3月31日(火) 見落とされやすい貧血No2

骨髄異形成症候群の病態と治療

皆さんは10万人あたり2~3人というと、とても稀な病気であるとお考えになることでしょう。

お恥ずかしい話ですが、医師である私でさえ、かつてはそのように考えておりました。

しかし、この比率で考えると、杉並区の人口は574,350(令和2年2月1日)ですから、おおよそ11~17人、東京都の人口は人口総数 13,942,856人(令和元年10月1日)なので、279~ 418人に上ります。

 

杉並国際クリニックは、前身の高円寺南診療所の時代から、どういうわけか、えり抜き?の病気をもった患者さんが来院される頻度が高いためか、疑い例を含めて、すでに数名経験しております。

 

その病気が骨髄異形成症候群(MDS)という難治性造血器腫瘍の一群なのです。

MDSは、疾患年齢中央値が60~70歳で、高齢者に多い疾患ですが、高齢化に伴い患者数は増加傾向にあります。これは加齢により、私たちの遺伝子のゲノムは異常を起こしやすくなることと関係があります。

MDSは、ゲノム異常を蓄積した異常な造血幹細胞(HSC)が骨髄中でクローン性に増殖し、骨髄を占拠することで発症します。

 

患者の約半数に染色体異常(多くは染色体数の数的異常)が見られ、さらに多彩な遺伝子異常(RNAスプライシング因子、エピゲノム制御因子などの異常)がみられます。

このようなゲノム異常を段階的に複数獲得することで、幹細胞機能の異常や増殖・分化の異常が生じ、これに加えて骨髄微小環境、炎症並びに免疫等の外的因子が作用することで、病気が進行すると考えられています。

 

無効造血による慢性進行性の血球減少と血球携帯異常を特徴とし、さらに一部の症例は芽球の増加から白血病に進展します。MDSは症候群であるため、複数のカテゴリーに分類されます。

単一の疾患ではないので取り扱いがややこしかったのですが、IPSSという予後予測システムにより、MDSは低リスク群と高リスク群に分けることで、治療方針が立てやすくなりました。

ここで高リスクとは白血病移行率が高いことを意味します。

 

MDSは、造血幹細胞移植以外に根治療法のない疾患ですが、
低リスク群には、支持療法(輸血、抗菌薬、鉄キレート法ならびにエリスロポイエチン等)

高リスク群には、①65歳以下では造血幹細胞移植、②薬物療法(第一選択薬:脱メチル化剤(アザシジン等)、③5q-症候群(5番染色体長腕部分欠失)にはレナリドミドが選択されます。

 

なお、現代医学の進歩には目を見張るものがあり、新たな貧血治療薬や分子標的治療薬が開発中であり、予後改善が期待されています。しかし、莫大な医療費が必要となり、保険医療の破綻に繋がりかねない現実があります。

 

そもそも加齢に伴って造血幹細胞の染色体異常や遺伝子異常などのゲノム異常が蓄積しないようにする、誰にでもできる安価で、より自然の摂理に叶う手立てはないものかと考えることも必要ではないでしょうか。

水氣道®がゲノム異常の蓄積を緩和するというデータを持っているわけではありませんが、MDSのような加齢に伴って増加する難病の予防や予後改善のために何らかの助けになり、保険医療崩壊の歯止めの一助にもなるのではないかと真剣に考えることがあります。