第一部では、聖楽療法の理論の背景としての心身医学について概説し、そのうえで新しい心身医学の考え方を明確にします。
第二部は、聖楽療法の拠点としての聖楽院とは何かについて、その起源を述べ、いくつかの心身医学的アプローチをどのように応用して発展してきたかを省察します。
第三部は、心身医学の理論に根ざした聖楽院の哲学的な基礎概念を示し、心身医学療法の領域において水氣道の考えが心身医学療法の一般的な理論となりうるかを論じます。
第四部では、聖楽療法理論の一般的理論としての側面について、その概略を述べます。
第一部 心身医学療法における聖楽療法理論のコンテクスト(その1)
第1章 理論の性質
第2章 心身医学療法における理論
従来の心身医学療法における理論の役割
心身医学療法全体の中で聖楽療法理論の定義づけや位置づけをするにあたり、まずは心身医学療法という領域自体を、改めて研究対象のカテゴリ―の中に位置づける必要があるでしょう。
心身医学療法は、一般的には人間活動の二つの異なるとされる領域(身体と精神)に根を持つ療法であり、主に現場の臨床医の取る立場なので、理論の持つ機能を概観し、この理論によって臨床活動をする医師にとっての価値を査定することは重要です。
医学療法は一つの専門職領域であり、専門的なトレーニングが、学問的な環境で行われます。
専門職の活動には、内在的な暗黙の知識(私たちの行動の中に埋め込まれた知識であり、言語化が困難で、形式化できない知識)、そして形式化された外在的な知識(理論や概念の中に埋め込まれた知識であり、明瞭に形式化できる知識)の両方が必要になります。
理論は治療の根拠となる基盤を提示し、実践者を育てる専門教育を可能とします。
しかし、ある特定の場面における実際の治療行動の指針を、必ずしも理論が提供するわけではないことを指摘しておく必要があります。
その理由は、臨床家の技能は先述した二つのタイプの知識(知的知識と行動の中の知識)の相互作用の中で育まれるからです。
たとえば、臨床とは具体的な事例を通じての活動であり、その活動を通して形式化されていない部分の知識を自分の中に取り込み、それが暗黙の知識となってスキルを向上させることに繋げることができます。
そのプロセスは、個々の事例から一般化(原則や理論の形成)が行われ、今度はそれがまた個々の事例に還元される(一般化された原則をそれぞれのレッスン生に合わせて用いる)というものです。
こうした臨床実践家の知識やスキルの転移を理論が仲介して発展・普及させてくれるのです。
形式化された知識は研究を通じて発展に向かい、逆に臨床実践に必要とされる暗黙の知識は理論を介して形式化された知識の領域に向かいます。
一般に研究には三つの目的があり、そのすべてが理論と接点を持っています。
それは、①現象の説明、②理論の構築、③理論の検証、です。
理論は研究におけるテーマ設定や特定の焦点を展開していくことを容易にし、逆に、理論は研究の結果でもあります。
その例として挙げたいのは質的研究法です。
この方法では、理論は研究の方向性を示す役割より、研究の結果として得られる成果としての意義があります。
心身医学療法の臨床において、多職種との協調はレッスン生のケアの本質的な要素です。
また、多職種の人々に、心身医学療法についての理解を深めてもらい、特に聖楽療法のサービスの質や量について、運営を管理する地位にある人々を啓蒙するという意義もあります。
こうした協調において、理論は重要な役割を果たします。
心身医学療法をはじめとする医学領域と他の専門領域とに共通する概念や理論を用いることができれば、互いの連携を確立することができ、心身医学療法について理解してもらうことが容易になります。
理論を用いることは、聖楽療法について理解してもらうことが容易になります。
理論を用いることは、心身医学療法の実践が精度の高い成熟した専門職であることを証明することに有用なのですが、聖楽療法に対する敬意も生まれ、それによって学問的・職業的協調の意欲がより高まるのです。
聖楽院の各組のレッスン生が、レッスンごとの記録をまとめる作業をはじめました。
それは、レッスンという実践の場において、自分たちの行動の中に埋め込まれた内在的な暗黙の知識を、言語化することが最終目的ではありません。
それはレッスンという具体的な事例を通じての活動であり、その活動を通して形式化されていない部分の知識を自分の中に取り込み、それが暗黙の知識となってスキルを、共有し、共感することによって向上させることに繋げようとしています。
そのプロセスは、レッスンでさまざまに体験される個々の事例の個人的体験から、記録という情報を通して集団的体験に昇華し、そこから、次第に一般化(原則や理論の形成)が行われ、今度はそれがまた個々の事例に還元される(一般化された原則をそれぞれのレッスン生に合わせて用いる)という成果が既に現れています。
個人的な知的財産である主観的体験が間主観的体験へ、それがさらに客観的体験となり集団の共有財産へと成長していく過程で理論が形成されていくことになります。
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