脈血中の酸素分圧濃度を計測しています。

通常では96~99%の範囲ですが、93%以下で准呼吸不全、90%以下では呼吸不全と評価します。関節リウマチの患者さんの中で、たった1例ではありますが、急性間質性肺炎を発症し、呼吸不全となり、近位で在宅酸素療法を受けるに至ったケースを経験しています。

 

また睡眠時無呼吸症候群は、閉塞性(OSA)と中枢性(CSA)とがありますが、閉塞性(OSA)が大多数を占めます。OSAの新規患者が2010年で年間650万人を越え、この17年間に15倍に増加し、不眠患者数とほぼ同数になったと報告されました。

 

OSAは、高血圧糖尿病虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)心不全脳卒中慢性腎障害(特に重症例)うつ病などでさらにその頻度は増加するので、根本的な解決のためには、呼吸器専門医というより、心療内科をも加えた総合内科的アプローチにより基礎疾患のコントロールをはかることが重要だと考えます。