4月12日(土)新型コロナウイルス(COVID-19)感染症に効く漢方No6

<土曜日特集:統合医学(心身医学・漢方医学)カンファランス>

先週に引き続き、新型コロナウイルス肺炎の漢方治療について検討を続けていきます。

 

さて中国当局が推奨している「清肺排毒湯」は以下の21の薬味から構成されています。

 

麻黄 、炙甘草 、杏仁 、生石膏 (先煎)、 桂枝、澤瀉 、猪苓 、白術 、茯苓 、柴胡 、黄芩 、姜半夏 、生姜 、紫菀 、冬花 、射干 、細辛 、 山薬 、枳実 、陳皮 、藿香

 

これらのうち、藿香、射干、紫菀、冬花の4種はわが国の保険調剤では扱われていませんししたがって、以下に再掲する17種の構成生薬について検討を加えてみました。

 

ただし、上記の17種の生薬のうちで、日本での表記と異なる生薬があります。それらを日本での表記に改めると以下のようになります。

 

白術=白朮、生石膏 (先煎)=石膏、姜半夏=半夏

 

これらの構成生薬の配合を分析してみると、解表剤、和解剤、補気剤、理気剤、利水剤などの効能を併せ持つ処方であると考えられます。

 

これらのうち、今回は、解毒を行ない(和解作用)病毒を中和して解除する作用をもつ和解剤と、体表での防禦が解決しないまま急激に内攻しはじめたときに内外の邪を同時に分解してすみやかに退散させるための表裏双解剤ついて解説します。

 

 

杉並国際クリニックの分析

「清肺排毒湯」の構成生薬には、以下のような和解剤としての組み合わせを抽出することができます。

 

麻黄 、炙甘草 、杏仁 、生石膏 (先煎)、 桂枝、澤瀉 、猪苓 、白術 、茯苓 、柴胡 、黄芩 、姜半夏 、生姜 、細辛 、 山薬 、枳実 、陳皮
柴朴湯減(柴胡、半夏、茯苓、黄芩、生姜)

 

「清肺排毒湯」の構成生薬には、また、以下のような表裏双解剤としての組み合わせをも抽出することができます。

 

麻黄 、炙甘草 、杏仁 、生石膏 (先煎)、 桂枝、澤瀉 、猪苓 、白術 、茯苓 、柴胡 、黄芩 、姜半夏 、生姜 、細辛 、 山薬 、枳実 、陳皮

 

大柴胡湯去大黄減(柴胡、半夏、黄芩、芍薬、枳実、生姜)

 

以上を元に、わが国で保険処方が可能なエキス製剤を挙げてみます。

和解剤 和解(解毒)の方法を用いて病邪を解除する方剤です。

以下のような構成生薬の組み合わせからみると、外の寒熱往来(冷えと発熱を繰り返す状態)を治す少陽和解(感染症をこじらせた時期の解毒)方剤としての効能が期待できそうです。

 

少陽和解剤:

柴朴湯減(柴胡、半夏、茯苓、黄芩、生姜)として

96柴朴湯(柴胡、半夏、茯苓、黄芩、生姜、
+黄芩、厚朴、大棗、人参、甘草、蘇葉、生姜)

適応:

気管支喘息、気管支炎、咳、不安神経症

気分がふさいで、咽喉、食道部に異物感があり、ときに動悸、めまい、
嘔気などを伴う場合には、気管支喘息や気管支炎でなくとも良く効きます。

 

表裏双解剤 直訳すると表裏を同時に治療する方剤という意味です。
この方剤には、病態を弁別して解表攻裏の法と解表攻裏の法という二つの方略を適切に使い分けます。

 

大柴胡湯去大黄減(柴胡、半夏、黄芩、芍薬、枳実、生姜)として

319大柴胡湯去大黄 コタロー細粒(柴胡、半夏、黄芩、芍薬、枳実、生姜、
                 +大棗)
  

この製剤の原型は、8大柴胡湯です。この処方から大黄を去った処方が

 

319大柴胡湯去大黄です。319番はコタロー以外の製薬メーカーは扱っていません。

適応:

高血圧、動脈硬化、胃腸病、気管支喘息、黄疸、胆石症、胆嚢炎、
肋膜炎、痔疾、半身不随;陰萎、不眠症、神経衰弱

 

「清肺排毒湯」の構成生薬にない大棗がここに含まれています。大棗は中華料理などの食事にも使われることが多く、「営衛を調え、胃を緩くし、脾を益す。」とされ、体表の皮膚・骨格筋系ばかりでなく腹部諸臓器の免疫力を高めながら整えるという好ましい作用をもっています。