3月16日(月) 抗悪性腫瘍薬投与中に注意すべき相互作用No1

―がんは日本人の国民病(厚生労働省のHPから)-

 

がんは、日本において昭和56年より死因の第1位となり、現在では、年間36万人以上の国民ががんで死亡しており、これは、3人に1人が"がん"によって亡くなっていることになります。

 

日本人にとって「国民病」といっても過言ではない状況となっています。


厚生労働省のHPから

 

21世紀になって、癌(悪性腫瘍)の薬物療法の主役は、従来型の抗癌剤(殺細胞性抗悪性腫瘍薬)から、ホルモン療法薬に加えて分子標的薬に交替しました。

 

中でも、近年注目されるのは、

① 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)と

② 抗体薬物複合体(ADC)です。

 

ICIは、登場から数年で、続々と適応疾患を増やしているため、他の薬物療法との併用やICI同士の併用も幅広く試みられています。

 

また、ADCは、搭載薬物やリンカー技術の改良もあり、多様な標的分子に対して開発が進められています。

 

なお、抗悪性腫瘍薬の投与には様々な配慮が求められるため、多くの抗悪性腫瘍薬の添付文書には以下のような警告文が入れられています。

 

 

癌化学療法は、

① 緊急時に十分対応できる医療施設において、癌化学療法に十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本療法が適切と判断される症例についてのみ実施すること.

 

② 適応患者の選択にあたっては、各併用薬剤の添付文書を参照して十分注意すること.

 

③ 治療開始に先立ち、患者またはその家族に有効性及び危険性を十分説明し、同意を得てから投与すること.

 

杉並国際クリニックは、癌患者の主治医として癌化学療法を行なってはいませんが、関節リウマチ治療の主薬であるメトトレキサート(リウマトレックス®)は、抗リウマチ薬であると同時に抗癌剤(抗悪性腫瘍薬)でもあります。その他にも、多数の担癌患者(癌を患っている患者)の皆様の健康管理を担当しています。

 

癌の種類としては、肺癌、胃癌、大腸癌、乳癌、前立腺癌、血液腫瘍(悪性リンパ腫など)が主です。

 

そして、当クリニック受診中に抗悪性腫瘍薬(抗癌剤)の副作用を発見することもしばしばです。

 

そこで、しばしば、懸念される事例は、警告文の②との関係です。

 

第一には、癌治療の主治医が、他の医療機関(たとえば杉並国際クリニック)の処方薬を十分に把握して確認がなされていないケースです。

実際に副作用の早期発見によって癌治療担当医に報告する経験を多数しています。

 

第二には、杉並国際クリニック通院中の担癌患者の方からの癌化学療法の内容を把握できていない場合にも起こりえる事象です。

とくに血栓症(脳梗塞・心筋梗塞・静脈血栓など)、消化性潰瘍(胃潰瘍・十二指腸潰瘍)、痛風、関節リウマチ、真菌症、うつ病の患者さんは今後も特別な注意が必要です。

 

杉並国際クリニックは、こうしたハイリスク群の患者さんを主に診療しているので、皆様方に注意を喚起しておく必要があると考えております。

 

ですから、抗悪性腫瘍薬投与中には、抗癌剤の副作用だけではなく、他の薬剤との相互作用を確認することが必要です。そのためには、受診する医療機関ごとに複数の調剤薬局にいくのではなく、一括した調剤管理を可能とするためにも「かかりつけ薬局」を決めておくことをお勧めいたします。

 

このように、抗悪性腫瘍薬についての知識と注意は、すべての内科医が弁えていなければならない時代であるといえます。

 

しかし、患者さん自身もしっかりとした自己管理と自信に対する医療情報を管理して、いつでも医療従事者に情報提供ができるような準備が不可欠になってきました。

 

明日から、それぞれの疾患の側から、注意すべき副作用について解説していきます。

 

<明日に続く>