私が医学生だった頃には、おそらく非B非C型肝炎として一括りにされたウイルス性肝炎が、その後、次々に同定されました。その一つがE型肝炎です。
30年以上も外来診療を続けてきた間に、ひょっとすると一例ぐらいは紛れ込んでいた可能性は否定できませんし、今後は遭遇する可能性が増えるのではないかと考えています。
急性E型肝炎の診断にはIgA型HEV抗体(定性)が保険診療で検査することが可能になったのは2011年からです。つまり、言い換えれば、2011年以前では、たとえ急性E型肝炎を疑ったとしても、日常診療で診断を確定することは、実際上不可能であったということになります。
従来、E型肝炎は熱帯、亜熱帯地域でウイルスが混入した糞便に汚染された水を摂取することにより感染すると考えられていました。
そして南アジアでは雨季の洪水後の井戸水汚染がHEV流行に寄与して、水系感染を増やしています。
地球の温暖化や輸入食肉の増加による日本での発生の影響を懸念します。
ただし、日本では、水系感染よりもE型肝炎ウイルス(HEV)に感染したブタ(肉やレバーを含む)、イノシシ、シカなどの食肉を十分加熱調理しないで経口摂取して感染した事例が報告され、人畜共通感染症として注目されるようになりました。
臨床的にはA型肝炎と類似点が多いです。潜伏期は15~50日(平均6週)で、E型急性肝炎は高齢者で重症しやすいようです。
HEV感染により劇症肝炎を発症して死亡する割合は1~2%ですが、水系感染を含めて妊婦が感染すると死亡率が10~20%に上昇するという報告もあります。
豪雨による河川の氾濫などによって、どのくらいリスクが増えるのかも気になるところですが、確かなデータはありません。
E型肝炎は感染症法では4類感染症に指定されているため、診断した医師はただちに届け出る義務があります。
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