2月25日 造血器悪性腫瘍の緊急初期対応を要する局面(No.2)

腫瘍崩壊症候群‐高尿酸血症・痛風の患者さんも要注意!
私は、痛風・高尿酸血症の患者さんを30年以上診療しています。

 

痛風は関節リウマチとは全く異なるメカニズムですが、関節痛を伴う疾患であることから、「膠原病・リウマチ・痛風センター」などの病院の看板を見かけるように、多くのリウマチ専門医は、1000万人超の高尿酸血症、110万人超の痛風を高々70万人の関節リウマチ以上に診療しているくらいです。

 

痛風の治療薬には、尿酸排泄促進薬、尿酸生成抑制薬が主ですが、その他に尿酸分解酵素薬があります。これは点滴静脈注剤で、抗悪性腫瘍薬治療に伴う急激な尿酸上昇(特に腫瘍崩壊症候群)に対し保険適応があります。

 

尿酸生成抑制薬のうちアロプリノールは認められていませんが、フェブキソスタットには癌化学療法による高尿酸血症の治療に用いることができます。

 

診療にあたって、最近あらたに注意していることが、上記のことと関係があります。

それは痛風発作そのものよりも、治療抵抗性の高尿酸血症との遭遇です。がん化学療法後の方が来院され高尿酸血症のケースが紛れ込むことがあるからです。

国民の2人に1人ががんになる時代では、決して珍しい話ではないのです。

 

腫瘍崩壊症候群(TLS)とは、腫瘍細胞が急速に崩壊することによって伴う一連の障害です。腫瘍量が多く治療反応性が高い造血器悪性腫瘍の初期治療に合併することが多いので血液内科でも警戒すべき病態です。

 

崩壊した細胞の分解産物により、高尿酸血症、高カリウム血症、高リン血症などが生じると、ときとして急性腎不全を惹起します。

 

腫瘍崩壊症候群(TLS)の高リスク群にはバーキットリンパ腫/白血病、白血球数10万/μL以上の急性リンパ性白血病(ALL)および急性骨髄性白血病(AML)が挙げられます。

 

また多発性骨髄腫(MM)でも新規薬剤の治療導入により発症することがあるので注意を向けられています。

 

腫瘍崩壊症候群(TLS)の治療で最も重要なことは、疾患によるリスクや、治療開始前検査での腎障害や尿酸値上昇などにより、高リスク群を同定して、予防策を講じることです。

 

腫瘍崩壊症候群(TLS)の発症予防のためには、治療による腫瘍量の軽減を緩徐に行うことを心がける必要があります。そのため、急性リンパ性白血病(ALL)ではステロイド先行投与、バーキットリンパ腫/白血病では、それに加えて低用量シクロフォスファミドを先行投与することを考慮します。

 

腫瘍崩壊症候群(TLS)が発症してしまった場合は、高リン血症、低カルシウム血症、および高カリウム血症への対応が必要です。なお、重症例では血液透析を含めた積極的な支持療法が必要です。