緊急提言:イタリアでのCOVID-19感染による高い致死率から日本が真剣に学ぶべきこと No1.(全4回)


杉並国際クリニック 飯嶋正広


【ローマ共同】

イタリアでは新型コロナウイルスに感染した死者が14日までに1,266人に達しました。

 

感染者累計1万7660人に対する致死率は約7.2%で、他国に比べ突出して高いことが気になります。

その要因について、いろいろな議論がでています。

感染拡大に拍車を掛けたとされる推定要因について収集できた情報をもとに、4つの見解をもとに検討してみたいと思います。

 


❶ 

疫学統計上の限界(その1:ミラノ大学プレリアスコ教授の見解等をもとに)
   

ミラノ大のファブリツィオ・プレリアスコ教授(ウイルス学)は地元メディアに「誰にも正確な致死率は分からない」とし、当局が把握していないケースを含めれば感染者総数は10倍にも膨らみ、致死率は下がるはずだと予測しました。

⇒ このうち、感染死亡者数は比較的明確であるのに対して、感染者総数を把握することは困難です。このことは、プレリアスコ教授の指摘通りです。ですから、その予測は説得力があります。

 

そしてプレリアスコ教授の仮説に基づいて試算すると、イタリアでの感染者の実数は1万7千人の10倍の17万人超にも上りうるということになります。

 

さて、ここで感染者総数を分母とし、感染死亡者数を分子とすると、

致死率=感染死亡者数/感染者総数

となります。

 

感染者総数である分母が10倍になれば、致死率は10分の一、すなわち約0.7%程度になります。

ちなみに日本ではPCR検査陽性者数を感染者数とするならば、

3月16日0:31時時点でPCR陽性者数:565人、死亡者数:24人

したがって、致死率=24/798=3.0%

 

最近発表されている中国での感染者数:80,844、死亡者数:3,199人
したがって、致死率=3199/80844=4.0%

 

同様にドイツでの感染者数:3795人、死亡者数:8人
したがって、致死率=8/3795=0.2%

 

PCR検査を精力的に実施している国ほど分母が大きくなるために致死率が低くなるといえるでしょう。

そのように考えると、感染者がきわめて少ない日本は、PCR検査の実施件数自体が制限されているためである可能性もあるという見方もできるのではないでしょうか。

 

最終的なアウトカムを死亡者数とするならば、ドイツの致死率は極めて低いことが注目されます。ドイツの実際の致死率も理論上0.2%を上回ることはないことになります。ただし検査をするほど致死率は減少することになります。

 

ところで私は、平均寿命が近接している先進国間においては、実際の致死率はほぼ同程度ではないかと考えています。これを仮に前提として考えるならば、とりあえず致死率は最大でも0.2(ドイツ統計データ)~0.7%(イタリア推計データ)と仮定することができるでしょう。

 

そうすると、日本の実際の感染者数は、24人の死亡者を元に逆算すると

ドイツ統計データからは24×100/0.2=12,000人、

イタリア推計データからは4×100/0.7=3,429人

 

そこで、最少に見積もっても日本ではすでに12,000人以上の人が感染している可能性があるのではないかと推定することができます。
 

 

実際に、感染していても発症しないでいるケースも多数報告されているだけでなく、症状が出現しても一定の基準に達していない人は検査を受けることができないため、この推論には一定の根拠があると思います。当面の間、日本での死亡者が一人増えるたびに、感染者の推定人数を最低でも500人増の修正を加えるくらいが妥当であるかもしれません。