心不全の病態と治療
BNP検査と保険医療の実像(その1)
心不全は、誤嚥性肺炎に続き、第2位の入院疾患です。そして心不全での入院患者の平均年齢が85歳(全体では77歳)、院内死亡率は19%に及びます。しかも、80歳以上が8割近くを占めるため、心不全=超高齢者心不全、したがって、少なからずフレイルと認知症を併発します。
心不全の本態は、左心室のポンプが拡張するときの圧力が上昇することです。その圧を直接測定することは心臓カテーテル検査で可能ですが、ほとんどの場合は、左室拡張末期圧を反映する間接的指標から評価します。身体所見、画像検査所見(主に胸部エックス線検査、心臓エコー検査)ならびにバイオマーカー等を組み合わせて心不全の診断や重症度を判断するのが一般的かつ実用的です。
心不全は臨床的には「うっ血」を来す病態です。まず、左心室のコンプライアンスの低下、すなわち左心室が固くなって収縮しにくくなりますが、これを代償するために脈拍数の上昇、左室の拡大あるいは血管の拡張といった反応がみられます。こうした代償機構のメカニズムは、レニン・アンギオテンシン系あるいは交感神経系の亢進、さらにはBNPの分泌を介するものです。
呼吸困難や救急外来を受診した患者において、病歴や身体診察のみでは、心不全の正診率は74%程度であるのに対して、BNP≧100pg/mlという基準を加えることにより、正診率が81.5%まで大幅に向上したというBNP試験の報告があります。
そこで、心不全診断においてはBNP試験が広く推奨されるようになってきました。
杉並国際クリニックでも、すでに導入しているBNP検査ですが、通常の血液検査と同様の採血のみで済みます。心臓カテーテル検査のような侵襲性や高いコストに比較して患者さんの負担は圧倒的に軽微です。以下に、実例を示します。
検査の保険点数(1点=10円)
BNP検査:136点=1,360円
心臓カテーテル法(左心室)による諸検査:4000点=40,000円
患者さんの窓口負担金額(3割負担の場合)
BNP検査:410円
心臓カテーテル法(左心室)による諸検査:12,000円
支払基金からの医療機関への給付額
BNP検査:950円
心臓カテーテル法(左心室)による諸検査:28,000円
さて、この検査に関する医療現場の実務ですが、社会保険診療報酬支払基金東京支部からBNP検査実施に関して当クリニックに支払われるはずの950円分が減額されました。
この問題については、明日御報告します。
<明日に続く>
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