4月29日(水)水氣道の本質と稽古の構造および機能について(全5回)


毎週水曜日<水氣道>


第5回 『縁』の巻【日本水氣道協会の使命】
水氣道というアクアビクスにおけるマインドフルネスとは?
 
 

水氣道は参加者各人が抱える様々な健康課題の解決のための多層性の組織体です。その方法として独創的な固有の対番制度により創造し構築する人間関係を通して得られる知識や技術の複数かつ多様で協働的な共通の諸資源を活用します。

水氣道は水自体の運動慣性を利用することに加えて、集団力動を利用できるため、参加のためには、限定的な身体的・精神的強度を備えているだけで十分です。水氣道はまた参加者に対して周囲の環境との関係性を正常化する媒体を提供することができます。

水氣道は人間の関係性において苦悩する参加者にとっても一定の治癒課程を促進することができるのは、こうした水氣道の構造と機能によるものであるということができるでしょう。

 

水氣道の稽古は、水中での一瞬一瞬の体感や姿勢や呼吸に意識を集中し、“水に全身全霊を委ねることによって、水中にただ存在すること”を実感し、“今に生きる”ことのトレーニングを実践します。それによって、自己受容、的確な判断、およびセルフコントロール能力を鍛錬することができます。とりわけ、水氣道の稽古で参加者が主観的に経験した関係性の成長発展は、全人的健康の維持増進の指標として不可欠な指標です。

 

ここで全人的健康法とは、本来自然環境の構成要素である人間に賦与されている自然力(自然治癒力)に焦点をあて、心身の健康を保持、増進する自然尊重・自然順応の養生法と鍛錬術の体系を意味します。

その最も基本的な方略を全人的セルフケアに求めるのが水氣道です。これは、今日、全人的医療や全人的ケアとされるものの前提として、具体的な形で実践できるように推進すべき普遍的な課題であると考えます。

 

アクアビクスとしての水氣道は、水中での立位のフィットネスです。ただし、水氣道というアクアビクスは、単に身体的な健康の維持・増進を求めるのではなく、心理的・社会的にも望ましい状態、つまり真の全人的な健康をライフワークとして目指そうとする生涯エクササイズであり、人間としての成長をも目指すものです。

 

マインドフルネスな水中団体フィットネスである水氣道は、„水中で、ただ存在すること“を実感し、水環境に心身を委ねて”今ここに生きる“ことを味わうことができるようになります。一般に、マインドフルネスとは、元来「開放的で囚われのない心の状態」を意味し、「今、この瞬間の体験に意図的に意識を向け、評価を加えずに、ただ観ること」と定義されます。そして水氣道のマインドフルネスは、一言でいえば、心身への”気づき“です。そしてこの状態は新たな気づきを得やすい心の状態といえます。

 

水氣道ではこうした訓練に始まり、水中での一瞬一瞬の体感や、姿勢や呼吸に意識を集中して、一定時間、あらかじめ定められた環境・施設の枠組みの中で、プログラムされた一連の集団運動を実践することを稽古と呼んでいます。

 

水氣道による鍛錬によって向上する体力は、瞬発力や持久力などに代表される行動体力ばかりでなく、ウイルスや細菌などの病原体による感染症や癌などにかからないための防衛体力にも及びます。そのうえ、水氣道を継続することにより、運動能力ばかりではなく感覚機能が向上します。そして水氣道の稽古によってもたらされるマインドフルネスは、充実・向上を目指すものです。それは対人関係、情動制御、苦痛耐性などのスキルを向上させ、注意力、情動調整、気づきなどの自己体験の能力を活性化させ、対人関係を円滑にし、真に生産性や創造性を高めていくことに繋がっていくことでしょう。このようにして水氣道は生涯エクササイズとして自己の潜在的な資源を効果的に引き出すことによって自己実現を超えて自己超越までも視野に含めた知的エクササイズなのです。