2月26日 造血器悪性腫瘍の緊急初期対応を要する局面(No.3)

‐高カルシウム血症は癌のマーカーにもなる⁉‐

 

高カルシウム血症とは,血清総カルシウム濃度が10.4mg/dL(2.60mmol/L)を上回るか,または血清イオン化カルシウム濃度が5.2mg/dL(1.30mmol/L)を上回った状態です。

主な原因には副甲状腺機能亢進症,ビタミンD中毒,癌などがあります。

 

とくに高カルシウム血症は、担がん患者に発生する電解質異常で最も頻度の高く、そのなかでも多発性骨髄腫(MM)、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、乳癌、肺癌などに合併しやすいので、高カルシウム血症を発見した場合は、副甲状腺機能検査、ビタミンD代謝評価とともに癌の検索をはじめる必要があると考えています。


診断は,イオン化カルシウムおよび副甲状腺ホルモンの血清中濃度測定によりますが、臨床的特徴には、倦怠感、悪心・嘔吐、多尿,便秘,筋力低下,意識障害(錯乱,昏睡など)があります。

 

対策は、脱水の補正(生理食塩水)、ビスホスホネート製剤、カルシトニンの投与、原疾患に対する治療です。

 

高カルシウム血症を合併すると脱水が起きるので、生理的食塩水の投与(2,000~4,000mL/日)を治療の基本とします。ただし、心疾患などの合併がある場合は、この基本治療によるうっ血性心不全の惹起に注意します。

 

ビスホスホネート製剤は破骨細胞による骨吸収を阻害することで効果を発現させるのには24時間以上を要するので、即効性を期待する場合はカルシトニンを併用することがあります。

 

なお、高カルシウム血症の治療では、原疾患に対する抗ガン薬その他の適切な治療が必要です。

リンパ系腫瘍では、副腎皮質ステロイドも有効です。

成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)に合併する高カルシウム血症では、高ガン薬治療が有効です。

ただし、治療抵抗性の高カルシウム血症に対する短期的に最も有効な治療は、血液透析です。