一般社団法人 日本感染症学会のHPの症例報告から、国立国際医療センターの症例報告を掲載します。ただし、すでに1カ月以上を経過している情報であり、現在は異なる見解になっている可能性があることにご注意ください。
なお、最後に、杉並国際クリニックの見解を付記しました。
当院における新型コロナウイルス(2019-nCoV)感染症患者3例の報告
(国立国際医療研究センター)(2020.2.5)
症 例:
当院における新型コロナウイルス(2019-nCoV)感染症患者 3 例の報告
国立国際医療研究センター
Key word:
2019-nCoV 感染症
序 文
新型コロナウイルス(2019-nCoV)感染症は中国武漢市で 2019 年 12 月以降報告されている. 2020 年 2 月 3 日現在,世界では 17,267 人の患者が報告されている.
内訳として武漢市で 5,142 人(死亡者 265 人: 致命率 5.15%),武漢市以外の湖北省で 6,035 人 (死亡者 85 人; 致命率 1.4%),湖北省以外の中国 全土で 6,090 人(12 人; 0.19%),中国以外の国 183 人(死亡者 1 人; 致命率 0.5%)となっており,中国での症例が大半を占めており,本邦での臨床像の詳細な報告はまだない.
臨床像の把握は今後の 2019-nCoV 感染症の診療および感染防止対策に寄与すると考えられるため当院で経験した 3 症例をここに報告する.
考 察
当院における新型コロナウイルス(2019-nCoV)感染 症患者の 3 例を報告した.
症例 1 は診断に至るまでに 1 週間を要しているが,本症例のように初期は咽頭痛などの上気道症状のみで,発熱も 37℃台の微熱に留まることがあり 1)2) , 臨床像のみで 2019-nCoV 感染症を診断することは困難と考えられる.
症例 2、症例 3 についても臨床像は急性上気道炎であり,肺炎患者にみられるような咳嗽、呼吸困難といった所見はみられなかった.
今回報告した3例はいずれも武漢で感染したと考えられる症例であり,現状では過去 14 日間の武漢への渡航歴の聴取が重要である.
しかし,現在は武漢市以外の中国全土で症例が報告されていることから,臨床症状から疑われる事例では,武漢市以外でも 2019-nCoV 感染症を鑑別に上げるべきと考えられる.
Huang らは 41 例の武漢市における 2019-nCoV 感染症の症例の臨床像について,発熱 98%,咳嗽 76%,呼吸困難 55%,筋肉痛・倦怠感 44%,痰 28%,頭痛 8%,血痰 5%,下痢 3%と報告している.また,39%が集中治療室に入室し,17%が急性 呼吸促迫症候群(ARDS)になっているが,これらの報告の対象集団は全て入院が必要であった重症例である.
よって,Huang らが報告した所見は,軽症例には当てはまらないと考えられる.
現在日本国内では無症候性感染者を含め 20 例の症例が報告されているが,2 月 3 日時点で死亡例は報告されていない.
当院の 3 例の中には,肺炎を伴 わない症例も含まれており,残り 2 例の肺炎を伴う 事例についても,1 例は酸素を必要としたが最大 2L/分と酸素需要は少なく,また現在は改善している.
これら 3 例は重症ではなく,日本から死亡例が出ていない.
中国での報告とは重症度の乖離がみられる. 2020 年 2 月 3 日現在,世界では 17,267 人の患者が報告されている.
内訳として武漢市で 5,142 人 (死亡者 265 人: 致命率 5.15%),武漢市以外の湖 北省で 6,035 人(死亡者 85 人; 致命率 1.4%),湖 北省以外の中国全土で 6,090 人(12 人; 0.19%), 中国以外の国 183 人(死亡者 1 人; 致命率 0.5%)となっており,中国での症例が大半を占める.致命率は武漢市が最も高く,湖北省,中国,世界となるに従い致命率も低下する傾向にある.
これは,おそらく武漢市には実際にはもっと多くの 2019-nCoV 感染症の患者がいるが Joceph らの報告では推定感染者は 75,815 人と見積もられ,情報が限られていることから重症例を中心に診断されているため見かけ上の致命率が高くなっていると推測される.
一方,中国以外の国では無症状者も含め軽症例が検知されているため,このような重症度の乖離が生まれるものと考えられる.
ただし,基本再生算数は WHO の報告によると 1.4-2.5,中国からの報告によると 4.0 と推定されており ,中国国内での発生に歯止めがかからないことから,日本国内でも流行が広がる可能性が十分に考えられる.
これらの現状を鑑み,我が国における 2019-nCoV感染症では、感染そのものを封じ込めることを目的とするよりは,致命率の低下と医療体制の維持をめざすことが良いと考えられる.
具体的には感染症指定医療機関や都道府県の指定する診療協力医療機関で重症例を対象として治療を行って致命率を低下させることを目指し,軽症例は全ての医療機関で診療を行う医療体制を構築することが望ましい.
また,感染防止対策については,日頃からの標準予防策の徹底と,接触予防策・飛沫予防策を遵守することが 重要と考えられる.
2 月 4 日時点では国立感染症研究所・国立国際医療研究センターからの「中国湖北省武漢市で報告されている新型コロナウイルス関連肺炎に対する対応と院内感染対策(2020 年 1 月 21日改訂版)」が参考となる.
当院での新型コロナウイルス感染症患者に対する診療時の個人防護具について図を添付する(Fig.9) 省略
利益相反自己申告:
申告すべきものなし
杉並国際クリニックの見解
国を代表する医療センターの報告書としては、推測が多く、矛盾に満ちていて残念な内容です。
3例の症例報告は貴重ですが、誤った結論を導き出しています。
その誤った結論とは、軽症例は全ての医療機関で診療を行う医療体制を構築することが望ましい、という見解です。
当該医療センター報告の1例目は、診断に至るまでに 1 週間を要している、としたうえで、臨床像のみで 2019-nCoV 感染症を診断することは困難という見解を述べています。
軽症例であるか重症に至る症例かの判断が全ての医療機関で可能であるとは考えていないはずです。
それにもかかわらず、理想論を述べるのは、国内の大多数の個々の医療機関に無理な責任と虚しい努力を押し付けているのは、国策を過度に忖度している姿勢が伺われて残念な思いがいたします。
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