1月9日 感染症・アレルギー・膠原病 ④

鎮咳薬を内服したが改善なく、咳が3週間止まらない30代女性(その1)

 

 

3週間前から痰を伴わない咳(乾性咳嗽といいます)が続いているというので来院されました。

 

手持ちの鎮咳薬の内服を1週間続けても改善しないため、病院の呼吸器内科を受診し、胸部や副鼻腔のエックス線検査を受け、異常がないとのことで、試みに気管支拡張薬を処方されたとのことでした。

 

乾性咳嗽は、なおも続き、夜間に咳嗽で覚醒するなど次第に発作性に咳き込むようになり、嘔吐しそうになるとのことで、再度受診したところ、今度は喘息の疑いで吸入ステロイド剤が処方され、さっそく吸入を開始したが全く改善が見られず、3週目に知人から当院を紹介されて来院されました。

 

血圧120/82㎜Hg、脈拍数78回/分。これまでの臨床症状としては、急性気管支炎が疑われました。

 

しかし、すでに急性期は過ぎていて、体温は平熱で、聴診にて呼吸音は清で、喘鳴や副雑音も聴取しませんでした。呼吸機能検査も正常でした。

 

 

3週間以内の咳嗽の場合、胸部エックス線検査で異常がなく、発熱、CRP上昇、上気道カタル症状(いわゆる鼻汁、喀痰を伴う水っぽい風邪症状)のいずれもが見られない場合には、アレルギー素因や気道過敏性などの有無を確認します。

 

前医では、それらを見いだせないまま気管支喘息や咳喘息を疑っていたようでした。

 

しかし、私は上気道カタル症状に限定せず、感冒様症状が持続するならば、普通感冒、肺炎(マイコプラズマ、クラミジアなど)、百日咳、急性副鼻腔炎などを疑うべきであると考えています。

 

副鼻腔のエックス線検査は異常なしであったので急性副鼻腔炎は否定的であったため、マイコプラズマ肺炎、クラミジア肺炎、百日咳を疑い、それぞれの抗体検査を行ないました。

 

 

その後、改めて服薬状況を尋ねてみると、高血圧のため降圧剤を使用しているとのことが判明しました。しかし、お薬手帳を持参されておらず、薬剤名も把握されていなかったため、帰宅後に確認して連絡をいただくことにしました。

 

患者さんは、<血圧は落ち着いているのになぜ余計な細かい質問をするのか>、と言いたげな迷惑そうな表情でした。

 

処方としては、已むを得ずマクロライド系抗菌薬アジスロマイシン(ジスロマック®)のみを3日分処方しました。

この薬は、マイコプラズマ肺炎、クラミジア肺炎、百日咳のいずれにも効く可能性があります。

 

しかし、急性気管支炎という病名では保険が効きますが、マイコプラズマ肺炎、クラミジア肺炎、百日咳という病名では保険は通りません。

 

このあたりが臨床実務のやりにくいところです。もう一つの問題は、耐性菌についてです。とくにマイコプラズマ肺炎は、歩いて来院する肺炎として有名ですが、近年、マクロライドの効かないマクロライド耐性マイコプラズマが分離され問題になっています。

 

<明日につづく>