治療推奨ガイドラインと抗リウマチ薬
関節リウマチ(RA)の本態は持続性滑膜炎です。この炎症による関節破壊の進行を抑制することがRA治療の目標です。それを実現できる薬剤として、多くの疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)が開発されました。現在でも標準的治療のアンカードラッグとして第一選択薬に位置付けられているのがメトトレキサート(MTX)<リウマトレックス®>です。
メトトレキサートの新しい使用法は、以下の通りとされています。
1)少量を12時間おきに2~3分割して、1週間に1回経口内服していただきます。
2)口内炎、胃腸障害などの自覚症状があらわれる場合がありますので注意していただき、もし症状が出現した場合には直ちに教えてください。
3)肝障害ならびに血球減少等の有害反応は、発生しても患者さん自身では気づきにくいので定期的に血液検査を受けていただきます。
4)相互に以上のような注意を怠らず、安全性の確保をはかりながら、2~4週間後に2~4㎎ずつメトトレキサートを漸増していきます。
5)可能な限り最大耐性容量まで増量します。ただし、個人によって最大耐性用量が異なります。
6)受診のたびに臨床効果を確認します。
難治性リウマチ治療薬(生物学的製剤とJAK阻害薬)の進歩
難治性リウマチに対して生物学的製剤が広く用いられるようになってきました。こ生物から産生される抗体などの蛋白質を治療薬として用います。
これらの製剤はバイオテクノロジーの技術を駆使して創製されるため、バイオ薬品とも呼ばれています。
本体は標的分子に特異性の高い抗体分子や受容体・免疫グロブリン融合蛋白です。
この標的分子とされるものは、炎症性サイトカインと呼ばれるTNF-αやIL-6の受容体、免疫応答B細胞上のCD20、T細胞活化性調整を目的としたCD80/86です。
日本では、すでに8製剤が使用でき、臨床的効果と関節破壊抑制効果が示され生物学的抗リウマチ薬に分類されます。
またJAK阻害薬とは、炎症性サイトカインのシグナル伝達分子を標的とする薬剤です。
サイトカインとは、サイトカイン受容体と結合してそのシグナルを細胞内へと伝達することで機能を発揮する無機化合物です。
これはサイトカイン受容体と直接会合するJAKを標的とします。生物学的製剤と同等の有効性を示す製剤として、トファシチニブ、バリシチニブならびにウパダシチニブの3剤が承認されています。
杉並国際クリニックの見解
難治性リウマチ治療薬(生物学的製剤とJAK阻害薬)の今後の課題について
メトトレキサート(MTX)<リウマトレックス®>の有効性・安全性を予測する因子はありません。
したがって、可能な限り最大耐性容量まで増量するという基本方針には疑問を持たざるを得ません。
メトトレキサート(MTX)は、関節リウマチのアンカードラッグと称するほど重要な薬剤ですが、過敏症など他の薬剤同様の禁忌以外にも、重症感染症、重症臓器障害(血液・リンパ系、肝、腎、肺)、胸水・腹水などの禁忌があります。
とくに関節リウマチは女性に多い疾患であるため、妊娠可能女性には使いづらい薬剤です。
妊婦(流産・催奇形性)および授乳婦には禁忌だからです。
そのために、妊娠可能女性には、早期から他の妊婦(流産・催奇形性)および授乳婦に禁忌でない免疫調整薬を併用することがあります。
ガイドラインでも推奨されているサラゾスルファピリジン(アザルフィジン®)の他に、ブシラミン(リマチル®)が使いやすく奏効すれば、メトトレキサートが不要になることもあります。
しかし、杉並国際クリニックでは、薬剤の投与を中止しても再燃のない治癒を目指したいと考えておりますので、副作用モニターのさらなる徹底に努めていきたいと考えています。
生物学的製剤(バイオ製剤)が阻害する対象となるTNFやIL-6等の炎症性サイトカインは、本来、生体防御に関わる分子です。ですから、こうした分子を阻害する生物学的製剤では感染症が問題になります。実際に、重篤副作用の約半数が感染症であったことは注目に値します。
またJAK阻害薬も生物学的製剤(バイオ抗リウマチ薬)と同様に、感染症をはじめとする重篤副作用に関する注意が必要です。そして、JAK阻害薬では帯状疱疹の発症頻度が増加するとされています。
どの薬剤を選択するにせよ、抗リウマチ薬を使用するにあたっては、患者の免疫力をどのように維持するかについて常に配慮しておくことが必要だと考えております。関節リウマチの方には、季節性インフルエンザワクチンの接種、肺炎ワクチンの他に帯状疱疹予防ワクチン等の摂取も推奨し行きたいと考えております。
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