3月14日(土) 新型コロナウイルス(COVID-19)感染症に効く漢方と鍼灸No2

<土曜日特集:統合医学(心身医学・漢方医学)カンファランス>

中国で新型コロナウイルス肺炎のガイドライン第6版(新型冠状病毒肺炎诊疗方案(试行第六版))が発表している文書は、先週ご紹介いたしました。

 

今回のガイドラインでは、治療薬として抗マラリア薬であるリン酸クロロキン(磷酸氯喹)が有効としています。日本では認可されないと思われます。また抗インフルエンザ薬のアルビドール(阿比多尔)の記載あります。

日本の保険処方では「ラピアクタ®」です。

ただし、新型コロナウイルスの治療目的では保険が効きません。

 

また中医(漢方)治療では漢方の注射薬も入っていたり、清熱への配慮に力が入れられたりいろいろ変更がありました。

 

中医治療は「医学観察期」「軽症」「通常型」「重症」「重篤」「回復期」に分けて行ないます。

 

今回は、医学観察期の処方の一部について紹介いたします。

 

1 医学観察期

臨床表現1:乏力伴胃腸不適

推奨中成薬

藿香正気膠嚢(丸、水、口服液)(藿香、白朮、厚朴、半夏、紫蘇葉、白芷、陳皮、茯苓、桔梗、甘草、大棗、大腹皮、生姜)

 

<解説>

臨床表現1:

乏力伴胃腸不適 推奨中成薬とありますが、これは臨床症状として胃腸の不調を伴う倦怠感がある場合の推奨薬ということです。


藿香正気膠嚢の膠嚢とは、日本語でも膠嚢(こうのう)と読み、薬のカプセルを意味します。厳密に詳細に確認したわけではありませんが膠(こう)とは<にかわ(ゼラチン)>の意味で、嚢(のう)とは袋状の形態を表し、カプセルの形態も嚢です。

 

ですから、膠嚢とは元来ゼラチン製カプセルを意味したものかもしれません。日本で販売されるとしたら、たとえば、藿香正気カプセル剤のような名称になるかもしれません。

 

この薬剤は、保険調剤が可能な漢方薬ではありませんが、日本でも市販薬として購入することができます。

 

「藿香正気散(かっこうしょうきさん)」という名称です。

 

藿香正気散(かっこうしょうきさん)は「和剤局方(わざいきょくほう)」という漢方の古典で紹介されている漢方薬です。

 

処方名の頭についた藿香(かっこう)は、体に取り付いた邪(ウイルスなどの病原菌)を発散させる生薬で、この処方の主薬あり、また適度に体を温めて湿気も発散させてくれます。

 

藿香正気散にはこのほかにも、胃の中にたまった水分を取り去る作用のある生薬などが含まれています。

 

次の「正気(しょうき)」とは、からだの内外の冷えや湿気などが原因で、乱れてしまった気を正すという意味で、この処方名が付けられました。

 

藿香正気散は、日本では夏かぜの特効薬として用いられることがあります。

そして古くから夏の食欲不振に、ネギやミョウガ、シソなど香りが強くて辛みのある薬味や香辛料などを使用してきました。

 

また、刺身のツマには必ずシソの葉が添えられています。

それは、香りなどの刺激が胃腸の働きを活発にすることや、シソを添えることで食中毒が予防できるということを経験的に知っていたからです。

 

実際に構成生薬である藿香や蘇葉(そよう:シソの葉)など香りの高い生薬も多く含まれており、暑さや冷たい飲食物をとり過ぎて働きの悪くなった胃腸を癒し、食欲不振などを改善することができます。