3月29日(日)聖楽療法の体系構成

第一部では、聖楽療法の理論の背景としての心身医学について概説し、そのうえで新しい心身医学の考え方を明確にします。

 

第二部は、聖楽療法の拠点としての聖楽院とは何かについて、その起源を述べ、いくつかの心身医学的アプローチをどのように応用して発展してきたかを省察します。

 

第三部は、心身医学の理論に根ざした聖楽院の哲学的な基礎概念を示し、心身医学療法の領域において水氣道の考えが心身医学療法の一般的な理論となりうるかを論じます。

 

第四部では、聖楽療法理論の一般的理論としての側面について、その概略を述べます。

 

心身医学療法における聖楽療法理論のコンテクスト(その1)

 

第1章 理論の性質

 

第2章 心身医学療法における理論

従来の心身医学療法における理論の役割

 

聖楽療法の概念的役割

 

聖楽療法の固有理論の問題

    

 

前回は、聖楽療法の一般理論の問題、についてでした。私たちが、音楽的発展という力を用いて一人一人の個性を自己の成長に向けて整合させていくことが、音楽療法としての一般理論の要素となることを紹介しました。

 

さて、第2章の最後は、本論が提示する理論の、固有的・臨床聖楽法的側面、についてです。

 

2つの命題を提起して、それに答えていくことにします。

 

 

臨床聖楽法は固有理論なのか?

 

臨床聖楽法は固有の理論です。他分野から引き出された概念はありますが、引き写しではなく極めてオリジナリティの高い理論だからです。

 

筆者の方法は、様々な分野からの特有の視点を集めて、聖楽療法の実践に固有の問題と照らし合わせ、組み合わせ統合して新たな意義と効果を生み出しています。

 

そして、筆者の視点は、臨床聖楽法はまず第一に、新しい心身医学の概念に照準を合わせるべきですが、この概念とは、心身医学療法の実践から導かれた固有のものです。第二に、臨床聖楽法は、音楽的・非音楽的の両方の要素をもち、また他の領域に起源をもつ概念が多く含まれますが、これらの借用概念は「固有」な形で使われているからです。

 

 

“臨床聖楽法”は心身医学療法なのか?“

 

臨床聖楽法の理論は音楽的基盤と非音楽的基盤を持つ概念です。

 

音楽の概念に基礎を置き、特に音楽的な価値をセラピーの役割の柱に据え、ミュージッキング(音楽すること)や音楽が体験の媒体となるといった音楽哲学の概念を取り入れ、臨床聖楽法の実践や信念を説明するのに役立っています。

ただし、臨床聖楽法は一般的な多くの音楽療法より非音楽的な考えとも無理なく共存し得るものなのです。

 

すでに音楽理論家の間でその価値が証明され積極的に用いられている理論にスキーマ理論があります。

スキーマ理論は比喩理論とも訳されますが、この理論は音楽体験にうまく当てはまり、自然に順応することが実証されています。

この理論はもともと言語学の領域から発展してきたものですが、音楽理論や音楽療法の分野でも展開を見せています。

この理論を応用することで音楽および音楽的現象をより深く理解しようとする欲求から直接的な発展が促されてきました。

 

スキーマ理論は理解のための方法であると同時に、特定の知的体系でもあります。

この理論は音楽体験の性質についての洞察を得るための道を拓いてくれるものであると同時に、心身医学的な本質をもち、新しい心身医学の療法的な展開である臨床聖楽法の実践において大きな手掛かりを与えてくれるものです。

 

 

来月から、「第二部 聖楽療法 理論と実践の性質」に入ります。