1月16日 リウマチ科医に関係が深い極めつけの肝炎:自己免疫性肝炎(その1)

あらゆる肝障害、とりわけ急性あるいは慢性の肝障害を見出した場合に常に念同に置くべき肝疾患の一つが自己免疫性肝炎です。

これは中年以降の女性に好発する慢性肝炎で、その発症に自己免疫機序が関与すると考えられていますが原因不明です。

 

そして自己免疫性肝炎には特異的な診断根拠となる検査はないため、国際診断基準などをもとに診断します。

その過程の中で、肝障害をもたらす他の原因を除外する必要があります。

そのなかで、もっとも苦慮するのが薬物性肝障害です。その理由は、薬物性肝障害も、やはり除外診断をしながら診断基準から推定していくからです。

 

また、自己免疫性肝炎症例の約1/3に他の自己免疫性疾患の合併が認められ、慢性甲状腺炎(橋本病)、シェーグレン症候群、関節リウマチなどがその代表です。

 

そのため、私は、は、自己免疫性肝炎とは、アレルギーやリウマチ膠原病の専門知識があって、かつ、すべての肝障害を熟知していなければ診断できない、極めつけの肝炎であると考えています。

 

典型的な自己免疫性肝炎であれば、少なくとも抗核抗体もしくは抗平滑筋抗体が陽性、免疫グロブリンIgG高値となります。

しかし、やっかいなことに、抗核抗体が低力価(もしくは陰性)かつIgGも正常な症例もあるので、それだけでは診断の決め手にはなりません。

つまり、血液検査情報だけでは、診断を絞り込むことは困難です。そのような場合は、肝組織検査が必須となり、入院設備を持つ病院へ紹介する必要があります。

 

自己免疫性肝炎の予後は、治療例では進行例が少なく死亡率も高くないため一般的には良好です。しかし、複数回の再燃を繰り返す症例や無治療例では進行は早く、肝硬変に進展することも稀ではありません。

 

それでは次回は、実際に経験した自己免疫性肝炎の症例について振り返ってみたいと思います。

 

<明日につづく>